| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

東方変形葉

作者:月の部屋
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

日常の中の無限変幻
  東方変形葉37話「少年は別れを告げる」

 
前書き
天子「で、あなたはいつまでここにいるわけ?」
萃香「いいじゃん、天界は居心地良いんだし。そういえばお前さん、この前裕海に派手に殺されかけた後はかなり丸くなったねえ。」
天子「・・・人間に、あの鬼のような力を見せつけられるどころか体感させられたらそうもなるわよ。暇つぶしがとんでもないことになっちゃったわね。」
萃香「鬼は私だけどね。ああ、それにしても四天王仲間たちは今どうしてるかねえ。」
天子「はあ、この酔っぱらいはいつまでここにいる気なのかしら。」
萃香「聞こえてるよ。ああ、ここだけの話なんだけどね、紫がさ、こんな話をしてきたんだよ。」
天子「ああ、あの胡散臭いやつね。どんな話なの?」
萃香「確かね、裕海が―――」
 

 
朝。外の雪は当然融けてはいなかった。う~ん、今日は家でぬくもるかな?人形たちと姫雪はまだ寝ている。昨日の疲れは相当あったのだろう。
そんなことを考えていると、空間の裂け目が現れた。
「やっほー、裕海!」
「あれ?紫じゃん。こんな朝っぱらから珍しい。」
紫が現れた。珍しいときに来る紫は、必ずと言っても過言ではないほど何かを企んでいる。
「失礼ね、私がお寝坊さんの困ったちゃんだなんて思わないことね。」
「いや、誰も思ってないし。それよりもどうしたんだ?」
面倒なので、本題へと入ってもらう。
「裕海、頼みたいことがあるのよ。」
紫が、ちょっとだけ真面目な顔で言った。真面目な時の紫はかなりかっこいいとか思ってしまう俺はだめなのだろうか。
「明日、外の世界へ行ってもらうわ。」
・・・え?なぜ?
「話すと少し長くなるけどね、実は日本で、異常に妖気が高まっているところが10か所あるの。その妖気はやがて幻想郷にもよからぬ影響が及ぶわ。そこで、その妖気の主の怪異がいるはずなの。それらを滅してほしいの。私は長時間幻想郷を離れるわけにはいかない。だから外来人だった裕海しかいないの。」
なるほど。正直ここを離れたくはないが、幻想郷を守るためだ。仕方ない。
「そういうことなら大丈夫だよ。その様子だと、場所は特定できていないんだね。」
「ええ。だけどその妖気を滅するためには、顕界(現世)と幽界(黄泉)の境界を見る力がいるの。あなたは人間だから、そんな力はない。あなたの能力で見えるようにはできても、そこにあると分からないとそれを見ることはできない。」
ん?そうなのか。
「じゃあどうするんだ?きらちゃんやほたるちゃん、姫雪に見つけてもらうのか?」
紫は横に首を振った。
「いいえ、違います。あの子たちにも恐らく見えない。妖怪であっても、境界を見ることができるのはそれほどいないからね。」
「じゃあどうやって・・・」
「外の世界に、境界を見ることができる人間がいるのよ。その子に協力してもらいなさい。」
外の世界に?能力持ちか。
「あの子たちは連れて行っていいのか?」
「いいわよ。基本的には妖怪や自立人形であるあの子たちのことは口外しないほうがいいけど、その境界が見える子には話した方がいいわね。」
よかった。人形たちや姫雪を連れて行っていいということが聞けて、かなり安心した。
「それと、このノートを渡すわ。これで妖気の主の特徴、その主が現れた詳しい場所を書きなさい。」
「ああ、わかった。」
新品のノートを受け取る。
「送り出しは明日の10時。それまでに挨拶を済ませておきなさい。」
「そうだな。少し寂しいけど一旦お別れになるのか。この幻想郷とも、幻想郷に住む仲間たちとも。」



