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万華鏡

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第七十八話 バレンタインデーその九

「私も充実してるし」
「そうそう、皆それそれね」
「楽しい青春過ごしてるわよね」
「気軽に」
「しかも楽しく」
「これでもいいわよね」
 しみじみとさえして述べた琴乃だった。
「こうした青春でも」
「いいでしょ、別に」
「彼氏いなくても」
「恋愛だけが青春じゃないとも言うし」
「こういうのもありでしょ」
 クラスメイト達もこう琴乃に返す。
「要はどれだけ楽しい青春を過ごせるか」
「それが大事でしょ」
「別に恋愛をしなくても」
「楽しくて充実してたらね」
「いい青春でしょ」
「それで」
 こう話すのだった、そしてだった。
 そうした話をしてだった、琴乃達は授業がはじまる頃になってそれぞれの席に就いた。そうしてそのうえでだった。
 琴乃は授業が終わってだ、部活の時に副部長に話した。その青春のことを。
 するとだ、副部長はこう彼女に言った。
「それもありでしょ」
「恋愛抜きでもいいんですね」
「ええ、貴女が言った通りよ」
 そのまま、というのだ。
「それでもいいと思うわ」
「そうですか」
「というかね」
「というか?」
「恋愛だけにこだわるとね」
「駄目ですか」
「まあ私もこれでもね」
 ここで副部長は自分のことを話した。
「彼氏いるのよ」
「あっ、そうなんですか」
「実はね」
 頬を赤らめさせての言葉だった。
「一緒にお弁当を食べたりとか」
「そうだったんですか」
「私が作った」
「いや、副部長さんが」
「意外かしら」
「世話女房だったんですね」
「ちょ、ちょっとね」
 部長とは対象的にクールな副部長だが今は違っていた。頬を赤くさせて琴乃から視線を外して答えたのである。
「彼がどうしてもっていうから」
「だからですか」
「不本意だけれど」
 口ではこう言う。
「毎日作ってね」
「そうしてですか」
「毎日一緒に食べてるけれど」
「それで恋愛のことも」
「少しはお話出来るわ」
 琴乃にも、というのだ。
「確かにいいものだけれど」
「それだけじゃないんですね」
「ええ、そうよ」
 こう話すのだった。
「部活もお友達もね」
「そうしたこともですね」
「青春よ」
「そうなんですね」
「だから。恋愛だけじゃないから」
「別にそれにこだわらなくても」
「いいのよ」
 こう琴乃に話す、今は表情が戻っている。頬のその赤ィものが消えている。
「けれど恋愛をしたいのなら」
「してもいいんですね」
「悪事以外なら楽しめばいいのよ」 
 副部長はこうも言った。
「青春はね」
「人に迷惑をかけたりしないと」
「何をしてもいいのよ」
 悪事以外は、というのである。 
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