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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
騒がしい春の協奏曲(四月)
第一章 小問集合(order a la carte)
第二話 彼らとの出会い
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第二話

柔らかな風に靡く銀の髪。
そして、うっすらと翳りを投げかけるような深い菫色の瞳。
その美しく微笑む唇からこぼれる声は、まるで陽に透かした翡翠のような透明感を持つ。
彼女の整った容姿は同じ方向に進む者は足を止め、反対に歩いていく者は思わず二度見してしまうほどで
彼女が例え物憂げな顔をしていたとしても、その顔を蔑むようなことを誰も口にしない。
彼女の顔があまりにも整いすぎて、誰もが言葉にできないというのは“彼”には幸か、不幸か。


学園へと延びる坂道の両脇には桜が一定間隔を置いて植えられており、ちょっとした桜並木になっていた。
今はまだ四月の前半、葉桜に成りつつ桜の木々はその花弁の雲が徐々に欠けゆき、今わずかに残った花弁もまた空を舞い、終には今日明日で全ての花びらが消えゆくであろう。

そんな光景をぼんやりと眺めながら、僕は考えごとをしていた。
僕のいく学園は全く新しい制度を取り入れた試験校であるらしく、試験召還システムの開発者、藤堂カヲルが学園長を兼任しているらしい。
学力向上を目的とし、偶然の産物によって生まれたそのシステムを用いて生徒は教師の立ち会いの元、試験召還獣を使った戦争を二年生からはすることができる。この戦争は試験召還戦争と名付けられ、通称「試召戦争」と学園では呼んでいるらしい。
全て伝聞系の情報であり、いま一つ理解に苦しむ。
そもそも試験召還システムとは何であるのか、根本の部分から疑問は始まる。
そして、何故競い合う場を戦争という形にしているのか。
おそらく僕もこの戦争に否応なくクラスの一員として巻き込まれることになるだろう。
だからこそすこしでも情報が欲しいのだが、あまりめぼしい物がない。
学園側もデータを厳重な電子ロックと物理的な隔壁によって守っており、こちらはアプローチをかけることさえ難しいようだ。

我ながら不穏なことを考えていると苦笑し、考えを断ち切るためには僅かにかぶりを振る。
学園の校舎が見えてきた頃、遠くからでも誰か分かる、体の作りが良い色黒の男性教諭が門のところに立っているのが見えた。
横を通り過ぎる生徒たちに封筒を手渡しているらしい。
もしかしたら名前の確認をしてないところを考えれば、全生徒の名前を暗記してしまっているのかもしれない。
「おはようございます、西村先生。」
「うむ、妃宮。体調の方はもういいのか。」
「おかげさまですっかりよくなりました。」
生徒に挨拶をしていた西村先生に呼び止められる。ちなみに愛称は鉄人らしい。
僕が構内を見学したときに引率をしてくださった先生で、学園長と共に僕が実は男だと言うことを知っている数少ない学園関係者の一人だ。
趣味はトライアスロンだそうで、史が集めてきた噂によると、その肉体は落ちてきた岩をもはね飛ばすとか。

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