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アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
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派遣社員になった訳だが……どうしよう
  15話

武器の調整やら新たに思い浮かんだ武器の作成やらで何だかんだと忙しくしている内に、2065年の元旦まで来てしまった。昨日、サカキからの久々の連絡によると年明け早々に極東支部から派遣されたらしく、それに伴って目立った行動は控えるように言われた。
流石に腕を神機も無しにアラガミを倒すのを見られる訳にはいかず、外でアラガミを喰うこともなくこうして部屋で一人残り少ない日本茶を飲みながら、のんびりと本を読んでいるのだ。
最近、サカキから連絡がないので不審に思っていたのだが、カナメからの連絡によるとサカキが極東支部に赴任したらしくその影響で俺に連絡が取れなかったらしい。どうやら、サカキは支部長に俺の正体は隠し通すつもりらしく、随分と色々と話し合って俺をサカキの部下という形でゴッドイーターとして登録したようだ。
そのために数日前にゴッドイーターの証である腕輪が送られ、こんな無駄にデカくて面倒なものを付けるハメになっているのだ。
着脱は可能らしいので普段は外しているのだが、今日はフェンリル側の使者が来て作戦関連の書類を持ってくるらしいので仕方無くつけざるをえない。出来ればさっさと来て、書類を受け取り次第こんな物外してしまいたいんだ。
そんな様子で愚痴を零しながら、フェンリルからの使者を待っているとチャイムが鳴った。やっと来たかと玄関を開けると、そこにいたのは隣の家の赤ん坊改め、少女が立っていた。
数年前からこの少女は俺の家に遊びに来るようになり、買い置きしておいた菓子やら気まぐれで焼いた焼き菓子を食って帰るのが習慣になっている。いや、別にそれに対してどうこう言うつもりは無いのだが、この娘はロシア語しか使わんので全く会話が出来ないのだ。
そもそも、ロシア語は発音自体がどうにも聴き取りにくく名前もイマイチわからんという状況なんだが、この娘の方は俺の名前を親から聞いたらしくたまにマキナという言葉は聞き取れる。もっとも、それ以外が聞き取れないので話の内容はさっぱりだがな!!
放っておいても一、二時間程経てば帰っていくので、適当に選んだ菓子をテーブルに置いてから、先程同様本でも読みながら時間を潰すとしよう。

それにしてもフェンリルの使者は一体何をやってこんなに遅くなっているんだ、昼頃に来ると言っていたがもう既に三時過ぎだぞ?
ん?縮めてアクセサリーのような状態のマントを引っ張られ、振り向くと娘が俺を見てクローゼットの上に置いてある物を指差す。
ああ、あれは近くのスーパーの福引きで当てた兎のぬいぐるみだな。捨てるのも惜しかったので、次に日本に帰った時にカノンかコトミにでも渡そうかと思っていた品だが………やたらとこの娘、目を輝かせてぬいぐるみを見るな。
欲しいのだろうか?
俺がクローゼットの上からぬいぐるみを取って娘に渡すと、嬉しそうに抱きしめている。
そして、ロシア語でなにか聞いてきた……多分、貰っていいかと言っているのだろうな。俺がどうぞ、というジェスチャーをすると嬉しそうに笑ってから、ぬいぐるみを大事そうに抱えて帰っていった。
いやはや、ああいった子供を見ているとしみじみと平和だなと錯覚するな。偶々この街が襲われていないだけで、世界ではあの娘と似たような年の子供やらが簡単にその命を終えているのだ。
それを今生きている人間は情報としては知っているだろうが、実際のその様相を見るのは中々にこたえる。
瓦礫に潰され、アラガミに貪られ無残に死んだ抵抗する術のない人間など、世界を周ればそれこそ飽きるほど見る羽目になるんだ。



………いつまで経っても来ないぞ?既に六時を過ぎたところだ。
途中で退屈は限界に達し料理を作っているのだが、それすらもうすぐ終わってしまう。まさかとは思うが道中でアラガミに喰われたのか?
作戦内容を知らないまま行った場合、下手をすれば原作キャラと鉢合わせしかねんぞ。既に何人かと関わっているが、あそこにいるのはレギュラーキャラばかりなので、この時期に出会うのは避けたい。

