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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第三章 悪夢
  第11話 次なる試練

次の日の朝、士道と上条が教室に入ると、既に狂三が席に着いてるのが目に入った。

上条「(なんか……違和感あるよな……)」

昨日死んだ人間が平然としているのだ。無理はないだろう。

狂三「あら、士道さん。ごきげんよう。当麻さんも」

士道「……おう、おはよう」

上条「あぁ。おはよう」

だが予想はしていたのでそこまで驚いてはいない。

狂三「士道さん、昨日は楽しかったですわね。また誘ってくださいまし」

士道「そう……か。楽しかった、か」

狂三「ええ、とても」

狂三がにこりと微笑む。その顔を崩さずに言葉を続けた。

狂三「でも、少し驚きましたわ」

士道「?……何にだ?」

狂三「てっきり士道さんは、学校をお休みになると思っておりましたので」

士道「そいつは悪かったな……来ない方がよかったか?」

狂三「いえ、士道さんがちゃんと登校してきてくれて、とても嬉しいですわ」

上条は今の会話に目を細めた。その表情に気付いた狂三が上条の方を見て、また笑みを崩さずに言った。

狂三「ふふ……でも当麻さん、あなたは来ると思ってましたわよ」

上条「……どうしてそう思ったんだ?」

狂三「あなたは……私と同じ『匂い』がしたものですから」

上条は表情を変えずに狂三の方を見ていた。すると不意に、士道が口を開いた。

士道「……狂三」

狂三「?なんですの?」

士道「俺は……お前を救うことに決めた」

狂三「……救う?」

士道が言った瞬間、狂三の表情から温度が失われるのがわかった。

狂三「……おかしなことを仰いますのね、士道さん」

士道「もういいだろう、そういうのは。もうお前に人を殺させない。もう真那に、お前を殺させない。それが俺が昨日出した結論だ」

狂三「価値観を押し付けないでいただけます?わたくし、甘っちょろい理想論は嫌いですの」

士道「そうかい。それは残念だ。……でも、悪いがもう決めた。お前は俺が救う。何をしようと絶対に」

狂三「……まさか当麻さんも士道さんと同じ意見ですの?」

上条「あぁ。俺もビックリしてるよ。士道と全く同じ意見のことにな」

そう

これが

彼らが

戦いの果てに

見つけ出した

一筋の道だった

狂三を救う……ただそれだけだ。

狂三は2人の言葉を聞いて眉をひそめた。

何かを考え込むような仕草をした後、士道と上条に言ってきた。

狂三「なら、あなた達が言ってることが本当かどうか確かめて差し上げますわ」

士道「あ……?」

上条「……何?」

狂三「今日の放課後、屋上に来てくださいまし」

狂三はそう告げると、士道達から視線を外した。







時刻は9時10分……一時限目の授業が始まっているだろう時間に、来禅高校の屋上には狂三がいた。

狂三「もう少し、士道さんとの学校生活を楽しんでもよかったのですけれど……」

そして、狂三の通った場所が薄暗くなっていった。

そう……まるで、狂三の軌跡から、影が消えないように。

狂三「そろそろ、潮時ですわね」








上条「ん……?」

一時限の授業中、何か違和感を覚えた。

しかし、窓の外を見るが特に何もない。

上条「(気のせいか……)」

上条はそう結論付けて、授業を聞いていた。








放課後、

令音『……大丈夫かね、シン』

右耳に装着したインカムからやたら眠たげな声聞こえてきた。

琴里はある事情があっていないらしい。

士道「はい、意外と……落ち着いています」

令音『上条くんも大丈夫かね?』

上条「……ええ。大丈夫ですよ」

令音『それは何よりだ。しかし、十分気をつけたまえ』

士道・上条「「……はい!」」

2人の顔がキュッと引き締まる。席を外している琴里も気になるが、今は狂三に集中するに限るだろう。

その刹那、

士道「……なッ!?」

上条「な、何だ!?」

異変が起こった。具体的に何が起こったのかは分からない。全身を途方もない倦怠感と拒絶感が襲ったのである。

士道「こ、れ、は……」

上条「狂三の野郎……ッ!」

士道はその場に膝をつきそうになるのをなんとか堪え、姿勢を保った。

士道「お、おい、大丈夫か……!?」

慌ててすぐに倒れこんだ女子生徒の肩を揺するが、気を失っているのか、反応はなかった。

令音『……高校を中心とした一帯に、強力な霊波反応が確認された。これは上条くんの言うとうり狂三の仕業だ。広域結界……範囲内にいる人間を衰弱させる類いのもののようだ』

上条「でも、何でそんなことを……」

令音『……それは、本人に訊いた方が早いだろう』

確かに令音の言う通りだ。士道はその場に立ち上がり、なんともない様な表情の上条を見た。

士道「あれ?……そういえば、俺はなんで……」

令音『君は十香や四糸乃の霊力をその身に封印している。自覚はないかもしれんが、君の身体は精霊の加護を受けているに等しい状態なんだ』

士道「霊力……」

上条「てことは……十香は……」

教室には十香がいるはずだ。先ほど出てきたばかりの教室の扉を開いた。

教室には10名ほどの生徒が残っていたが、それら全てが床に、もしくは机にもたれかかるようにして気を失っていた。

十香「おお、シドー……当麻も一緒なのか……」

そんな中、十香は軽く頭を押さえながらも士道に声を返してきた。やはり精霊。人間よりも霊力に耐性はあるようだ。

士道「大丈夫か、十香!」

十香「うむ……だが、どうも身体が重い……どうしたのだ、これは……」

上条「十香はここで休んでろ。すぐに何とかしてやる」

十香「当麻……?シドー……?」

士道「大丈夫だ。俺達が……助ける」

士道は十香の頭を優しく撫でるようにしてから、狂三のいる屋上に向かう。






屋上へと続く扉の前までたどり着いた。

鍵は……銃で撃ったかのように、ボロボロになっていて、鍵としての役割を成していなかった。

恐らく狂三の仕業だろう。士道は深呼吸して、ノブを握り、扉を開けた。

士道「くっ……」

上条「……!?」

2人は顔をしかめた。屋上に出ても消えない虚脱感。いや、屋上に出てさらに増したような気さえする。

左右に目をやると、背の高いフェンスに囲まれた殺風景な空間。

その、中心で。

狂三「ようこそ。お待ちしておりましたわ、士道さん。当麻さん」

狂三がフリルと飾られた霊装の裾をくっと摘み上げ、微かに足を縮めて見せた。

 
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