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勘違いもここまでくると

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第三章

 そしてマリアンヌは日本に来た、空港に降り立った彼女は先に帰国していて迎えに来てくれた紗栄子に満面の笑顔で言った。
「じゃあ今からね」
「日本をその目で見て」
「確かめさせてもらうわ」
 期待でだ、目をきらきらと星の様に輝かせつつの言葉だった。
「是非共ね」
「あのね、本当にね」
「そんなことはないっていうのね」
「その目で見ればわかるわ」
 今もこう言う紗栄子だった。
「それじゃあいいわね」
「ええ、最初は何処に行くのかしら」
「街、歩きましょう」
 日本の街をというのだ。
「この大阪ね」
「大阪、確か日本第二の都市よね」
「この空港からすぐよ」
 大阪の新国際空港だ、紗栄子の実家のある堺のすぐそこにあるのでそれでまずは大阪に行こうというのだ。
「だからね、大阪の食べものも食べながら」
「同性愛を見るのね」
「その目で見ればわかるわよ」
 今もこう言う紗栄子だった、真実がわかっている様な目で。
「ではね」
「楽しみね」
 マリアンヌはにこにことしてだ、そのうえで。
 紗栄子に案内されて大阪見物に入った、そうしてだった。
 大阪城を見て難波を見て回った、そこでたこ焼きやお好み焼き、きつねうどん等も食べた。マリアンヌはその大阪の食べものについて紗栄子にこう言った。
「味が濃いわね」
「大阪の味はそうよ」
「日本は薄味って聞いてたけれど」
「大阪はまた別なのよ」
 この街はとだ、紗栄子はマリアンヌを串カツの店に案内してそこで串カツを一緒に食べつつ彼女に話した。
「おソースとか使ってね」
「味が濃いのね」
「そう、あとこの串カツはね」
「何かあるの?」
「絶対にね」
 紗栄子はこのことはとりわけ真剣な顔でマリアンヌに言った。庶民的な木造の店のカウンターに並んで座りながら。
「おソースの二度漬けは駄目だから」
「それは駄目なのね」
「絶対にね」
 二度漬けは御法度であることを強調するのだった。
「それは駄目よ」
「それじゃあ」
「気をつけて食べてね」
 ソースの二度漬けはとだ、やはり強調する紗栄子だった。
「そのことはね」
「わかったわ、それでもね」
「美味しいでしょ、串カツ」
「他の食べものもね、濃い味で私が思っていた日本の味とは違うけれど」
「これも日本の味よ」
「そして日本のお料理なのね」
「そうよ、こっちも楽しんでね」
 こう話しながらだ、そうしてだった。
 二人は料理も楽しんだ、マリアンヌはその中で街の中を見回していた。そして暫く見回ってから紗栄子に目を瞬かせて答えた。
「あの、カップルはいても」
「いないでしょ」
「男同士はいないわね」
「女同士もね」
「お友達っていう人達は多いけれど」
 二人か数人で集まって賑やかにしている面々は多い、しかしだった。
 カップルはいない、それでマリアンヌは言うのだった。 
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