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【銀桜】4.スタンド温泉篇
第1話「旅行の荷物はお手軽に」
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 薄暗い灰色の空とひんやりとした空気が漂う山の奥の奥。
 雪に埋もれたバス停留所。時刻表には一日一回の運行しか記されておらず、それはここがどれだけ寂しい場所なのか物語っていた。
 しかしそこに古びたバスが停まり、中から人が降りてきた。
「ずいぶん山奥まで来ましたね」
 バスから降りた途端突き刺さるような冷気を肌で感じながら、新八は辺りを見渡した。
 降り積もった雪で満たされた光景は、『銀色の世界』のように美しい……と言いたい難い。灰色の空や人気のない殺風景な景色のせいで、暗い陰湿な印象しか沸いてこない。
「バーさんの話じゃ知る人ぞ知る秘湯って話だからな」
 続いて降りた銀時は外の寒さに震え、羽織っていた上着をより身体に寄せる。
 お登勢の旧友が営む温泉旅館を紹介され、銀時たちは思わぬ冬休みを過ごすことになった。年明けはどこも予約一杯であり、そもそも旅行をするようなお金もない。
 秘湯に入れておまけにお登勢の紹介だから格安の宿泊費。貧困な自分たちにとってこんなにおいしい話はない。せっかくのお登勢の好意を無駄にするわけにもいかないので、銀時たちは温泉旅館へ泊まることになった。
 バスから降りるのは万事屋一行と銀時の妹・双葉、新八の姉・お妙、そして――
「いや〜悪いね。俺まで連いて来ちゃって」
 マダオこと長谷川泰三。
 トレードマークにして唯一の取り柄であるグラサンをかけた彼は、銀時たちに申し訳なさそうに言った。だがその愛想は表情と口調だけで遠慮の気持ちなど皆無に等しい。
 モンハン事件以来姿を見せなくなったが、やっと立ち直ったらしく数週間前『スナックお登勢』に久しぶりに顔を出した。その時偶然お登勢が銀時たちに旅行の話をもちかけている中に居合わせ、彼も参加することになったのだ。
「気にしなくていいですよ。旅行は大勢で行った方が楽しいっていいますからね」
「やっぱりそうだよな。にしても旅行なんてハツとの新婚旅行(ハネムーン)以来だ。思い出すなぁ。……やべなんか前が見えなくなってきた」
 かつては幕府の入国管理局局長。だが万事屋と出会ってしまったことでその後は負け組に転落。もう戻れない全盛期を思い出したのか、長谷川は哀愁漂う言葉をもらす。さらに目元には涙がたまり感慨にふけってしまっている。
 だがそのことなど全く気にしない女性が、手にしていた荷物を長谷川に突き出した。
「荷物運びに適任だ。これ頼んだぞ」
 双葉は無表情に告げ、自分の荷物を長谷川に無理矢理持たせ先を歩いて行く。
 それに続いて神楽たちも長谷川に自分の荷物を押しつけ始めた。
「なら私のもよろしくネ」
「長谷川さんって優しいですね」
「じゃ俺のも」
「僕のもお願いします」
「え?ちょ、ちょっと待って。重ッ!!」
 断る暇もなく長谷川の視界は一
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