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東方変形葉

作者:月の部屋
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変化と不変の入り乱れ
  東方変形葉25話「宴(イベント)は終わらない」

イベント開始から約1時間が経とうとしていた。
俺は、今少しピンチだ。
「くっ!」
・・・なんて力だ。
「あらあら、もっと楽しませてくれないとだめじゃない。それとも、もう降参かしら?」
目の前の女性、風見幽香は今までに感じたことのない異常な力を持っていた。
「ふふ、俺の手も足も出せないなんてな。」
「あらあら」
少し可愛げに、しかし威圧感のある笑いを浮かべている。だが俺は気にならない。
「2人とも、ちゃんとしがみついてて。」
小声で人形たちに言う。2人は静かに頷いた。
「さて、そろそろあなたにも眠ってもらいましょうか。」
そういって、閉じた日傘をこちらに向けてきた。

「元祖マスタースパーク」

かなり威力のあるでかい光線が放たれた。幽香はきっともう気を失ったと思っているであろう。だが、俺は当たっていない。かすりもしていない。なぜなら・・・
「・・・いない!?」
俺は、スキマの中に入って回避したのだ。
もともと、スキマを開くには若干の予備動作とラグがある。しかし、気づかれないようにこっそりと、スキマができるための、言うならば“種”を植えることができる。相手にはスキマの存在には気が付かない。何も見えない。
俺はひそかににスキマの種を仕掛けていたのだ。・・・必要最低限のところにね。能力制限でなかなか時間がかかったけど。
「ここからが本番だよ。」
と、再び違うところのスキマから体を出す。少し驚いた表情をしている幽香は呆然と俺を眺めていた。
そして、スペルカードを唱える。

変符「スターライトレイトンネル」

スペカ効果によって、俺が仕掛けたところとはまた別のところにスキマが開く。ただしそのスキマはかなり小さい。そこから細かな光線が無数に飛んでいく。
「ふふふ、楽しませてくれるわね。」
日傘で光線を防ぎながら光線をよけていく。と、また幽香がビームを放ってきた。違う方向にある仕掛けておいたスキマに移動する。
「・・・これは厄介ね。めんどくさい、あれじゃあ倒すことができないじゃないの。」
まあ、ルール反則ぎりぎりの技だからね。・・・だけど、長期戦も正直無謀だ。俺の集中力も、体力もきっと長くはもたない。ここは撤退か。・・・いや、もう少し様子を見よう。
と、すごい勢いで殴り掛かってきた。あまりの速さに少し反応が遅れてしまったが、ぎりぎり防いだ。

遠隔「幻想人形芝居~鏡花水月~」

スキマからきらちゃんとほたるちゃんが弾幕を操作する。そしてある程度時間が経ったら2人が出てきて、2人が元気よく飛び回る。
幽香がすごい早いパンチを繰り出しているが、必死に読んで避けている。
「ちょこまかと避けるわねえ、あなた本当に人間なのかしら。・・・っ!おっと」
隙ができた。
「『威力の変化~鬼~』」
このスキルカードは、弾幕でも応用が利く。弾一発だけだが。
「いったあああっ!?なんなの、この弾は!?」
一応今のは近接攻撃としてみなされる。再びスキマに入って違うところから体をだすと、目の前に日傘があった。
「ふふ、やってくれたわね。仕返しよ。」

「元祖マスタースパーク」

急いで結界を張った。しかし、威力が強すぎるために少し攻撃を受けた。
だが、これも作戦のうち。ようやくかかってくれた、この罠に。
「なっ!?誘導されたっ!?」
そう、今発動中のスペカは誘導されては必ず当たってしまう。だが、そんな罠も光線で吹き飛ばすだろう。
だから、俺を囮に使った。わざと俺が出てくる場所がわかるように。さすがに光線を放った直後にすぐに光線を放つには無理がある。あんなとんでもない威力の光線ならなおさらのはずだ。
「・・・っ!!ふふふふふふふふ」
少しびくっとした。なにせ、不気味な笑いを浮かべて笑い出したのだから。
「こんなに楽しませてくれる人間は初めてよ!はああああっ!」
と、あっちこっちに光線を放って弾幕を消しにきた。・・・さっきより威力がかなり落ちているとはいえ、まさか光線をもう撃てるなんて思っていなかった。
「いてっ!?」
一発当たった。今の光線は近接だが、痛い。あんなに威力が落ちているはずなのにどうしてこの光線はこんなに痛いのだろう。すぐに体勢を立て直す。
「芝居は終盤だ。幻想的な人形芝居を楽しめ!」
と、スキマからきらちゃんとほたるちゃんが飛び出した。びゅんびゅん飛び回り、弾幕を放ちまくる。
大きい弾幕はどんどん散っていき、最終的に小さな弾幕となる。はかない幻のように。
「くっ!?か、体が重く・・・!」
さすがにあれだけ光線を放ったらそうなるだろう。それに、時間をかけて少し仕掛けておいた“重力の変化”の結界の効果もある。制限があってかなり疲れるからそれ以上強くするわけにもいかず、肩が重く感じる程度の重力だ。
「ふふ、人間に倒されるのは久しぶりね。」
そういって、弾幕の海に包まれた。



