PHASE01…2
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「お、新しいニュースか?」
突然、ぬっと肩ごしに覗き込まれて、キラとレンは我に返った。
「トールか…」
工業カレッジで同じゼミのトール・ケーニヒだった。隣にはミリアリア・ハウの姿もある。
コンピュータの画面では、ニュースの続きが映し出されていた。立ち昇る黒煙と爆音、逃げまどう人々、ビルの立ち並ぶ町並みは半壊し、どこか近くで戦闘が続いているらしい。
去年、プラント≠フ擁するザフト軍は、地球への侵攻を開始した。中立国オーブのコロニーであるここヘリオポリス≠ナも、開戦当初はみな、地上で行われている戦況を息をつめて見守っていたものだが、最近はもうそれにも慣れてしまった。
〈ーーこちら、華南から七キロの地点では、依然激しい戦闘の音が……〉
リポーターがうわずった声で報告する。
「うわ、先週でこれじゃ、今頃はもうおちちゃってんじゃねぇの、華南?」
トールがお気楽にコメントする。キラとレンは苦笑し、キラはコンピュータを閉じた。
少々軽率なところがトールの欠点だ。だが開けっぴろげで裏のない彼が、キラとレンは好きだった。いつも朗らかでしっかり者のミリアリアとは、似合いのカップルだ。
「華南なんてけっこう近いじゃない?大丈夫かな、本土」
ミリアリアは対照的に、不安そうな口調になる。
「そーんな。本土が戦場になるなんてこと、まずナイって」
どこまでも楽観的なトールの観測が、かつての親友の口にした言葉に重なる。キラとレンはふいになんとも言えない不安を感じた。
それでも彼らは、「戦争」なんて、自分たちと関係ないものと思っていた。コンピュータを閉じたら終わってしまう、画面上の単語にすぎないとーーこのときは、まだ。
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