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不可能男の兄
第一章
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通りに葵・トーリがいるかもと言っていたので、正純は後悔通りへと足を向け歩み始めた。



ニ人の男に相対するのは一人の男だ。
一人の男の手には荷物が抱えられていた。
荷物を持つ男、葵・ユーキは、"魔法《ケルト》少女バンゾック"の絵がプリントされている被り物をニ人の男に渡す。
ニ人の男はおもむろに荷物を広げて、

「コニたん、これは良いものだ」
「ノブたん、そうだね。これは良いものだね」
「今夜8時、図書室の担当ですので」

弟の代わりに変装コスを渡す。
品川商工会の小出の爺さんに、浅間の父親、文具店のシェーダー夫妻と多種多様の人に荷物を受け渡して、これで最後だ。
弟の頼みごとを無碍に対応する。

「ユーキ殿は何をなさるので?」

コニたんが聞いてきた。

「妹の喜美に顔が似ているので女装します。喜美がニ人で気味が悪いって正純がいいそうですけどね」
「そ、それは録音か録画を頼んでもいいのか?」
「正純が"幽霊探し"に参加するのであればしますけど、花火の方に行くと思いますよ」

ノブたんがものすごーく残念そうにしていた。

「しかし、ユーキ殿が女装とは、これははっちゃけてますなー」
「普段真面目だからまさか脅かす側に俺がいるとは誰も思わないでしょう。そういう事です。ええ、トーリの発案ですよ。まあ告白前夜祭としては良いサプライズだと思います。迷惑がかかるのはクラス連中だけですので」
「ああ、驚いて泣き叫ぶレアな正純が見れれば良いのだが。花火の方だろうなあ。残念だ……、誠に遺憾である」

地面に膝を付き、握った拳でバンバンと地面を叩く様は心底悔しい、という感じである。
見るに耐えないという感じではないが、そこまで悔しがるような事でも無いと思う。

「物のついででなんですが、頼みごとがあります」
「なんでしょうか?」

コニたんが我に帰っていた。

「俺を匿って下さい。夜までクラス連中に見つかるわけにはいかないので」
「サプライズ演出の為に必要、ということですな」

話が早い。
このニ人は暫定議会の人間だ。
ならばこそ、隠れる先には適切だ。
暫定議会に繋がりがあるのは正純くらいだが、正純は暫定議会に顔を出すことはない。

「ええ、お願いできますか?」
「いいですとも、今後もご贔屓にして頂けるならば」
「正純の活躍記録を影で我等に送るという重責を続けてくれるのであれば承諾しようではないか」
「その程度であれば……。いいですよ」

友達を売るというよりは、成長記録を撮って親に届けるという感じなので罪悪感はない。

「先に向かうが良い。私たちは……寄るところがあるのでな」



武蔵アリアダスト教導院に伸びる階段の上に葵・喜美は座っていた。
彼女は階段に
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