「 SAO ~キリトさん、えっちぃコトを考える~」の感想

禍原
禍原
 
良い点
・思春期のキリトさんの言いようもないもやもや感が良く出ている。
・アスナさんの天然ツンデレ具合が良く書かれている。
・物語の構成がしっかりとしている。
 
悪い点
・脱字
第一話:アスナの空中ソードスキル練習のところ
『貫かれる、大型犬ほどもあろうかとう巨鳥の顔面。』
『ほどもあろうかとう』→『ほどもあろうかという』

・第二話のキリトのセリフに違和感
「……ずいぶん手荒な歓迎ですね」
初対面で足吊りトラップを仕掛けてくる相手に向かってキリトさんが敬語を使っているところに違和感がありました。

・第三話のキリアスの尾行のところに不要な空白
『二人で通行人を装って露店のパンをかじりながら、 ちらりと標的を見やる。』
『かじりながら、 ちらりと』→『かじりながら、ちらりと』
 
コメント
どうも、鞭担当の禍原です。
感想に参上いたしました。

いや、うん、はい。意図せず最後までニヤニヤしながら読んでしまいましたよ。
SAOにて『エロ』に着眼点を置き、それを短編として纏められたKTさんに敬意を表します。

各話の終わりにちゃんと《引き》をもってきて、四話の最後でもしっかりとした結末にくわえて喜劇的な落ちも用意しているなんて、構成としても文句なしな出来でした。

それでは、鞭担当としても言葉を連ねましょう。

第二話にて、館――アダルトショップ・インビジブルにアスナが乱入して来たところから第三話の始めまでを順序立てて見ると、

1.館にてキリトとモザイク口論
2.アスナ乱入→キリトと同じ罠にかかる
3.カシャッ『閃光@宙吊りなう』
4.モザイクと口裏を合わせてアスナに偽依頼を説明
5.モザイクに『閃光@宙吊りなう』で取引される
6.キリト依頼を引き受ける
7.アスナが同行することになる?

となりますが、ここで幾つか疑問な点があります。

・罠にかかったアスナの反応は?

シャッターチャンスは当然のこと、近くに居ればモロ見えな状態だったと思われますが、そんな状態になってアスナさんはどういった反応をしたのか。
相当な混乱に陥ったことは想像に難くありません。「イヤッ、ちょ、み、見ちゃダメ――!!」と罠にかかりながらスカートを必死に押さえるアスナさんや、「ねえ見た!? 見たでしょキリト君っ!?」とキリトに詰め寄るアスナさん、「というか、なんでこんなところにトラップなんて仕掛けてあるの?」としばらくして冷静になるアスナさんとかが思い浮かびました。そしてそれをどうやって宥めたのか。


・取引と、アスナ同行決定のタイミング

前述のように罠にかかったアスナさんが興奮状態になった場合、モザイクがキリトさんに『閃光@宙吊りなう』で依頼の取引を行うタイミングが良く解りませんでした。アスナさんが居る所じゃまず取引出来ないですよね?
いつキリトさんが依頼を引き受けたのか、そしていつアスナさんがそれに同行することになったのか。

私の考えを付け足すと以下のようになります。

1.館にてキリトとモザイク口論
2.アスナ乱入→キリトと同じ罠にかかる
3.カシャッ『閃光@宙吊りなう』
4.アスナ混乱
5.キリト、アスナを宥める
6.冷静になったアスナ、罠や何故キリトが此処に居るのか等を問いただす
7.モザイクと口裏を合わせてアスナに偽依頼を説明
8.モザイクに『閃光@宙吊りなう』で取引される
9.キリト依頼を引き受ける
10.アスナが同行することになる?