「・・・というわけなんだ。一緒に来てくれるか?」
人形たちと姫雪に説明した。
「うん!」
「ついていく!」
「私も!裕海様と行きたい!」
承諾してくれた。
「ありがとう、3人とも。」
感謝の気持ちでいっぱいになり、3人を強く抱きしめた。



まずは紅魔館。紅魔館のみんなを集めてざっと話した。
全員、少し暗い表情を浮かべた。
「ええ~っ!お兄ちゃんとしばらく会えなくなっちゃうの~っ!?」
フランが涙目で言った。
「大丈夫だよ。絶対に幻想郷に戻ってくるから。それまでいい子にして待っててね。」
「ぐすっ、ぐすっ、やくそくだよぉ~・・・」
「ああ、約束だ。」
フランを思いっきり抱きしめた。
「裕海、あなたが決めたことなら止めはしないわ。しっかりとその妖気の主を叩きのめして、絶対に無事に帰ってきなさい!命令よ!」
レミリアが、今までに見たことのないカリスマを放ちながら言った。
「わかった。絶対に帰ってくるからね。」
「裕海、無事を祈ります。」
「私も祈っていますね。」
「また帰ってきて、図書館を使いに来なさい。」
「必ず無事で帰ってきてください。」
咲夜と美鈴とパチュリーと小悪魔がきりっとした姿勢で言った。
「ありがとう。」



永遠亭。ちょうどメディスンもいた。
「・・・そう、わかったわ。少し寂しくなるけど裕海が決めたことですものね。」
「無事に帰ってきてね。」
永琳と鈴仙が言った。鈴仙は少し涙を溜めているようにも見える。
「裕海、手を出して。」
「?」
てゐに言われ、手を出す。そこにてゐのプニプニした手が置かれる。そして・・・
「・・・っ!こ、これはいったい?」
手が美しい光に包まれる。
「幸運を与えたよ。私の能力でね。必ず帰ってこれるように。」
「ありがとう、てゐ。」
「早く帰ってきて、私の相手になりなさい。絶対よ。」
輝夜が言った。少し暗い表情だが、それでも笑顔になろうと必死になっていた。
「お兄ちゃん!絶対に帰ってきてね!」
「ああ、メディスン。絶対に帰ってくるよ。」


冥界。
「そうなんですか・・・。気を付けてくださいね?」
「ああ、絶対に帰ってくるよ。」
妖夢が少し悲しげに言った。
「飴につられて怪異に食べられたらだめよ~。」
「そんなちょろい奴じゃないぞ?俺は。」
「とにかく、裕海。怪異を侮らないこと。わかったわね?」
幽々子が心配そうに言った。
「気を付けるよ。」



守矢神社。そこには偶然文とにとりもいた。
「なるほどねえ、確かに10か所異常な妖気があふれていたら幻想郷にも影響が及ぶだろうねえ。」
神奈子は冷静に言った。
「少しの間だけ寂しくなるけど、久しぶりの故郷を楽しみつつその怪異を懲らしめてきなさい。」
諏訪子も、少し残念がっているがそれを隠して笑顔で言ってくれた。
「気を付けてくださいね。絶対に無事で帰ってきてくださいね。」
「ああ、絶対だ。」
早苗は今にも泣きだしそうな顔で言った。
「あやや、あなたがいなくなる間は記事のネタが減りますが、戻ってきたらその分、外の世界でのお話を聞かせてくださいね!」
「あれ?取材なんてされてないけど?」
「いえ、こっそりと盗撮してその写真をのせていますから~。ほらっ」
「え?盗撮?あっ!石につまずいて転びそうになった時の写真じゃないか!」
不覚。気が付かなかった。
「よこせっ!文っ!」
「あやはははははは~、いやで~す!」
部屋の中での文との追いかけっこが始まった。周りは笑って盛り上がっている。
「それにしても、裕海。」
にとりが言った。
「ふう、捕まえた。で、何?」
「あやあああっ、スキマはなしですよぉ~~」
知ったことか。
「この前聞いた店、幻想外雑貨店なんだけどね、あれはすごかったよ!」
にとりはキラキラした目で言った。
「ああ、響希も客が来ないと呻き声をあげていたからな。よかったよ。」
「いまじゃもう、河童や天狗で有名な店だからね。それで裕海、しばらく会えなくなるけど頑張ってね。」
「ああ、ありがとう。」



