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不可能男の兄
プロローグ
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それは、褒められているんですかね。
嬉しいような、嬉しくないような。

「まあ、総長は馬鹿ですからねー。何も考えてないんでしょう」
「本能のままに正純の尻を眺めるとは、重症だな。殴って目覚めるかなあ」
「どうでしょうね。ますます馬鹿になるんじゃないですか?」
「馬鹿が一回りして正常になるかもしれないぞ」

ユーキさん本気ですねぇ。総長、ゲンコツで済めばいいですけど。

「私ではわかないので、試して見ればいいのでは?」
「アデーレって遠慮ないよね」

ユーキさんも遠慮ないですけどねー。

「走り終わったら朝飯食ってくか?」
「えー、と。どうしましょうね。あまり、たかるのも良く無いですからね」
「成長期だから遠慮するなよ。成長期だから、諦めるなよ」

何を諦めるなと。
それを言わないのがユーキさんらしいですけど。
付き合いは長いですけど、一番の謎はユーキさんは総長や喜美さんと暮らしているのにまともなんでしょうね。
クラスの中でも鈴さんの対抗馬としてストッパー兼ブレーキ役を兼ねて更に副会長と同じく真面目系と属性が沢山付いていると思う。
敢えて苦労を背負う様にしているのか、それとも素でやっているのか、どうなんでしょうね。

「朝飯、いただきます。……持ち帰りで」

以前の様に家で朝飯を食べると全裸の総長が現れたり、半裸の喜美さんが現れたりするので厄介なんですよね。



「なあなあ、兄ちゃん。"武蔵"さんのパンツ見たくね?」
「愚かな弟。やめときなさい。危険過ぎる……! 怒られるのはトーリだが、放置した責任を兄が問われるんだぜ。これ、大切だから覚えとけ」
「うんうん。わかったぜ。兄ちゃん。やるな、やるなの前フリだな?」

芸人だからしょうが無いと言い訳をしたいところだ。
武蔵の総長であるため無能と示す為に馬鹿な行動をするのと、パンツを覗きに行くのは全く持って何の関係性もない。
今のトーリの全裸も同じく無能の証明に不必要な格好である。
そもそも、聖連には不可能男《インポッシブル》と既に認められているのだ。
厄介なのは、俺に"武蔵"さんのパンツを見たくないかと聞いてきた事だ。
これは、俺は見に行くことを兄である俺に言ったぜと言い訳を作っているのだ。
俺、兄ちゃんには事前通達したぜっ! と声高らかにするに違いない。
放置したら当然のごとく外道達からは覗き犯を番屋に差し出さなかったと言われるだろう。
しかし、番屋は現行犯じゃないと捕まえるのは厳しい。
ならば、

「トーリ。"武蔵"さんは自動人形だ。だから、パンツなんて穿いてるわけないだろ……」
「え? マジで! ノーパンか? ノーパンなのか?! こうしちゃいられねぇ。どうあっても"武蔵"さんのスカートの中を見に行くぜ!」
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