暁 〜小説投稿サイト〜
アッシュビーの再来?
第4話、亡命者達
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
り学んだが、統合作戦本部トップのシトレ元帥はもっと詳しく知っているはずであり、機密云々など単なる世間話のようなものだ。おそらく、シトレ元帥は予想外の話し合いの流れに少しでも考える時間が欲しいのだろう。

「あれだけマスコミに注目されては情報を守ることなどほとんど不可能でしょう。そのことを閣下ほどのお方がご存知ないはずありません。それよりも閣下は亡命者の任官に反対しておられるのですか?」

「親国防委員長派はマスコット以上の役目を亡命者達に期待していなかった。それを私はせめて戦術研究所に入れて同盟の役に立てようと考えていたのだよ。だが……」

 シトレ元帥は椅子から立ち上がり、ハイネセンポリスの街並みを見て言いよどんだ。ラデツキーは無礼を承知で水を向ける。

「だが?」

「だが、事態は完全に変わった。実はエルファシルの英雄からニ度も亡命者を同盟軍の提督にするよう提言され、私はその都度却下していたのだ」
「エルファシルの英雄…… 私はよく知らないですが相当な切れ者のようですね」

「時々切れる変わり者だ。そしてホーランド提督と同様、大衆の英雄だ。例え彼の名前が忘れさられようともエルファシルの市民を救った英雄がいたことを大衆は決して忘れない。そして今や自由惑星同盟を代表する二人の英雄が、亡命者を提督にするよう私に推薦しているのだ。この時点で私に、いや政府でさえ、亡命者の任官を拒否する選択肢はなくなった。大衆から絶大な支持を受けるであろう両英雄の一致した行動を、誰が止められるというのだ」

「ならば協力して頂けるのでしょうか」

「そのつもりだ。ただし条件がいくつかある」

「なんでしょうか?」
「貴官に亡命者を預けるということは必然的に配属はホーランド提督の第十一艦隊となる。帝国の大貴族の横暴から命からがら逃げてきた亡命者に、ホーランドの下へ行けなどという仕打ちはできん。本人達の同意を取りたまえ。成功すれば彼らを准将の地位で貴官に預けよう。駄目なら人格者であるビュコック提督に預ける」

「承知しました。ですが一つだけご意見を申し上げて宜しいでしょうか」「何かね」

「ホーランド提督は自分の部下にならない亡命者を推薦などしないでしょう。それどころか総力をあげて軍から追い出すかもしれません」

「なるほど。貴官がそう言うならそうなのだろう。いずれにせよ私はこの問題で終始両英雄の意見を真摯に聞いてきた。このことを貴官が忘れなければ問題ない」
「もちろんです。おそらくホーランド提督も閣下の協力を忘れることはないでしょう」

 他に幾つか細かい約束をさせられて退室したが些末なことだ。ラデツキーは協力的なシトレ元帥から亡命者の機密ファイルを借りて熟読すると、早速亡命者を訪ねてみることにした。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