博麗神社。都合よく魔理沙やアリスもいた。
「そう。私も幻想郷を守るために行きたいけど、博麗の巫女としてそういうわけにはいかないからね。私に代わって懲らしめて締め上げてきなさい。締め上げた後に川に沈めるとかして。」
「それじゃあ面白くないぜ?もっと、消し炭にするとかだな。」
「魔理沙、甘いわ。一瞬で消したら相手の苦痛が一瞬じゃないの。ここは人形拷問にかけてじわじわと・・・。」
「・・・誰が処刑方法について話し合えって言ったんだよ。」
アリスのが一番怖いし。
「そうだったわね。裕海、頑張ってくるのよ。」
「お前なら絶対に帰ってくるって信じてるからな!」
「私も、裕海が帰ってこられないなんて考えてないわ。しっかりその怪異をへし折ってきなさい。」
「ああ、わかったよ。ありがとう、みんな。」



人里・鈴奈庵。阿求も来ていた。
「え~っ!?しばらく帰っちゃうの!?」
「寂しくなるなあ。」
「ああ。小鈴、阿求、俺は絶対に帰ってくるよ。何があってもね。」
小鈴と阿求が涙目になったので、慰める。
「絶対だよ?」
「ああ、絶対。」



幻想外雑貨店。善知鳥響希はいつもどおり、店の奥でお茶を飲んでいた。
「・・・そうか。君は一旦帰って、その怪異をぶちのめすのか。」
「そう。そういえば、寂れていたこの店も河童や天狗のおかげで好景気になったみたいだね。」
「ああ、君が伝えてくれたおかげで収入も増えたよ。」
ずらっと並んでいた電化製品は、ほとんどが入荷待ちになっていた。
「さっさとその怪異をはたいて、早く帰って来い。」
「ああ、そのつもりだ。」



そのほかにも、ルーミアとチルノとリグルとミスティアと大妖精、無縁塚で小町と映姫、妖怪の森の人たちや、天界で天子や萃香にも言ってきた。天子と萃香はなぜか知っていたみたいだけど。人形を売らせていただいている店の方には、一時休業とだけ言った。
夜になって全員の挨拶が終わった。家では、3人が俺が頼んでおいた出かける支度をしていた。
「裕海様~!準備は整ったよ!」
「終わったよ~!」
「終わったの~・・・むにゃあ。」
3人は疲れきっていた。
「よし、明日に備えて寝ようか!」
「「「うん!」」」
そして暖かい布団の中に潜り、意識を手放した。



「裕海、準備はいい?」
少し大きなリュックを背負う。
「ああ、いいよ。」
外の世界に最も近い場所、博麗神社。幻想郷と外の世界の境界に位置するこの神社が、外の世界に行くのに楽なのだそうだ。神社には、見送りの人たちがたくさん来ていた。
「時間ね。あなたが今どこにいるかはわかるようにしてあるから、10か所回ったら迎えにいくわね。」
「頼むよ。じゃあみんな、少しの間の別れだけど、元気でね!」
元気でねーっとかいろいろな声が飛ぶ。そして俺と人形たちと姫雪は、外の世界への入口へと入って行った。



続く
 
 

 
後書き
37話です。
急展開に驚かれた人も多いのではないのでしょうか。次回より、新しい章の幕開けです。
もちろん、「そのころ幻想郷では」みたいなコーナーもありますのでご安心を。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