第8話
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その軍を手足のように使いこなす優秀な将が必要になる」
「でもそれなら、策の穴とは呼べないでしょう?」
「フハハ、策は人なしで成る物ではない、そして彼等の想像する『平均的な軍』と『平均的な将』では孟徳の策が成せる事は出来なかったであろう。」
「っ!?」
曹孟徳は優秀だ、しかし優秀すぎるが故に彼女は周りにも同じ高みの視点を強要していた。
「どうだ孟徳、高みばかりを気にしていては見えぬ事もあるであろう? たまには目線を落として周りを見るのも一興ぞ」
―――我が言いたいのはそれだけだ、と最後に付け加え袁紹は踵を返した。
「待ってちょうだい」
「む?」
「私も戻るわ、今回の件は説明不足な所も有ったし、貴方の指摘どおりに穴もあったもの」
「ほう、では?」
「ええ、非が全て私にあるとは思えないけど、勝手に見下して語ったことに頭を下げる事にするわ」
「それは重畳」
そして二人は肩を並べて来た道を引き返し始めた。
「……」
「……」
その道中で曹操はふと、隣の袁紹に目を向ける。
今まで彼女の考案した戦術や策を、頭ごなしに否定する者は居ても彼のようにその理由を説く者はいなかった。
そのため彼女は多大な鬱憤を溜め込んで来ていたのだが、今回の一件でその原因は自分が相手に要求する水準が高すぎるものだと知り、気が楽になっていた。
(まさか知らず知らずのうちに自分と同じ思考を強要してたとはね……、皆が何かと私を敬遠してきた理由がわかったわ、……それにしても彼はさすがね、それを理解して私に教えることが出来るなんて、私が彼に劣っているとは思えないけど学ぶところは多そうね)
そして袁紹も物思いにふけていた
(一見頑固なようで自分の非は認める器量、さすがは未来の覇王と言う訳か)
二人は互いを評価しあいながら歩き続ける
「……ありがとう」
「ん?」
「な、なんでもないわよ!」
礼くらい言わねばと思った曹操であったが、いざ口に出してしまうと何故か恥ずかしくなってしまい、即座に否定してしまった。
「ほう、孟徳の礼とは貴重な言葉を聞いたな」
「聞こえてたんじゃないっ!!」
「フハハハハハ、お主の声は良く通るのでな!」
「あっ、待ちなさい!!」
突然走り出す袁紹を追いかけ始める曹操、自然と笑みを浮かべておりその笑みは、いつもの他者を見下したような冷たさは無く心の底から笑顔になっていた。
………
……
…
しかし私塾に戻った二人に鬼のような形相で公孫賛が迫ってきたため、二人はまず最初に彼女に謝ることとなった……
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