となります。
8~10の時間軸とアスナさんの動向が不明なんですね。


■長いあとがきについて

「自分が頭の中に思い描いた世界を文章にしたい!」と思い、なおかつ「もっとうまく書きたいのに、頭の中の物語がうまく文章にできない」と悩む人…………モロに私ですね。物語は思いついてはいるものの、それを上手く表現できずに長い時間考えてしまう。結果、遅筆となると。

・物語の始め方
『リンク・スタート』、『フレンジーボア』、『茅場さんのルール説明』、見事に全部当てはまりますね、私の作品。
一応言い訳をしておくと、私はそれぞれに意味を入れて書いているつもりです。
『リンク・スタート』には、SAOを始めた動機。それは主人公の人となりを説明する意味も含まれています。
『フレンジーボア』には、初心者は梃子摺るという最初の難関としての意味を。
『茅場さんのルール説明』には、ローブの巨人というインパクトを冒頭に入れて読者を引き付けようという意味を。
まあ、それらが上手く機能しているかは謎ですけど。
重要なのは物語にちゃんと《意味》を乗せることだと私は思います。ただ原作で書かれていたから、というのではなく、この部分は主人公にとってこういう理由で大事だから、という意味を籠めて書くシーンを選んでいます。

しかし、確かに先のそれらがSAO二次でテンプレ化しているのは事実ですね。
それに『ホルンカ村』『第一層迷宮区ボス戦』までがほぼセットで同じような作品が多く見られます。

多様化してくるのはその先となるので、最初の数話で「またこの展開なのか」と読むのを止めてしまう方も少なくはないと思われます。

この『キリえち』の掴みは私個人に限っては成功していますよ。それはもう抜群にw

・短編
確かに長編を書くのはしんどいと思うことは多々あります。
私としても短編を書きたいと思ったことは少なくないのですが、どうしても物語の構想を短編に収めることが出来ず、溢れてしまうんですよねー……。


『キリえち』は今まで私が読んだ短編の中でもかなりの上位に入ると思います。私の好みの設定だったということもありますが、物語の構成も文句なしでした。

実は私は短編を少し避けている部分がありました。楽しい物語は長く続いて欲しいという考えから、長編作品で面白いものを探すようにしていたので。
なので少し考えが変わりました。これからは短編にも触手を伸ばしてみようと思います。

以上で感想を終わります。

長文悪筆、失礼致しました。 
作者からの返信
作者からの返信
 
 禍原さん、感想ありがとうございます!
 おお、とうとう自分のところにも……ちょっと感動です。

 まずは誤字のご指摘、ありがとうございました。訂正しておきました。そしてキリトさんの敬語、「年上で初対面の時ってキリトさん敬語だったっけ……」とちょっと記憶が曖昧です、クラインとかを考えるとたぶんタメ口だったかな? と考えて直しておきました。むぅ、自分の記憶力も衰えたなあ……。

 なんだか飴のほうまで書いていただいたようで、ストーリーなどお褒めに預かり光栄です。やはりこのくらいの長さだといやがおうにもストーリー展開を考えざるをえないですね。起承転結、あるいは「引き」の練習にはいいですね、短編。楽しんでいただけたようなら幸いです。


 で、ここから鞭のほうに。
 まずは感嘆の声を一言。禍原さん、さすがです……。
 「突かれると痛いなー」という点を的確に突いてこられる(笑)

 ほかの作者の皆さまは基本的に返信は「ありがとうございます」で終わっているんですが、自分としてはもっとお話ししして深めていってもいいかなーと思うので、ちょっと長文になるかもですがあそこのシーンについてのことをお書きしますね。禍原さんの参考に、あるいはこの感想を読む数少ない作者の方の創作の参考になれば。


 さてさて、二話の終わりから三話の初めの不自然さ。ここですね。

 自分のもつ情景描写、物語展開の手段のひとつに、『書かない』という選択肢があります。これは「文章や会話で描くのが非常に手間と文字数がかかる+そこに面白みがない」という場合に、『話数を跨ぐことor記号で区切って極小の描写でぶっ飛ばす』という手法ですね。今回もかなりこれに近く、そこを一気に省略しているのですね。

 では、ここで問います。
 あの場面は果たして「面白みがなかった」か。

 自信をもって応えましょう。絶対面白くかけました(笑)

