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万華鏡

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第七十八話 バレンタインデーその六

「そうでしょ」
「だからアニメもか」
「そう、長いのよ」
「というかそれだけアニメも人気があるんだな」
「人気がないと四期も続かないわよ」
 幾ら長編でもだ、人気がなければ続かないことは当然のことだ。
「とてもね」
「そうだよな、アニメも面白いよな」
「面白いわよ、原作と違う部分も多いけれどね」
「じゃあそっちも観てな」
「アニメの方の終わりはいいから」
「じゃあアニメの終わり観るよ」
 つまり最後まで観るというのだ。
「そうするからな」
「そうしたらいいわ、じゃあ後は待つだけね」
 琴乃はこう言って自分の部屋に入った、その前にチョコレートを全て冷蔵庫の中に入れることは忘れなかった。そうしてだった。
 次の日トッピングまでしたチョコレートを学校に持って行った、その時に母親に対してこう言ったのだった。
「ねえ、チョコ二つ置くけれど」
「二つ共よね」
「そう、お父さんとあいつのだから」
 弟の、というのだ。
「置いておいてね」
「どっちがどっちなの?」
「トッピングしてある方がお父さんのだから」
 あとの一個は言うまでもなかった。
「そうだから」
「わかったわ、じゃあ置いておくわね」
「二人にはそれぞれお家に帰ったらだから」
「お母さんも二人にチョコ買いに行くわね」
「あれっ、お母さんはまだなの」
「今日のお買いもので買うつもりだったのよ」
 バレンタイン当日にだ、そうするというのだ。
「最初からね」
「チョコレート残ってるの?」
「残ってるわよ、それもかなりね」
 母はにこりと笑って娘に話した。
「というかこの日こそね」
「チョコレートがあるのね」
「当たり前じゃない、当日こそ一番売れるでしょ」
「あっ、クリスマスの時のケーキと同じね」
「全く同じ理屈よ」
 資本主義の論理である、売れるその日に売るのだ。
「だからなのよ」
「チョコレートもなの」
「そう、今日お店に行けば絶対にあるから」
「だから今日買うのね」
「お父さんには大好きなボンボンをあげて」
 母はうきうきとした顔で琴乃に話した。
「あの娘にもね」
「あいつには何をあげるの?」
「可愛くて大きいのがいいかしら」
「何か凄い親馬鹿ね」
「そうかしら」
「お父さんのことについても」
「自然とそうなるのよ」
 完全に女の顔で言う母親だった。
「琴乃ちゃんもそれがわかるわよ」
「結婚したら?」
「結婚して男の子も出来たらね」
 夫だけでなく、というのだ。
「そのことがよくわかるわ」
「そういうものかしら」
「その時になればわかるから」
「ううん、そうなの」
「そう、それも人生の勉強よ」
「結婚自体がなのね」
「結婚は人生最大の勉強の場所だから」
 こうも言う母だった。 
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