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美しき異形達

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第十七話 最後の少女その三

「今はお話をする為に来てもらっているから」
「だからかよ」
「足が痺れていてまともなお話も出来ないわね」
「まあな、それはな」
「だからいいわ、砕けてお話しましょう」
「そうか、それじゃあな」
「ええ、それではね」
 こう話してだ、そしてだった。
 薊達と鈴蘭の話がはじまった、鈴蘭は茶を煎れてそれを薊達に出し自分の為にも煎れた、そうしてその茶を飲みつつ言うのだった。
「妹の言葉だけれど」
「ああ、仲間にはならないってな」
「そのことだけれど」
「やっぱりあんた達あたし達とは一緒にならないのかよ」
「そのつもりよ」
 話の核心からだ、鈴蘭は答えた。
「私達は二人で戦っていくわ」
「やっぱりそう言うんだな」
「ええ、けれどね」
「けれど?」
「敵になることはないわ」
 それはないというのだ。
「そのつもりはないわ」
「そうか、戦うことはか」
「ええ、ないわ」
「味方でもなければ敵でもないか」
「少なくとも貴女達と戦う理由はないわ」
 それは全く、というのだ。鈴蘭達にしても。
「思い当たるものは何もないわ」
「別に何かを奪い合うとかいう関係じゃないしな」
「私達も自分達の力のことは気になっているわ」
「それと怪人連中のこともだよな」
「そのことは貴女達と同じよ」
「けれど群れたくないんだな」
「そうよ」
 それが理由だというのだ、薊達と一緒にならない理由は。
「私も黒蘭もね」
「仕方ねえな、そう言われると」 
 茶道の湯呑を右手に持って飲みつつだ、薊は残念そうな顔で述べた。
「あたしとしては残念だけれどな」
「貴女達には悪いけれどね」
「戦力は多い方がいいと思うんだけれどな」
「それは数のことね」
「ああ、けれどってな、黒蘭ちゃんも言ってたな」
「少ない方が動きやすいわ」
 鈴蘭もこう言うのだった。
「だから私達は二人でいいのよ」
「ううん、そこまで言うのならって言いたいけれどな」
「諦めないのね」
「八人の方がいいと思うからな」
 だからだというのだ。
「そこを何とかってな」
「考えは変わらないな」
「やれやれだな」
「けれど薊ちゃん、この娘達敵じゃないのよ」
 裕香は茶道の作法で茶を飲みつつ薊に顔を向けて言った。見れば鈴蘭も茶道の飲み方で茶を飲んでいる。
「だからね」
「別にいいっていうのかよ」
「私はそう思うけれど」
「敵じゃなかったらか」
「ええ、いいんじゃないかしら」
「ううん、あたしは味方になって欲しいけれどな」
「敵じゃなかったらいいじゃない」
 またこう言う裕香だった。
「それで」
「そうなるか」
「うん、私はそう思うわ」
「グレーってことか?」
 敵でも味方でもない、薊はこの関係を色で表現した。
「つまりは」
「そうなるわね」
「また言うけれど敵対するつもりはないわ」
 鈴蘭もこう言う。
「その理由がないから」
「あたしもあんた達とやり合う理由はないしな」
「それで何かをする筈がないわ」
「戦いたいだけなら違うけれどな」
「別にそうした考えはないわね」
「ああ、別にな」 
 特にというのだ、薊にしても。 
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