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美しき異形達

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第十五話 白と黒の姉妹その四

「男の子ですね」
「そのままね」
「とにかく女の子らしいって言われたことはないよ」
 それも全く、という口調だった。
「ガチで男かとも言われたよ」
「そうでしょうね」 
 朱美も薊本人のその言葉に頷いて答える。
「それだと」
「ケーキとかクレープとかさ」
 そうしたスイーツの名前も挙げる薊だった。
「そういうのは作ったことないよ」
「作ろうって言われたことは」
「ないよ、一度もさ」
 伸子に即答で返した。
「お菓子は」
「そうですか」
「作ろうと思ったこともな」
 自分からも、というのだった。
「ないな」
「そうですか」
「何かさ、男の料理ばっかりだよ」
 薊は首も傾げさせた、そのうえでの言葉だった。
「あたしが作るのって」
「主食とかもよね」
「炒飯とかさ」
 朱美に応えて述べる。
「それもお肉とか大蒜とかたっぷり入れたさ」
「体力がつく風なのね」
「スパゲティとかパスタも」
 そちらもと言うのだった。
「大蒜入れてさ、もうたっぷりと」
「イタリアではそうだけれどね」
「スペイン料理でもそうするよ」
「完全にお父さんのお料理ね」
「勿論他の野菜もたっぷりと入れて唐辛子も効かせてオリーブオイルもたっぷりと」
「クッキングパパみたいね」
 朱美は最も役に立つ料理漫画の名前を出した、名作である。
「それだと」
「じゃああたし荒岩さんか」
「言われない?そうした料理だって」
「実際言われるよ、それもな」
「荒岩さんのパワフルな面に特化してるって言われるでしょ」
「言われるよ、そう」
 実際にそうだとだ、薊は朱美に答えた。
「あの人の男の料理ばっかりだってな、沖縄料理とか」
「あっ、息子さん沖縄の大学行ってますからね」
 伸子もその漫画の話に入ってきた。
「それで」
「まああたしは元々沖縄好きだからだけれどさ」
「そこからですか」
「ゴーヤチャンプルとか足てびちとかさ」
「そういうのが先輩の得意な沖縄料理ですか」
「そうなんだよ」
 実際にだというのだ。
「間違っても荒岩さんの繊細な料理は」
「作ったことはですか」
「本当にないよ」
 一度も、というのだ。
「実際にさ」
「そうですか」
「味は濃くて栄養たっぷりな」
「それが先輩のお料理ですね」
「そうだよ、たださ」
「ただ?」
「値段は考えてるよ」
 料理のコストパフォーマンスは、というのだ。。
「安く仕上げることは」
「そこも大事なのよね、お料理って」
 朱美が最初に薊の今の言葉に応えた。
「実際に」
「そうそう、早い安い美味いな」
「お料理の鉄則ね」
「それも忘れてないよ」
「そこが男の人のお料理とは違うわね」
「やっぱりお金って大事だろ」
 薊はこのことは真面目な顔で述べた。 
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