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黒き刃は妖精と共に
【プロローグ】 化猫の宿
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「本当に、ありがとうございます。ウォードックを撃退するだけでなく薬草までいただいてしまって……最近はめっきりとりにいくこともできなかったのでとても助かります」
「ああ、いえ。そっちは僕にではなく彼女たちにお礼を言ってください。薬草は僕が採取したものではなく彼女たちが採取したもので、彼女たちの好意によるものですから」

 云うと、横で青髪の少女がとんでもない、といわんばかりに首を横に振った。先の戦闘で補助をかけながら謝ったことといい、いいものを持っているのにいささか自主性にかけている少女だ。
 よほど困っていたのだろう、集落の住人たちは僕たちが見えなくなるまでいつまでも頭を下げていた。
 無言で、ウェンディ・マーベルと名乗った少女と並んで歩きながら今日起こったことを思い返してみた。
 ウォードックの撃退。旅をしながらの日雇い傭兵の身では久しくなかった骨のありそうな依頼に嬉々としてのぞんだのは今朝のことだ。たまたま行き付いた集落の人々に好意で食事と屋根つきの寝床を提供してもらったお礼として、自分が基本的何でもする傭兵崩れであると説明すると、是非にと依頼されたのだ。
 目的こそあっても行先は特にない僕の旅路、行く先々に何があるかなどしらべたことはない。
 ないが、一般的な知識程度は持ち合わせている。
 寒冷地域にのみ生息するはずのウォードッグ。それがこんなに暖かな地域で目撃され、被害が出ている。
 内容としてはいささか虚を付かれたものであったが幸い単独で討伐が可能な類のモンスターであったため、食事と寝床のお礼としては十分だと無償で引き受けたのだ。
 集団で狩をするモンスターであったことも幸いし、そこまで迷うこともなくウォードックを発見。あくまで依頼内容は殺害ではなく撃退であったため適当にあしらっていたのだが……。

「…………」

 残念そうな表情で僕の横を歩く少女。
 そう遠くない場所にあるケット・シェルターというギルドの一員だというこの子の元に逃げた一部のウォードックが襲い掛かっていたのだ。
 何とか幼い命が食いあらされるという最悪な結末は逃れたものの、少々怪我を負わせてしまった。
 まぁ、それは珍しいことではない。
 否、珍しいほうがいいのだが、あいにく一箇所に常駐している人間ではないので依頼を受けたころには誰かがすでに怪我を負っている、なんてことは日常なのだ。今回のようによほど辺鄙な場所に住んでいる人間からの依頼でもないかぎりその町に拠点を構えるギルドの人間が問題を起きる前に解決してしまうため、僕に来る依頼は大体起こってからのものであることが多い。
 彼女の場合は、依頼主と関係する人間ではないので少々特殊なケースだったが、それでも怪我の手当てをして送り届けておしまい、となるはずだった。
 しかし、彼女の発した意外な
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