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万華鏡

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第七十九話 マラソン大会その八

「長生きして欲しいのにな。こうした人は」
「村山さんもね」
「ああ、本当にな」
 実に、というのだ。美優も。
「まだ六十じゃあな」
「そうよね、それにしても阪神の選手って」
 里香も自分が手にしている本に書かれている内容を読みつつ話す。
「一杯いるわね」
「戦前からあるチームだからね」
 琴乃もこう言う。
「戦前の選手だっていて」
「景浦さんとかね」
「景浦っていうと」
 その名前でだ、琴乃は気付いた。
「あぶさんの主人公の」
「多分この人からよ」
 名前が取られたとだ、里香も言う。
「物干し竿バットは藤村さんで」
「そのバットもなの」
「ただ、全体のモデルは違う人みたいだけれど」
「誰なの?モデルの人は」
「元近鉄の長渕洋三さんって人らしいわ」
 チームは違っていた、近鉄だった。
「阪神の人じゃないけれど」
「その人があぶさんのモデルだったの」
「そうみたいよ」
「そうだったのね」
「まあ名前とバットはね」
 その二つは、というのだ。
「多分その人達からよ」
「阪神の人達ね」
「作者さんが阪神好きらしいから」
 阪神ファンだったというのだ、そのあぶさんの作者である水島新司はだ。
「男ドアホウ甲子園でも主人阪神に入って名前が藤村だから」
「あっ、そのままね」
 そのミスタータイガースの藤村富美男である。背番号十は永久欠番となっている。千両役者とも呼ばれていた。
「藤村さん」
「そうだったの、他にも阪神をやたらご自身の漫画に出しておられるから」
「そうなの」
「野球狂の詩でもね」
 この漫画は主人公達のチームは東京メッツという、しかしその相手の半分は何故か阪神タイガースだった。
「阪神が凄く出て来てたから」
「阪神なのね、あの人」
「鷹ファンらしいけれど」
 それでもというのだ。
「阪神も好きみたいなの」
「だからなのね」
「阪神を結構出すのよ」
「巨人は出さないのね」
「出さない訳じゃないけれど」
 それでも、というのだ。
「阪神よりはね」
「ずっと少ないのね」
「そう、出番はね」
「そうだったの」
「あの人は出してなかったと思うわ」
 その北の将軍様の様な人物はだ。
「純粋に野球漫画よ」
「あぶさんにしても」
「あの漫画もホークスのオーナーは出るけれどね」
 それでもだ、そのチームの関係者は出ないというのだ。
「あの魔女みたいな顔の人は出ないわ」
「魔女ねえ、確かにね」
 里香のその言葉を聞いてだ、琴乃も頷いた。言われてみればとだ。
「あの人魔女みたいな顔ね」
「人間って生き方が出るけれど」
「生き方が魔女みたいだから」
 勿論悪い魔女である、童話に出て来る様な。
「ああいう人相になったのね」
「人相って生き方が出るっていうから」
 里香は琴乃にこう話す。
「あの人そういう生き方してるのだと思うわ」
「生き方ねえ」
「リンカーンが言ってたけれど」
 アメリカ合衆国の大統領だった人物だ。奴隷解放を宣言し南北戦争に勝利した大統領としてアメリカだけでなく世界でも有名だ。
「人間四十になったら生き方が顔に出て来るっていうから」
「四十になったら」
「そう、その年齢位になったらね」
「ううん、そうなのね」
「私もそうしたところはわからないけれど」
 里香もまだ若い、それで言うのだった。
「そう言われてるからね」
「四十ねえ」
「そう、四十になったらっていうわ。前にもこうしたことお話したと思うけれど」
「そうね、確かに」
 そう言われるとだ、琴乃も思い出した。五人で確かにこうしたことも以前話した。
「したわね」
「人相のお話ね」
「ヤクザ屋さんの顔とかね」
「生き方が出てね」
 ヤクザ者の生き方なぞ言うまでもない、ヤクザという言葉にそれが如実に出ている。 
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