第6話「虻も取らず蜂に刺される」
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銀時はスタンド化した新八たちとレイを身体に憑依させ閣下化し、お岩に刃を向けた。
対するお岩もTAGOSAKUを取りこみ閣下となって、抗う者たちを潰しにかかった。
仙望郷の廊下で二人の閣下の拳と拳がぶつかり合い、閃光を散らす。
その中で生霊三体の力を集めた銀時の拳は確実にお岩を押している。
――勝てる!
並はずれた霊力を持つ生霊を三体も憑依させた銀時には、そんな確信が芽生えていた。
しかし。
「甘いね!」
急激に増加したお岩の霊力は、銀時を廊下の隅まで吹っ飛ばす。その衝撃で中に入っていたレイや新八たちも周囲に散ってしまった。
「あんたと私じゃスタンド歴が違うんだよ」
ただスタンドを手足のようにこき使うだけでは『スタンド使い』とは言えない。
スタンドに憑依されても意識を支配されず、取りこんだスタンドの強大な力を意のままに操る者――それこそが『真のスタンド使い』だ。
銀時とお岩の霊力は確かに互角だった。
だが己に宿った霊力を最大限に引き出さなければ意味がない。初めて閣下化したばかりの銀時はまだスタンドの力を把握し切れていなく、それが結果的に命取りになってしまった。
裂けた口で不敵な笑いをこぼしながら、お岩は生身の銀時に歩み寄る。閣下化したと同時に天井を突き破る勢いで巨大化したお岩の身体は、そのまま銀時を踏み潰しそうだった。
「ギン、私はあんたにこの旅館を継がせるつもりで扱いてたけど、まさか噛みついてくるとわね。さすが私が見込んだ男だけあるわ」
「こんなクソボロ旅館もらったって嬉しかねっての。とっとと店仕舞いしやがれ」
全身に伝わる激痛を感じながらも、銀時は揺るがない眼差しをお岩に向ける。
未だ抗う男の姿を、お岩はむしろ嬉しそうに眺めていた。卓越した霊感と負けん気をみせない図太い根性。やはり女将の跡を継ぐのはこの男しかいない。
「何をしたって無駄だよ。そう、あんたも仲間も永遠に仙望郷で働き続けるのさ。シャーッシャッシャッシャ!」
勝利を確信したお岩は笑う。優越感に満ちた独裁者の嘲笑が廊下に響く。
【もうやめなよ女将】
お岩の背後から訴えるように叫んだのはレイだった。
【女将。この旅館は行き場を失った魂をあの世へ見送ってあげる場所――盆からこぼれた水を盆に戻してやるのが私たちの役目だったはずだよ】
それがここに来て初めてお岩に教えてもらったこと。
幼い頃親に捨てられ道にしゃがみこむことしかできなかった自分に、役目と生きがいを与えてくれたのはお岩だった。
解放された魂を見届けること、そして夫妻と一緒に働けることが何より嬉しかった。
なのに……
「それをこんな所でネチネチ縛りつけやがって。死んだ奴ァあの世へ行くのが自然の摂理ってもんだろーが」
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