疲れた。さすがは幻想郷トップクラス、おかげで体のところどころが痛い。うまくいったからよかったが、失敗したらどうなっていたことやら。どうやら脱落条件を満たすと気絶するようになっているようだ。おそらく主催である紫の術だろう。
「2人とも、お疲れ様。」
「やったね!どんどん倒して行こう!」
「たおそ~う!」
人形たちの気合も高まっている。・・・あれ?あんなところに屋台が。
「ヤツメウナギあるよ~、今はタダよ~」
「・・・ミスティアさん、何をしてらっしゃるので?」
夜雀のミスティア・ローレライがウナギを焼いていた。
「いや~、私脱落しちゃったのよ。巫女にやられてね。で、どうせだからウナギを配ってこいって言われたの。」
・・・つまり、脱落したらこき使われるという解釈でいいんだな?なんか、美鈴と幽香に悪いことしたな。
まあ、ヤツメウナギは正直美味しいとは思わないが、栄養はあるので食べるかな。
「じゃあ女将さん、ウナギひとつくださいな。」
「は~い!」
すぐに用意し、焼き始めた。しばらくしていい匂いが漂い始めた。
「はい、できたわよ。・・・今はタダだけど、あとで請求書送るからね?」
まあそうだろう。う~ん、微妙な味だ。そういえばヤツメウナギって独特な姿をしていたな。



食べ終わり、屋台を後にした。人里近くの上空へ出ると、今日は満月だということに気が付いた。ああ、そういえば月のあの人たちにまた会いにいかなくちゃ。とか考えていたら、なんか目の前から紅いベール?に包まれた謎の何かが接近してきた。
「ゆ~~~~~~~うっみ~~~~~~!」
「おっと」
避ける。さすがにあれは攻撃の1種だろう。
「ちょっと、ひどいじゃない裕海。そこは私の熱烈アタックを抱きとめるとか~?」
黒い翼が目立ち、薄青い髪にピンクのふわふわのナイトキャップをかぶっている少女。そう、レミリアだった。
「攻撃という名のアタックをしてきておいてひどいも何もないだろ。」
「う~っ!う~っ!とにかく、あなたを倒すわ!」

神罰 「幼きデーモンロード」

あまり持久戦にはしたくない。なにせ相手は吸血鬼だ。
周りに光線の網のようなものが張られ、動きを制限され、その制限された範囲内で弾幕をかわす。よし、できればこれで決まるといいけど。

「七曜弾幕大結界」

魔方陣を飛ばし、どんどんレミリアを包囲していく。そして、発射!
「えっちょっ!?あぶなあっ!?」
よし、ひるんでいる。もう一発。

神変「千変万化の花畑」

美しく、不思議な花畑がレミリアを襲う。
「ぬあっ!?きゃああああっ!?」
・・・可愛い。じゃなくって、かわされた。あの誘導性能抜群の弾幕を軽々と。さすが吸血鬼、身体能力は知れたものではない。
「むう~、こっちだって容赦しないんだから!」

獄符「千本の針の山」

・・・怖い。ナイフとか細かい弾とかがとんでもなく飛んでくる。なんて密度だ。だけど、これは利用できる。
「『綺羅星人形の舞』いけ!きらちゃん!」
「いっくよ~!」
弾幕を無視してレミリアの方へハートを描きながら進んでいく。
「きゃあっいたあっ!?」
なんか、やられるたびにさっきからかわいい声が連発されているんだけど。気のせいかな?
あまり早く決着がつかなさそうだ。よし、こんなこともあろうかとこっそりスキマの種を仕掛けておいた。

