暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第16話 査閲と
[1/5]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話

 宇宙歴七八四年一一月 キベロン演習宙域 査閲部 統計課 


 オスマン査閲集団の査閲下におけるロボス第三艦隊の演習がついに開始された。

 まずは各小戦隊の砲撃・移動訓練が、ついで単座式戦闘艇の近接戦闘訓練が、訓練誘導弾を利用した雷撃戦訓練が開始される。おおよそ一〇〇隻前後の集団、あるいは一〇〇〇機前後の戦闘艇が次々と標的を撃破していく。
俺や年配の尉官達はそれら各小戦隊から上がってくるデータと、標的の撃破状況のデータの双方を比較し、その撃破率、撃破時間、評価点を叩きだしていく。ここまでのところ対静止標的・対可動標的共に他の正規艦隊や独立部隊よりも評価点が高い。

「さすがロボス中将の第三艦隊だ。同盟一の精鋭の名は伊達ではない」
 同僚の一人が査閲中に思わず漏らした言葉だったが、俺もそれには同感だった。単純な撃破率であれば文句なしに最強といっても良いだろう。ただ俺の心の中にはグリーヒルに対する反感以上に、なにやら言葉にするには難しい、何となくモヤモヤする得体の知れない違和感があった。

 三日かけての演習第一段階の戦隊別訓練が終わると、演習対象の第三艦隊乗組員には休養が与えられる。だが、査閲官にはそれはない。第三艦隊の総隻数は一三〇六〇隻。旗艦を含めた分艦隊が五つ。戦隊は二八。小戦隊にいたっては一五〇以上ある。それら一つ一つの戦隊ごとに評価点を出し、コメントがあれば書き込んでいく必要があるからだ。三〇人以上の査閲官が参加しているとは言っても、一戦隊を一人の査察官だけで評価するわけにはいかない。俺はフィッシャー中佐が率いる一〇人チームの一人として、評価会議に参加している。

「第七七九戦艦小戦隊、対静止標的撃破率八八%。対可動標的撃破率三五%。まず一五八点。小戦隊各艦延べ移動距離は五.四光秒……少し長い。マイナス九点」
 ようやく一〇人が座れる会議室で、中央の三次元投影機を動かしつつ、一つ一つの演習科目に対する評価点を足したり引いたりしている。フィッシャー中佐が一つの小戦隊の評価を終えると、チームの一人一人に意見を求め、必要と判断できるコメントを俺に指示して入力させ、報告書を作り上げていく。午前八時から午後九時まで。食事すら司令部の従卒に運ばせて、ひたすらそれの繰り返しだ。その間、ずっと喋りっぱなしのフィッシャー中佐に、俺はたまらず昼食の時に聞いてみた。

「中佐、よく喉が嗄れませんね」
「少尉。これには『コツ』がある」
 やはりサンドイッチに紅茶という英国スタイルは変える気がないらしいフィッシャー中佐は、三杯目の紅茶を傾けた後に、俺にこっそりと囁いた。
「大声を出さないこと、喉の少し口よりの処から声を出すこと、読み上げるときだけは目を細めてぼやくようにすること。この三つだ。それでも演習最終日は蜂蜜とオレンジが欲し
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