| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第1部
  第5話 我、本土へ進出ス

 
前書き
だいぶ遅れました。
第1部も遂に佳境に入ります。
ってか艦娘が活躍してない……(汗

と言うわけで3話程艦娘視点の話を入れようと思い、どの艦娘が良いかアンケートを取ります。
個人的には千歳姉妹か長門、木曾や扶桑、加賀さんなんかです。
読みたい艦娘や話のネタがあったら、メッセージにお願いします。 

 
8月20日 日本帝国 帝都
京都


薄暗い部屋の中、幾つもの瞳がプロジェクターの映し出す、とある映像を見つめていた。
映し出される映像が変わる度に、驚きの声が上がる。

「これは……なんともまた……」
「信じられん……此れ程の兵器群をたった3隻の艦船で維持していると言うのか……」
「それだけでは無い……艦船のみならず人型兵器にまで光学兵器を装備させている。
この戦闘データに嘘偽りが無ければ、是等の武装は深海棲艦に対して有効な物であることは間違い無い。
艦娘達と共に運用すれば……人類の勝利も遠い未来では無い……ッ‼︎」

映像が終わり、灯りが付いて窓が開けられる。
広い和室を囲む廻廊から……京都城天守閣から臨む街並みは、人類が滅亡の危機に瀕しているとは思えない程、活気に満ちていた。

「以上が、鹿島第1024鎮守府の神宮司中将閣下を介して、先方から送られて来た映像です。
また、映像にあった人型兵器……モビルスーツ1機と、付属する武装を数点、並びに各種運用データが贈られました。
贈られた機体と兵装は、京都戦略技術研究所にて調査、検証中です」

室内がどよめく。
彼等は、自分達の主力兵器をいとも簡単に手放したのだ。

「……大盤振る舞いだな……先方は代わりに何を要求して来たのだ?」
「はっ、はい…その……日本帝国及び鹿島第1024鎮守府への長期滞在・上陸許可の更新と、〝艦娘の指揮・所有権限〟を要求して来ています」
「……それだけ……か…?」
「……はい」

室内が更にどよめいた。
てっきり無理難題を要求して来るものだと思っていたら、拍子抜けするような内容だった。

「……良いのでは?
艦娘の建造方法は各国で既に確立されていますし、彼等は帰る国も無く孤立無援の上、帰る方法が無いとの事。
どの道彼等の力は、我々人類に必要です。
許可しても問題無いかと……」
「然し、完全に信用し切るのも問題では……」
「……では〝殿下〟、御采配を………」

〝殿下〟と呼ばれた、広い和室の上座に座る〝少女〟に、その場に居る人々……日本帝国軍、陸海空軍の将官達の視線が集まる。

「……彼等の要求を飲みましょう。
但し、監視の者を派遣し、彼等の敵意の有無を確認させます。
……〝柏木少尉〟」
「は、はいッ‼︎」
「貴女に監視の役目を与えます。
彼等が我々人類にとって救済をもたらす者達たり得るか……その目で確かめて来るのです。
……良いですね?」
「はッ‼︎ 帝国海軍少尉、〝柏木晴子〟、帝国の繁栄と〝煌武院悠陽〟殿下の名に掛けて、必ずや…監視の任、遂げてご覧に入れますッ‼︎」


◉◉◉


8月21日 鹿島
第1024鎮守府

相変わらず熱帯雨林の如く蒸し暑い日々の続く鎮守府。
俺の率いるエインヘリアル艦隊では、ある問題が浮上して居た。

「……ですから、弾薬やMSのパーツの類はユグドラシルで自給自足出来ます。
が、問題は燃料であるヘリウム3が確保出来ないと言うこと、この一点に尽きます」
「ふむ、やはりそうなるか……。
重水素は海水からいくらでも採取出来るが、ヘリウム3は地球上では全く採れないからな……」
「はい、ヘリウム3の供給は月と木星船団に殆ど依存している状態でしたから。
仮に月まで行ったとしても、月面プラントの建造には長い時間が掛かりますし……」

