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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 正体
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話しどころではなくなってしまう、今度はただの居合い。少女の腹を柄頭(つかがしら)で叩き意識を奪う。

「な……」

 漆黒の柄が少女の腹に叩き込まれるはずだったが、何かに阻まれそれは失敗に終わった。
 一瞬だけ視線をそちらにやれば、柄と少女の腹の隙間の空間に割れたガラスのような亀裂がはしっている。
 防御魔法……? いや、違う。
 これは、

「氷か! くそっ!」

 亀裂の入った空間の正体、魔力で強化された氷の壁に驚愕する暇も無く竜の尾が頭上から降ってくる。
 大質量を誇るそれを傾けた刀で受け流しながら後方へ飛ぶ。森に耳障りな音が反響し、それにふさわしい衝撃が受け止めた刀を伝わり僕の腕に残る。
 少し受け止める角度を間違えたか……無視できるレベルだが痛みが残ってるな。
 だが、それでいい。竜の一撃としては少々物足りないが、この程度ではないことを予感させてくれる。

「…………、……………………!」

 少女が聞いたことの無い言葉を静かに、しかし荒々しく竜へと投げる。
 怯えた様子は無い。いきなり襲われたにしてはやけに理性だ……やはり操られているのはこの少女のほうか。
 鞘を腰帯に刺しなおし、刀を抜く。
 気づかれる前にやれなかった以上、あの巨体と戦うしかない。居合いは不向きだ。

「…………!」

 少女が僕を指差すと同時、竜が息を吸う。ブレスか、いいだろう。
 刃に魔力を流す。
 ぼんやりと血の様に赤い魔力を帯びた刃。
 冷気が迫る。
 笑みは崩さず、僕は刀を振り下ろした。
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