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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第四章 炎
  第3話 強さ

 
前書き
夏休み終わるまでに八舞編まで終わらせたいなー

 

 
とある病院

真那「だから当麻さんは無茶しすぎなんですよ!」

あの後上条は瀕死の状態で病院に担ぎ込まれた。命には別状はなく、数日間の入院だけで済んだ。

なんという回復力だろう。

体の至るところに包帯を巻かれた上条に、背もたれのないまん丸なイスに座った真那は、病院のベッドに手をボブっと柔らかい音を響かせながら上条に説教中である。

上条「まあまあ、いいじゃねえか。無事だったんだし」

真那「関係ねーですよ!助けてくれたことには感謝しています。でも、当麻さんは他人のことばかり考えて……たまには自分のことも考えてくださいよ」

上条「ハハ……」

真那「……笑い事ではねーですよ?」

今日の真那は一段の怖いなぁ……。

上条はそんな呑気なことを考えていた。

真那は今だに怒った表情で身を乗り出して、たまにこのままキスすんじゃないかというぐらい顔が近くになる時もあった。

すると、諦めたのか、身を乗り出すのをやめて、下を向いてため息しつつ口を開いた。

真那「ま、こんな事言っても無駄だと思いやがりますけど……」

上条「お、さすが。よく分かってるな。一緒に修行しただけのことはある」

真那「褒めてねーですよ……」

真那はまたハァ……とため息をした。なんか泣きたくなる気持ちになってしまった。

真那「そういえば、鳶一一曹もこの病室に入院しているんでしたね」

上条「え?そうなのか?」

真那「ええ。鳶一一曹は当麻さんより先に起きましたけど……あと、兄様とあなたのお仲間も見舞いに来やがりましたよ?」

上条「そっか。後でお礼を言っとかないけねぇな」

と、その時、

ガラガラ!

というドアが開くような音が病室に響いた。

誰かが入ってきたようだ。でも何の言葉も無しに入ってくるヤツは決まっている。

土御門「カミやん、元気にしてるかにゃー?」

土御門元春だ。科学と魔術の多重スパイであり、自称『ウソつき』のロリコンだ。

土御門「だからカミやんは無理しすぎなんだぜよ。無理に左手を覚醒させるからこうなるんだぜい?」

真那「やっぱり土御門さんもそう思いやがりますよね!」

上条「あ〜!もう、分かったよ!無理しなきゃいいんだろ!」

2人からの責めに上条は耐えれなくなって、難しい問題と出会ってしまったように自分の髪をクシャクシャっとかいた。

土御門「マナりんも調子はどうだにゃー?」

真那「はい!土御門さんや神裂さんが手伝ってくれたおかげで、自分でかなり魔力制御できるようになりやがりました!」

真那は土御門に顔を向けて、笑顔で返事をする。その姿はまるで無邪気な妹のようだった。

土御門「じゃ、マナりんは明日も修行だにゃー。そろそろASTみたいな機械を頼ってるのもいいが、マナりんも魔術師なんだから普通の魔術を使ってもいいころだと思うにゃー」