鎮守府執務棟の一室を借りて行われている会議は、暗礁に乗り上げていた。
その原因と言うのが、MSや艦艇の燃料となるヘリウム3である。
このヘリウム3、実は地球上では全く採取出来ないのだ。
本来であれば木星船団が木星から持ち帰った物や、月面プラントで精製した物を、〝木星開発事業団〟が連邦軍や各コロニー、企業へ提供しているのだが、この世界には木星船団も無ければ木星開発事業団も存在しない。

つまり、このままだと艦艇は疎か、MSさえ動かせなくなるのだ。

「……ヘリウム3の残量は?」
「MSに限定すれば、1ヶ月に2回大規模な戦闘をしたとして、約1年分です。
ただし、この量には各艦の反応炉用のヘリウム3の残量も含まれます。
それを考慮すると、戦力を維持出来るのは……約半年です」
「……厳しいな」

戦力低下は避けられそうにない。
元の世界に帰る事も、自分達の身を守る事も出来なくなってしまう。
提督として、艦隊司令として、皆を率いる立場に居るにも関わらず、何も出来ない事が不甲斐なく、悔しかった。

「……すまん、俺の力不足で…こんな事に……」
「気にすんなよカズハ、誰もこんな事になるなんて予想出来る訳ねぇだろ。
先日の戦闘も、お前の差配が無けりゃあ俺達はここに腰を落ち着けることも出来なかったんだぜ」
「……ラリー……しかし…」
「大佐の言う通りだ提督、気に病むことは無い」
「ラトロワ……」
「艦隊を維持する為に毎日朝方まで寝る間を惜しんで執務に明け暮れているのを、我々が気づかないとでも思ったか?」

室内の空気が明るくなった。
先頭に立って皆を率いる立場に居る者として、俺が弱気になっていては元も子もない。

「提督、日本帝国軍大本営より入電です」

会議室に入ってきたリンドヴルムのオペレーターが分厚いファイルを手にやって来た。

「先方が動いたか。
大本営はなんと?」
「此方の提示した条件を快諾する…と。
ついては、艦娘受け渡しの為、明日明朝までに日本帝国海軍横浜鎮守府へ向かわれたし…との事です」
「明日か……あれ?
確か明日って……」
「はい、明日から3日間、横浜鎮守府と在日米海軍横須賀基地合同で各国の要人を招いて大々的な観艦式が行われる予定です。
参加が確定しているのは、日本帝国海軍大本営麾下の選抜艦隊、ロシア海軍遠征艦隊、アメリカ合衆国遠征艦隊、中華統一戦線派遣艦隊、EU連合海軍遠征艦隊、ドイツ海軍遠征艦隊、アフリカ戦線派遣艦隊となっています」
「そうか……今からならギリギリ間に合うな……」

腕時計はAM10:35を指している。
PM13:00迄に出れば間に合う時間だ。

「ヘリウム3に関しては、今後は技術班と相談しながらだな。
では今回の会議は閉会する。
各自、式典参加の準備を整えてくれ、以上」
「敬礼ッ‼︎」


◉◉◉


30分後 リンドヴルム
医務室

「お〜い、ユウ…うおッ‼︎」

会議が閉会した後、俺は真っ直ぐリンドヴルムの医務室へ向かった。
医務室と言う名の魔窟へ向かう為だ。

医務室の扉が開くと同時に、大量の書類やら機械の部品やらの山がが崩れ落ち、埃が舞い上がった。

「んぁ〜、誰よ一体……怪我したんなら唾かけて自室で寝てなさい。
ったく……面倒ね……」
「……あのなぁ〝ユウコ〟…ここは医務室でお前は軍医だ。
有事の際に対応出来るように片付けておけって前も言ったよなぁ……ッ‼︎」
「カタいこと言わないでよ、やることはやってるでしょ」
「どの口で言ってんだテメェッ‼︎」

どう見てもガラクタの山から顔を出した此奴は、一応軍医のユウコ・コウヅキこと〝香月 夕呼〟特務大佐。
油で汚れた白衣や床に転がるガラクタや機械の部品を見ればわかるかもしれないが、此奴は根っからの技術屋だ。
このエインヘリアル艦隊が設立された時に医学博士号を持っていた為、軍医として配属された。
しかも医療も技術も常人の域を超えている。
名実共に化け物だ。

「で、要件は?」

夕呼がガラクタの山を蹴飛ばして紅茶のティーパックと湯呑み、電気ポットを引き摺り出した。
……使って大丈夫なのか(安全面的に)アレ…?