 顔を真っ赤にして恥じらい、怒るアスナ。どぎまぎなキリト。面白がるモザイク。なんとか取り繕うキリトに、かえって奮起して尾行同行を自ら申し出るアスナ……。うん、面白くできる要素+この物語にぴったりなギャグ展開要素満載です。そしてそれを裏付けるように、二話の文字数は三千五百字、おあつらえ向きに平均の五千字に比べて千五百字ほどの空きスペース。

 では、なぜそれを書かなかったか。
 いいえ、書けなかったんです。己の実力不足で(涙)

 ここでその「恥じらうアスナ」を書いてしまうと、前後の「無邪気で、下着が見えることに気づいてないアスナ」との整合性がどうしても取りづらくなってしまうのです。実は今回は「恥じらうアスナ」はかなり少なくなっていて、その逆の「無自覚の誘惑をするアスナ」を強調して書いてあります。それをこの短い字数で上手く展開、反転させるのがどうしても今の自分の技量では難しかった。

 で、そこが難しかったせいで自分、ここを例の『ぶっ飛ばし技』でまるっと誤魔化したんです。

 そう、ここは「書かないほうがよい!」と思って『手法』としての「書かない」ではなく、「書けないし飛ばそう……」という『逃げ』での「書かない」だったんです。……うん、すごく「ここ指摘されると痛いなー」な部分だったのです(苦笑) まだまだ精進不足の点ですね。ただ、この『書かないことによる利点』という手法は作者の方は覚えておいて損はないのでは、と思います。皆さんの引き出しの一つになれば。


 さて、あとがきのほう。

 自分もちょうど『冷厳』の一話を読んでいたのですが、いえアレは全然うまく乗り切ってる部類ですよ。そして禍原さんのおっしゃるように、それぞれの話に「意味」をきちんと持たされている……持たせようと意識している段階でこの関門は十分突破していらっしゃると、自分は思います。その意識さえあれば、文章力は後々ついてくるものでしょうし。

 ついでに言えば引き込むのはあと二点、ですかね。

 一つ目はやっぱり、文字数、でしょうね。四~五千字程度一話にあるならこれらの原作と同じ展開をなぞりつつも独自の描写ができるのですが、千字とか二千字とかではやはり無理があるのでは……というのも思ったりしますね。

 二つ目は更新速度。この辺りの原作をなぞる展開を二、三話続けた後、二~三週間更新なし……となるとどうしても足は遠ざかりがちですね。せめてなんらかの独自の展開を見せるまでは毎日や隔日くらいで投稿すると全然違うだろうになーとも思います。その辺までは……できれば物語第一章の山場まで、書き溜めできれば理想ですよね。禍原さんの盤石、満を持して書き溜めての投稿開始っぷりに憧れます。


 まあそれはそれとして、『キリえち』の掴み(笑)
 これは自分でも卑怯だなあと思います。ラノベの王道「エロで気を引く」。こればっかりで人の目を引くのに慣れてしまうとほかの手法がもう使えなくなりそうで怖いですね。これもいろいろと本を読んで自分の中で引きだしを増やしていきたいですね。


 短編。

 コレはどっかでだれか言ってたんですが、「時間と熱意さえあれば長編のほうがはるかに簡単」とはよく言ったものです。短編をうまくかける方はホントに、時間さえかかってよければ必ずいい長編が書けると自分は思っています。しかし逆に長編をうまく書けるからといって短編もうまくまとめられるとは限らない……。自分も今回はかなり苦戦しました。

 そう言った意味でも作者の方にはもっと「自己紹介」のような意味合いの短編完結作品を書いてほしいなあ、という思いもありますね。なんだか「暁」では短編である利点ってあんまりないし短編の定義もはっきりしない感じですが、もっと「短編」の機能を生かしてもいいかもですね。


 こちらこそ長文、失礼しました。
 長文のご感想と、ためになるご指摘ありがとうございました!