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Fate/insanity banquet
Second day
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「う……ん」
 目覚めの悪い朝だと、士郎は思った。今まで見ていた夢のせいなのか、少し気分が悪い。折角今日は休日だというのに、目覚めが悪いというのは辛いものだ。生々しい夢での描写を、目が覚めた今でも覚えている。鉄臭い中に倒れていたあの少年は、一体誰なのか。そして、少年を殺した誰かの存在。一番不思議なのは、殺されることに疑問も持っていなかった少年の心境だ。まるで、自分が殺されることが分かっていたかのようだった。
「というか、あれは誰なんだろう」
 過去の記憶だということは、なんとなく分かっていた。服装から、かなり昔の記憶であり、日本ではない場所での記憶だということも推測できる。英霊の記憶なのだろうか、と考えるがこの冬木に新しい英霊の存在なんて聞いていないし、そうなると考えられるのは。
「クロ?」
 自分の布団の上で丸くなっている子猫を見る。確かに、いつもと違うものと言えばこの子猫しかいない。
「気にはなるけど……」
 所詮は夢だ。そして、ここに居るのもただの一匹の子猫だ。また何かが始まってしまうのでは、という不安に駆られてしまったが、心配し過ぎなのかもしれない。ここには、セイバー、ライダー、アーチャーの三人の信頼できるサーヴァントたちがいる。そして、凛、あの戦いから成長できた自分もいる。きっと何があったとしても、大丈夫だ。
「クロー朝だぞ」
 つんつんと突っつくと、クロは尻尾を揺らす。ゆっくりと瞼を開け、金の瞳を士郎に向ける。
「おはよう、クロ」
 士郎が声を掛けると、クロはみーと鳴く。そして、ぴょんと跳ねると、士郎の胸元に飛び込んでくる。
「わっ……。びっくりさせるなよ」
 すりすりと顔を摺り寄せる仕種は、やはり可愛い。ペットを飼う人間の気持ちが、結構分かるかもしれない。こんなにも自分に懐いてくれると、ものすごく甘やかしたくなる。クロを撫でていると、いつの間にか金の瞳が自分を真っ直ぐに射抜いている、そんな気がした。何かを伝えようとして、自分を見ているのではないかと感じ、じっと見つめ合う。
 と、次の瞬間。
「衛宮士郎! いつまで寝ているつもりだ。今日は、朝九時からスーパーの日曜特売の日だろう!」
「シロウ、今日の特売は豚バラ肉だと、アーチャーから聞きました。今日の夕飯は、豚の生姜焼きを所望します!」
 ぴしりと音を立てて開けられた襖から、セイバーとアーチャーが顔を覗かせる。ちなみに、アーチャーはなぜだかエプロンをしている。地味に似合っているのは、やはり彼は自分なんだなと思ってしまうところである。
「すぐ支度するから、待っててくれ」
 そう言って部屋の時計を見ると、時刻は八時二十分。どうやらかなり寝坊してしまったようだ。士郎の焦りに気が付いたのか、クロは甘えるのをやめて、廊下へと出ていった。士郎はいつもの服をタンスから出し、
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