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銀河日記
プロローグ
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そして、その人体を司る脳は指令を出した、“薬を使え”と。

人体は体を、手を動かし、近くに会った薬を手にして勢いよく飲み干した。もう少し先に会った棚の薬には目もくれなかった。ラベルは無かった。効果は直ぐに表れた。だがその後、巨大な副作用に見舞われた。

その時人、いや、脳は気が付いたのである。その薬のラベルが“劇薬”と書かれていたのを。それを飲んでからようやく思い出したのである。ラベルは貼られていなかったのではない、何度も使われていく内に消えていってしまったのである。


その劇薬の中核をなした男、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは28歳までの軍人生活を経て政界入りし、首相、そして連邦の憲法の盲点を突いて国家元首との兼任を果たして“終身執政官”を称し、“神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝”へと成長を遂げた。彼が至尊の玉座の主となった瞬間、銀河連邦は、その名と共に歴史の中に消え去ることとなった。

その後ルドルフは反対派の弾圧、議会の永久解散、劣悪遺伝子排除法の発布、帝室を支える特権階級の創設などを行い、八十三歳でその時を止めた。そしてルドルフの死後、叛乱が帝国の各地で勃発した。

それまで息を顰めていた共和主義者たちが創設者たるルドルフの死というまたとない好機を逃す筈も無かったのである。だが、それはルドルフの残した三位一体性という剣によって一振りで薙ぎ払われた。5億人余りが殺され、その家族百億人以上が市民権を剥奪され、農奴階級へと身を落とされた。

共和主義者の起こした嵐は去り、時が流れるにつれ、ルドルフの子孫が子孫の座というバトンを繋ぎ、権力の移動のあるべき姿へと変化して行った。

しかし、嵐は去ったのではない、木枯らしへと規模を縮小し、吹き続けていたのだった。


帝国歴一六四年、アルタイル星系からモリブデンとアンチモ二ーの採掘に従事していたアーレ・ハイネセン率いる共和主義者百万人が、第七惑星に無尽蔵に存在するドライアイスを基に設計した船で脱出した。

この後に“長征一万光年(ロンゲスト・マーチ)”と呼ばれる脱出行は、指導者ハイネセンの事故死などの多くのアクシデントを抱えながら、半世紀以上の時をかけ成功した。壮年期の恒星系へとたどり着いた彼らは自由惑星同盟という国家を作り、宇宙歴を復活させ、銀河連邦の正当な後継者を名乗った。彼らはその長き旅でも途絶えなかった熱意をエネルギーとして、かつての黄金時代を再現しようとした。

そして、銀河帝国と自由惑星同盟、この二つの存在が接触し、宇宙歴年帝国歴三三六年、第二十代皇帝フリードリヒ三世(敗軍帝)の時代となっていた帝国はすぐさま、フリードリヒ三世の三男の帝国元帥ヘルベルト大公が指揮する討伐軍を派遣。そして、リン・パオ、ユースフ・トパロウルが率いた同盟軍との“ダゴン星域会戦
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