「お前も知ってるだろうが、俺達にはMSや艦艇を動かす為の燃料であるヘリウム3を補給する手立てがない。
技術班の見たてじゃ、持って後半年らしい。
ざっくり言わせてもらうが……なんとかならないか?」
「本当にざっくり言うわね……」
「しゃーねーだろ、他にどう言えってんだ」
「ま、私も回りくどいのは嫌いだけどね」

レモンティーの注がれた湯呑みを俺に手渡しながら、夕呼は然程悩んだ素振りも見せずに答えた。

「ヘリウム3を確保する手段は無いわ。
でもヘリウム3を大幅に節約する事は出来るわ」
「いただきます、と……節約、って言うと?」
「MSのミノフスキーイヨネスコ核反応炉が発電した電力が、一旦MSのコンデンサに蓄えられるのは知ってるわよね?」
「ああ、それで?」
「なら簡単な話、外付けのコンデンサを設けてやればいいのよ。
そのコンデンサに蓄えられた電力を消費仕切る前にMSの核反応炉を回すように設定してやれば、結構な量のヘリウム3が浮くわ。
そうねぇ……この間設計した新型コンデンサを改良して外付けの大型コンデンサにすれば、哨戒任務なんかはそのコンデンサだけで充分な電力が賄えるわ」

用は電力のキャパシティをあげてやれば良い訳か。

「確かにそれなら大幅に節約ができるな」
「そのコンデンサの充電は陸の奴らに任せちゃえば?
それくらい要求したって罰は当たらないでしょ?」
「……よし、今直ぐその設計図を技術班に回してくれッ‼︎
資材の備蓄を確認してくるッ‼︎」

思い立ったが吉日と言わんばかりに大急ぎで席を立ち、医務室を後にする。

「……相変わらずのワーカーホリックねぇ。
ラトロワとまりもも不憫ね……」

1人残された夕呼は、幼少からの親友2人を静かに憐れみ、静かに心から激励を送った。 
 

 
後書き
人物紹介

煌武院悠陽
政威大将軍
元ネタ/マブラヴシリーズ
若干18歳で日本帝国の国家元首であり帝国軍元帥を務める少女。
現天皇、天ノ宮神楽から国家運営を任されている。
天皇家を守護する五摂家の一家、煌武院家の現当主。

柏木晴子
帝国海軍少尉
元ネタ/マブラヴシリーズ
帝国海軍の新米少尉。
第1024鎮守府の海軍士官学校の最後の卒業生であり、神宮司定晴や一葉とも顔見知り。
士官学校を首席で卒業し、大本営の配属となったが、お忍びでやって来ていた煌武院悠陽に気に入られ、側近として宮仕えとなる。
煌武院悠陽の腹心。

香月夕呼
地球連邦宇宙軍特務大佐
元ネタ/マブラヴシリーズ
エインヘリアル艦隊の最終兵器とまで呼ばれる天才。
自他共に認めるマッドサイエンティストであり、一葉、まりも、ラトロワとはJr.スクールからの親友。
医学や物理学、果ては考古学や量子物理学などの博士号を持つ博士号マニアでもある。
巌谷少将を持ってしてエインヘリアル艦隊の頭脳とまて言わしめる程で、エインヘリアル艦隊に配備されているMSの新型武装の殆どが彼女の設計である。
好物はかりんとうと一葉の作る洋菓子。
艦隊員曰く、ただの餌付け。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