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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十一話 新人事(その1)
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危険視する声が増えている。いささか遅いがな」
「痛い目に有ってようやく分かったという事ですか、これまでにも痛い目に遭っているのに」

私の言葉には皮肉が含まれていただろう、シトレ本部長が苦笑した。
「認めたくないのだよ、敵の有能さを。一度や二度ではたまたまだと思いたいのだ。今度の敗北でようやくブラウンシュバイク公の実力を認めた、そんなところだろう」

「やれやれですね」
「そうだ、やれやれだ」
本部長の苦笑が更に強くなった。私も笑うしかない。なんとも情けない話だ。人間とは何と愚かなのか……。

ややあって本部長が笑いを収めた。
「容易ならざる事態だな。ミュッケンベルガー元帥、ブラウンシュバイク公、そしてミューゼル大将か……。今一番危険なのはミューゼル大将だろう、ブラウンシュバイク公の陰に隠れているような形になっている、その所為で実力を正しく評価されていない……」
溜息交じりの口調だ。

「同感です、一つ間違うと今回の様な事になりかねません」
「全くだ、頭が痛いよ」
本部長が顔を顰めた。帝国は次から次へと人材が出てくる。勢いが有る証拠だろう。

「ドーソン司令長官が辞表を出したよ」
「そうですか……」
驚きはしなかった、予測された事でもある。止むを得ない事だろう、今回の敗戦には政府、軍部、そして市民からも厳しい批判が出ている。誰かが責任を取らなければならない。

「本人はもう一度チャンスをと国防委員長に訴えたらしい。しかし受け入れられなかった。この重大事に宇宙艦隊司令長官が入院しているというのでは国防に支障が生じる、そう言われたらしい」

シトレ本部長が首を横に振っている。往生際が悪いと思ったのか、それとも取って付けた様な理由だと思ったのか。
「なるほど、引導を渡されたという事ですか」
「うむ」

もう一度チャンスを、か……。気持は分かるが認める事は出来ない。人の命がかかっているのだ、その任に相応しい能力の無い人間を就ける事がどれだけ危険か……。今回の敗北がそれを証明している。

「国防委員長はドーソン大将を更迭したがっていたようだな」
「そうなのですか」
「うむ。帝国が攻勢をかけてくる事は無い、そう判断したから彼を司令長官にしたのだ。しかし帝国は国内の対立を解消した……。となれば攻勢をかけてくるのは自明の理だ。トリューニヒト氏はドーソン大将に不安を感じていたらしい」

口調に皮肉が有る。身勝手だと思っているのだろう。自分も同感だ。ドーソン大将を弁護するわけではないが彼も政治家達に翻弄された被害者だと言えるだろう。今は辞表だが退院すれば退役になるのは間違いない。宇宙艦隊司令長官まで務めたのだ。勝ったのならともかく負けたのでは次の職は無い……。

「次の司令長官はどなたに」
「まだ決まって
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