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万華鏡

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第八十三話 卒業式に向けてその十二

「本当に凄いから」
「あの匂いを遥かにですね」
「凄くした匂いですね」
「そう、凶悪なものがあるわよ」
 その女の子の匂いはというのだ。
「女の私が言うから間違いないわよ」
「女子寮はですか」
「実際は」
「花の園っていうけれど」
 その実態だった、今先輩が五人に話すことは。
「ラフレシアだから」
「ラフレシアってあの」
 その花の名前を聞いてだ、彩夏が曇った顔で言った。
「ジャングルに咲くっていう」
「世界最大のお花ね」
「ただ大きいだけらしいですね」
「ええ、大きいだけで」
 それでというのだった。
「綺麗じゃないのよ、全然ね」
「しかも匂いがですよね」
「凄いのよ」
「全然いいお花じゃないですよね」
「そうなのよ、だからね」
「女子寮はですね」
「そうしたものなのよ」
 ラフレシアに他ならないというのだ。
「男の子がどう思ってるかは知らないけれどね」
「ううん、女の子だけだとですか」
「決していいものじゃないんですね」
「異性の目って必要なのよ」
 女の子にしても、というのだ。
「若しそれがないと酷いから」
「うちの女子寮も」
「そっちも」
「虫が湧いたりとかもね」
 それもだというのだ。
「一歩間違えたらあるから」
「虫って」
「そこまでなんですか」
「そうよ、ゴミを放ったらかしにしてるとね」
 夏は特にそうだ、少し油断しているとだ。
「そこからね」
「虫が、なんですね」
「出て来て」
「大惨事になるわよ」
「何かもう」
「お話聞いてるといい場所じゃないですね」
 五人共こう思った、寮の話を聞いて。
「花園とかじゃなくて」
「魔窟なんですね」
「まあ魔窟ね」
 実際にそうだと言うのだった、先輩も。
「私も二年近くあそこにいるけれど」
「それが女子寮ですか」
「現実なんですね」
「しかもうちの学園はそうでもないけれど」
 ここで先輩の話がこれまでよりもシビアになった、そして言うことは。
「上下関係も厳しかったりするから」
「あっ、それですか」
「学年ごとの」
 五人もこのことはすぐにわかった、伊達に女子高生ではない。高校にいると学年の壁は絶対のものだからだ。
「それもですか」
「厳しいんですか」
「うちは敬語使うけれどざっくばらんだから」
 学年の上下関係は、というのだ。
「けれどね」
「学校によっては」
「それが」
「そう、厳しいのよ」
 その厳しさのレベルもだ、先輩は話した。
「帝国海軍とかね」
「あの江田島の」
「帝国海軍ですか」
「そのレベルの学校もあるから」
 こう五人に話す。 
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