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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十一話 苗川攻防戦 其の三
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皇紀五百六十八年 二月二十三日 午前第十刻 小苗陣地 丘陵頂上付近
独立捜索剣虎兵第十一大隊 大隊長 馬堂豊久少佐


 猟兵達が渡河を挑み苗川は朱に染まってゆく。
 砲兵陣地から放たれる砲弾が降り注ぐ中でも、〈帝国〉砲兵は決死の覚悟で兵達の渡河を援護せんと装填を行っている。
 ――此方に余力は欠片もなし、と。
指揮所から出て、兵站幕僚――というよりも事実上の副官である米山中尉と共に最前線を眺め、馬堂少佐はうんざりと呟いた。
「西からは騎兵大隊、北からは〈帝国〉猟兵旅団、間をとって北西からは鬼でも攻めて来るのか?」

「大隊長殿、鬼門は北東です」
「‥‥‥そう」
「‥‥‥そうなのです」
 北領の風は冷たかった。

「渡河した騎兵を排除すれば追撃の戦力が厳しくなる。
これ以上の部隊の渡河は大規模にせざるをえない。数で圧倒する為には工兵によって架橋を行わなければならないだろうな。現状は我々の目的である時間稼ぎには最高だ。
 ――だからこそ問題は側道だ。ある程度の築陣は行ったがこの苗川の様な地の利は除雪していない隘路位しかない、たとえ此方が有利に戦闘を終わらせてもあちらとこちらでは頭数が違いすぎる」
 大隊長が心配そうに側道方面へと顔を向けるのを見て米倉中尉が力強く励ます。
「だからこそ、この大隊では随一の戦上手を当て、戦力も割きうる限りを配置したのです。
新城大尉殿ならば必ずや」



同日 同刻
小苗渡河点陣地より後方半里 西側道 防御陣地 
独立捜索剣虎兵第十一大隊 側道防衛隊長 新城直衛大尉


「此処で殲滅すれば敵も鈍るのだがな」
 除雪されていない隘路、疲労した馬に兵、考えうる限り騎兵が戦うには著しく不利な状況である――だがそれでも帝国の胸甲騎兵部隊は精強であった。
 砲声が轟き、騎兵であったものが同胞達に降りかかる、それでもなお精兵達は怯まずに突撃する。最早先頭は半里程度の距離しか無い。
予備隊約二百五十名を配置した壕、その五十間前方に馬防柵を設置してあるが、それも足止め程度にはなるが決してそれ以上では無い急拵の物だ。

しかし、予備隊の主力である鋭兵二個中隊と剣虎兵小隊は皆が施条銃装備である。
これが新城に与えられた唯一の贅沢である。

「大した統率だな。この悪路で叩かれても尚も退かない。」
 新城の不機嫌さを感じたのか彼の猫である千早が顔を寄せ彼女の眉間を揉みながら様子をみる。
  ――敵は分隊規模の横列で縦隊を組んで突進しているが、この隘路では密集せざるを得ない。

「軍曹、もう一度撃ったら馬防柵付近への集中砲撃の用意をさせろ。」
「はい、大尉殿。」
そう答え、観測結果を伝える声の方を向きぐったりとしている金森を気遣わしげに見た。
 ――見た目はまるで子供の
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