第3章 リーザス陥落
第37話 封印の鍵を求めて
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それは、アイスの町へと帰る道中の事、だった。
ふと、ヒトミが先の道ではなく、獣道の様に草木が繁っている方を見たのだ。その理由を突き詰めたとしたら、ただ何となくと言う他ない。女の子モンスターとしての感覚を用いたとしても、気づける様な気配を感じた、と言う訳ではない。微かな予感だった。
誰かがいると感じたのだ。そして、その感じは確信に変わる。
朝日も昇り 視界も開けてきているのに、視認しずらいそれが拍車をかけていた。恐らく、隠密の類では無いだろうかと、ヒトミは直感した。
「お兄ちゃん……、あそこに、誰かいるよ」
ヒトミは、茂みの方を指差した。その言葉に反応して、ユーリはそちらを見た。ヒトミの感覚器官は、女の子モンスター故か、人間の五感を遥かに凌いでいるのだ。
確信を得た彼女がそう言う以上、何かがいるのだろうと、判った。
「……本当だな。……人?」
茂みの奥で草が揺れるのを見る事が出来た。
それは、時折揺れ、そして 別の場所でまた揺れ……、気配を断ちゆっくりと忍び足で歩いているようだ。人影も確認できた。尾行をされていたのだろうか? と思ったがが、そうならば 何故草木を揺らせたりする必要はない。自らの存在を明かすような行為をする筈がない。
ここはアイスの町の外れだ。気配を断って近づいた所で、町に何か有益な物があるとは思えなかった。
丁度、その時だ。……より大きく揺れた。どうやら、その人物は その場に倒れてしまったのだとユーリは悟った。つまり。
「ッ……」
「お兄ちゃん!」
すぐさま2人は駆け出した。
怪我をしているのか疲弊しているのかはわからないが、只事ではないのは判ったのだ。ここは、モンスターも多数現れる云わば危険地帯に分類される。そんな場所で倒れでもすれば、意識を失ってしまえば、どうなってしまうのか、考えるまでも無いのだ。瞬く間にモンスター達の餌食になってしまうだろう。
ユーリ達は近づき、倒れているのが誰なのかを確認する。
その人物は、衣服の所処が肌蹴、破れ、そして その脚には傷が多数付いている。腕には、恐らくは矢傷の類であろう傷があり、包帯を巻いているが血が滲んでいるのも確認できた。
そして、何よりもその容姿。紫色の長い髪に忍者の風貌の娘。
「かなみッ!」
その正体は、リーザスの忍者。
忠臣を目指し日夜努力を惜しまず、自分の事が目標だと言ってくれた少女だった。その少女が、何故か自由都市圏内、アイスの町の外れで倒れていたのだ。どうしてなのかは判らない。だが 只事ではないと言う事はよく判った。
ユーリは彼女を抱き起こす。
「かなみ、しっかりしろ!」
「お、お兄ちゃんの知ってる人? た、大変だよ。この
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