真那「そのことも考えておきますよ」

と、話が1度終わったので一瞬の沈黙があった。それを壊したのは上条だった。

上条「土御門、インデックスはどうしてる?」

土御門「今はステイルや妹の舞夏が主に世話をしてるぜぃ」

上条「そりゃ助かるぜ」

土御門「これぐらい容易いぜよ。なんせ……カミやん達には学園都市を止めてもらわなきゃならないからな」

上条と真那は後半の声の口調とトーンが変わったことに、2人にはさっきまでの笑みはなかった。

そして、改めて気づかされた。



自分達は学園都市の運命を背負っていることに……



その後はしばらく雑談だった。

と、時間になったのか土御門が帰る準備をしていた。

土御門「じゃ、俺はこの辺で退散させてもらうとするにゃー」

上条「おう。またな、土御門」

真那「気をつけやがってくださいねー」

土御門は上条達に背を向けながら軽く手を振りながら帰っていった。

上条「真那は帰らないのか?」

真那「もう少ししたら帰るつもりでいやがりますよ。それより……1つ聞いてもいいですか?」

真那が急に真剣な表情になった。それにつられて上条も真剣な顔になる。

上条「何だ?」

真那「その右手のことなんですが……その、覚醒のことに気づいたのはいつからなんですか?」

真那の視線が明らかに上条の右手へ向いてる。よほど気になるのだろう。

上条は真那に優しい笑みを浮かべて、ゆっくり口を開いた。

上条「それはな、俺……ていうか士道達と森の中で狂三の本性を知った日の帰りだったよ」


ーーーー
ーーー
ーー



上条『お前は……ッ!?』

?『初めまして……というべきでしょうか』

そこに現れたのは長身の青髪。それは自分の元クラスメイトにそっくり……いや、瓜二つだった。その姿に、その人の名前を言ってしまった。

上条『青髪……ピアス……!?』

そして声までも……瓜二つだった。

青髪ピアスは余裕の笑みを浮かべて上条に対して、ゆっくり口を開いた。

青髪?『いえ、この姿は借りているだけですよ』

上条『……何!?』

青髪?『そのままの意味ですよ。私は学園都市7人のLevel5の内の第6位……本名は明かせませんが能力は″肉体変化(メタモルフォーゼ)″です。口調以外は全て借りの姿ですから……もちろん声も……』

第6位の言葉に上条は息を詰まらせた。

何故青髪ピアスのことを知っているのか。そもそも何故彼は自分の居場所を知っていたのか。何を目的として自分を尋ねてきたのか。

聞きたいことは山ほどあった。

だが、1つだけ確認したいこともあった。

上条『……てことは、俺の右手が触れればテメェの正体が暴けるってわけか?』

青髪?『確かにそうですね。ですが、こちらとしてもそれは本意ではありません。それに今日あなたの前に現れたのは、こんなことをするためではありませんから』

上条『何のようだ?上条さんも暇ではないんでね』

少しの沈黙があった。

そして、第6位はゆっくり口を開いて、上条に話し出す。

青髪?『……あなたの〈幻想殺し〉のことですよ』

上条『……何!?』

青髪?『あなたの〈幻想殺し〉の″核″はあなたの身体の奥深くにあるままです。その核から染み出たのが、その右手なんですよ。あなたの中に眠っているその″核″……いえ、″力″を引き出してみませんか?もちろん、そのための修行が必要ですが』

上条『な、んだと……?』

上条は自分の喉が異様に乾いていくのが分かった。

〈幻想殺し〉の力を引き出す?ふざけんな。そんなもんはどっかのアニメでやってろってんだ。

だが……それが本当なら、やってみたいと思ったのも嘘ではない。

そして、自分の身体の中での葛藤が始まった。



目の前の男を信じ、強くなれる希望を持つか、

あるいは、信じずに、今のままの未熟な自分でいるか。



しかし、上条は返事よりも先に重要なことが気になった。

上条『……何でテメェがそんなことを知っている?』

青髪?『私は伝言役ですからね。この事は自分の手で調べて辿り着いた結果ではありません』

上条『誰からの伝言だ?』

青髪?『統括理事長……と言えば分かりますか?』

上条『統括理事長……だと?』

統括理事長。

それは上条に精霊の調査を依頼した人達である。

統括理事長がなぜ自分の右手のことを知っているのだ?

と、その思考も目の前にいる男によってすぐに打ち消される。

青髪?『私が以前、一方通行さんに化けて学園都市の狙いを教えたのは……正直なところ化けるのは誰でも良かったんです。あなた達に学園都市の狙いさえ知ってもらえれば』

上条『学園都市の狙い……空間震を意図的に起こさせるって言うのは本当だったのか!?』

青髪?『ええ。そうでなければ、あんなリスクを犯してまで、あんなことしませんよ』

上条『……』

額に手をあてて、今までのことを整理した。

統括理事長は自分の右手のことを知っている。

学園都市は空間震を意図的に起こさせようとしている。

そして、



目の前の学園都市第6位はそれを止めようとしている。




青髪?『話を戻しますが、あなたの〈幻想殺し〉の力を引き出してみませんか?』

上条『……お前にメリットはあんのか?』

青髪?『もちろん。学園都市を止めるいい戦力になりますからね』

上条『なるほどな……』

上条は自分の右手を見た。

数秒間、固まっていた。何かと何かを葛藤するように。



自分は今まで何が出来た?