天変「局地的大彗星豪雨」

そう唱えた直後に、スキマでレミリアの後ろに仕掛けておいたスキマを開き、そこからゼロ距離発射する。これはルール違反じゃないから良し。
「えっ!?後ろ!?いたああああああああああああああっ!?」
うん、すごい勢いで墜落して行った。大丈夫かな?あ、メイド妖精が来た。・・・ハンモックを持って。
「あら、レミィが倒されたのね。」
声がした。その方向を見ると、紫の髪に、三日月の形をした飾りがついたナイトキャップをかぶっている少女、パチュリー・ノーレッジがいた。
「図書館から出てきたパチュリーを見るのもこの機会だけかもしれないな。」
「そうね、私は病弱で喘息もちなんだけど、あの薬師が一時的に喘息を抑える薬をくれたのよ。だから少なくとも夜明けまではもつわね。」
なるほど、そういえば持病持ちだったな。・・・持病持ちって違和感ある言葉だな。まあそれはいいとして。
「だから、この楽な時にこそ魔法を試してみたいのよ。さあ、行くわよ!」

水符 「ベリーインレイク」

光線が俺の周りを飛んで行って動きを制限されたため、その範囲内で弾幕をよけなければならない。制限から解放されたと思ったら、大きめの弾幕のが飛んできた。
「ああ、なんか地味に鬱陶しいスペカだな。」
たしかパチュリーの能力は、火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力だったかな。なんで七曜でくくらないのだろう。なんとか避けているが、実は結構体が痛くて動きづらい。仕方ない。

天変「エクリッスィソラーレ」

白い弾幕がメインで、補助として赤い弾幕が飛んでいく。それらがパチュリーの弾幕を撃ち消し、攻撃のチャンスを与えた。

「『サニー・イリュージョン』」
火の弾が飛んで行って、ある程度の距離で爆発してはじける。見た目によらず威力は言うほど強くない。
「むきゅっ!?ま、まだまだいけるわ!」

金&水符 「マーキュリポイズン」

2つの色の弾幕が交差弾となって襲い掛かる。うわあ、すごい面倒。
ここは一気に勝負を終わらせなくては。

遊戯「スキマ遊び」

この時だけ、能力が制限されていない状態でスキマを自由自在に開くことができる。
一気に展開した無数のスキマからは弾幕、光線が飛び交う。
「むっきゅうううううう!?」
ああ、何発か被弾したみたいだ。その証拠にむきゅ虫があの通り鳴いている。いや、むきゅ虫なんて単語今初めて使ったけど。
「むっきゅ!これでも喰らいなさい!」

日符 「ロイヤルフレア」

火・・・日?日の弾幕に囲まれた。実はさっき唱えたスペカだけど、スキマを無数に開いて弾幕や光線を撃つのに結構体力いるからもうあのスペカは終わった。囲う弾幕なら、こっちが本物だ!

「七曜弾幕大結界」

7色の弾幕で相手を囲む。その時、少量だけ開いたスキマから出る弾幕の檻がパチュリーの動きを若干制限する。そして、発射!日の弾幕を消しながらパチュリーに攻撃する。7色のうち2色はホーミング弾なのでかなり避けづらい。
「むきゅ!?しまっ――――」
七つ色の海へとパチュリーは消えていった。



「運びま~す」
今度は毛糸で編んだと思われる絨毯みたいなもので運んで行った。
「ああ、さすがに疲れた。2人とも、どこかに休めるとこある?」
人形たちに聞いてみた。
「あの家の陰とかいいんじゃないかな~。」
「かな~」
2人がさしたのは、一見普通の家だった。
「よし、そうしようか。」
家の陰に入り、寝転んだ。と、そのとき声をかけられた。
「あら、裕海じゃない。・・・と、その人形は?」
金髪のアリスだった。



続く
 
 

 
後書き
25話です。前書きは今回はありません。
まだまだ続きます。さあ、アリスと出会った裕海。
次回、どうなる!?
前回のタイトルの意味は、焦らなくても月は昇ってくるということです。
ひねりタイトルコーナーはこれで終わりにします。では! 
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