そして、あえて言わせて貰おう。

いい加減学べ、俺。

その考えはフラグ(確定)と言うのだ。

チャイムが鳴った、どうやらアラガミには喰われなかったようだ。玄関を開けようとした時、ドア越しに聞き覚えのある声が聞こえた。
「今度こそ、ここだろ」
うーん?ゲームでよく聞いた声が聞こえたぞ?
そこからの俺の判断は一瞬だった、背中のマントを即座に伸ばしてから、変化させて俺の頭をすっぽりと覆えるサイズの熊のキグルミにした。そして、それを被った状態でドアを開ける。
ここで無視は絶対に怪しまれるだろうし、どう足掻いても出なければならないとなればせめて顔を隠すくらいは足掻かせて貰おう。
………自分でも情けなく思っているが、これ以外打つ手が浮かばないのだ!!
案の定、俺の前にはゲームでよく見た人間、雨宮リンドウが俺の知る姿より若い状態で立っていた。
更に付け加えるならば、彼の後ろには神機が置いてあり、やたらと雪まみれだということだろう。
「えーっと……フェンリル技術開発部所属のマキナ少尉です…よ…ね?」
「ああ、そうだ」
そんな目で俺を見るな!!
俺だって好き好んでこんな格好してるんじゃない!!
「これがサカキ博士からの作戦の詳細な書類です」
「そうか、ありがとう」
では、さようなっ!?
「マキナ少尉……あの~申し訳ないんですが一晩泊めて貰えませんか?ここに来る途中、車をアラガミに壊されて帰れないんですよ」
………最悪だ。もう一度言おう、最悪だ。


結局彼を家に上げることになったわけだが、どうして俺が原作のキャラクターに関わらないように色々考えた結果、全てをぶち壊すような事が起きるんだ?
サカキの時も関わらないようにカナメを代理人にして表に俺が出ないようにするつもりだったのに、強引に周波数を突き止められるという巫山戯た力技で関わることになった。
今回はこいつらと関わらない為に作戦の資料を受け取ろうとしたら、本人が資料を渡しに来るという意味不明な状況だ。
こんなものどうやって防げと言うんだよ。
「はぁ~この家には一人で住んでるんですか?」
喧しい、お前は喋るな。
「………………」
………仕方ない、黙ったところで何か変わるわけでなし、普通に対応するしかないか。
「ほら、夕食、食ってないだろ?」
退屈しのぎに作った肉じゃがと味噌汁を鍋ごとテーブルに置いて、彼の分の食器を用意する。見たところ、どう見てもこいつら迷いっぱなしだったようだし、飯も食っていないだろう。
その予想は正しかったらしく、リンドウは喜びつつ、感謝の言葉と共に席に着いて食べはじめた。
冷静に考えれば、こいつが来るのは妥当と言えば妥当なのだろう。このアラガミだらけの雪原を比較的安全に行き来できる人間などゴッドイーター位だろうし、ましてや重要な作戦の詳細な情報を渡す役など、相当腕の立つゴッドイーターで無ければ務まらん。
「マキナ少尉は食べないんですか?」
「もう食った、それと敬語はやめてくてれ、呼び方もマキナでいい」
リンドウの敬語というのは、ゲーム中の彼を知っている俺としては何というか肌に合わない。それに俺が少尉などと階級付きで呼ばれるなどゾッとする。
「んじゃ、マキナ。あんた……なんでクマのキグルミなんか被ってんだ?」
「それについてはノーコメントだ」
リンドウは首を傾げながらも、俺に答える気は無いと察したらしく追求する事なく、再び目の前の食事を平らげる事に専念しはじめた。
強引に追求された場合、少々物理的手段を行使してでも話題を変えなければならないところだったな。
「お前はどう思う?」
「ん?何が?」
「この作戦に意味があると思うか?」
「そうだな……俺は意味があるとか無いとかは分からないが、俺はやれるだけのことをやって守れるだけ守るって位にしか考えてないな」
成る程、俺の知るリンドウらしいと言えばらしいな。彼の考えは生きるという方向に向いている、生きていればなんとかなるという考えだ。
こんな世界でその考えを持てるというのは凄い事だ、大抵の人間は明日に絶望しているが、彼は明日に希望をもって生きているのだから。
そんな事を考えているうちにリンドウは食事を終えたようだが……何か懐から取り出そうとしているが、一体なんだ?
「わりぃ煙草、持ってないか?」
………全面禁煙だ、と言いたいが特別だ。以前好奇心で吸ってみようと買った煙草だが、やはりと言うべきか当然と言うべきかこの体はそう言った類の有害物質を受け付けないらしく、吸ったところで何も感じずただ煙を吸って吐くだけの作業だと分かってから、パッケージのデザインの良さだけで残しておいた物をリンドウに手渡す。
「……と、トレジャラーブラック!?」
い、いきなり叫ぶな!!
「そ、それがどうしたんだ?箱のデザインが気に入ったんで買ったんだが……」
なんだその可哀想な人を見る目は?
金と黒のいいデザインじゃないか、何が問題なんだ?
「何も知らずに買ったのか……じゃ、ありがたく吸わせてもらうぞ」
「ん、ああ、吸うのはベランダで頼むぞ」
小躍りしながらリンドウは煙草を持って外に出ていった。
むー……一体あの煙草がどうしたと言うんだ?










 
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