目の前で精霊が暴れている。ASTが戦っている。〈ラタトスク〉は平和的解決をしようとしている。その平和的解決のために士道を全力でサポートする。士道はそれに答える。ASTの邪魔が入った時は佐天や一方通行が防ぐ。




その時自分は何をしていた?

佐天や一方通行と戦っていた?違う。

士道のサポート?これも違う。

精霊を説得?これも違う。

思い返せば、自分はただ観ていただけだった。事件の始まりから、終わりを迎えるまでずっと……

所詮、自分に出来るのは精霊の力を打ち消す程度。

そう。

自分は、

何も出来ない、

ただの高校生だった……



未熟な自分が悔しい。

何も出来ない自分が悔しい。

誰も守ることのできない自分が悔しい。




そして、



彼は、何かを決意したように右手を握りしめた。



上条『……いいぜ、やってやるよ!』

その時、自分の身体が揺らいだような気がした。

青髪?『やはりあなたは面白い……いいでしょう。では明日から修行を土御門さんや神裂さんと始めたいと思いますので、場所や日程はメールでお知らせします』

上条『ご丁寧にどうも』

そう言うと、学園都市第6位は去っていった。



ーーーー
ーーー
ーー




真那「なるほど……そういう経緯があったんですか」

上条「まあな」

真那は感心したように、頷いた。

そして何かを思い出すような顔をしたかと思うと、再び口を開いた。

真那「もう1つ質問してもいいですか?」

上条「何だ?」

真那「どうして、私の身体が全身に魔力処理をされている事を知っていたんですか?私自身も知らねーことでしたのに……」

真那はこれが一番の疑問だとは言わんばかりの顔を怖ばせて聞いてくる。

その質問に上条は完結に述べた。

上条「修行1日目にさ土御門が言ってくれたんだよ。真那はこのままだと早死にするってな」

真那「土御門さんが……ですか?」

上条「あぁ。どうやって調べたのから知らねぇけど、真那が自分の魔力操作をできさせることによって、早死にしなくなる、っていうのも知っていたらいしぜ」

真那「その修行のおかげで私は早死にせずに済んだんですね。そういえば、修行の時に土御門さんが陰陽道の魔術を勧めてくるなぁと思っていたんですけど……」

上条「自分の魔力が制御できれば、普通の魔術も使えないこともないしな……まあ、陰陽道の魔術を勧めたのは土御門が使う魔術だからじゃねぇのか?」

真那「なら、当麻さんも魔術は使えるんですか?」

上条「俺は無理なんだ。〈幻想殺し〉があるからな」

真那「そうですか……」

その後、辺りが静まり返った。

そして、真那がその沈黙を破った。

真那「そろそろ帰りやがりますかね」

上条「もうそんな時間か……」

外を見ると、夕焼けで辺りが真っ赤に染まっている。

真那「しばらく修行の毎日になりそうですよ」

上条「お、頑張れよ!」

真那「はい!……そして、次こそは……ナイトメアを殺してみせます」

真那は上条に背を向けて言った。

どうせ自分を止めてくるだろう。そう真那は思っていた。

だが、上条が発した言葉は予想を裏切るものだった。

上条「………そっか」

真那「……!?」

真那は思わず上条に振り返ってしまった。その時の上条の顔はすごく印象に残っていた。

真那「………止めないんですか?」

上条「もう、言っても無駄だと思ってさ……」

この人は何を考えているんだろう……

そんな真那の思考もすぐに打ち消される。

上条「これから勝負だな」

真那「……勝負?」

上条「あぁ。狂三を俺達が先に救うか、真那達が先に殺すか……」

真那はこの時確信した。

この人とは同じ考えには恐らく、もうならないだろう……と

真那はニッと笑って上条に宣戦布告するように言った。

真那「そうですね…….できれば敵対したくはねーでしたが……」

上条「仕方がねぇよ。そうなる運命だったのかもしれないしな」

上条もフッと笑った。そして真那に言う。






上条「俺たちはいい友達(ライバル)になりそうだな」







それを聞いて、真那も上条と同じくフッと笑い返事をした。







真那「そうですね。これからもいい友達(ライバル)でいましょう」







そう言うと、真那は軽い足取りで病室を出て行った。




 
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