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道を外した陰陽師

作者:biwanosin
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第二十四話

 そこそこに余裕を持って、私と殺女は自分たちの教室にたどり着いた。
 それにしても、殺女はすごいな・・・二十クラスもある中から私と殺女、一輝の名前を三秒で見つけてしまった。
 いくら三人とも同じクラスだったとはいえ、普通にできることではない。

「・・・それで、殺女はいつまでその変装をしてるつもりなんだ?」
「おっと、忘れてた。ありがと、ユッキー!」

 そう言って殺女が変装グッズと認識阻害(一輝と殺女の二人がかりで開発したもの。無駄にスペックが高い)を解くと・・・教室の視線が全て、殺女に向けられた。
 私の苗字は便宜上寺西となっているので(名乗ったことはないが)、私の二つ前の席に視線が集まったことになる。

「・・・ねえユッキー。とらないほうがよかったんじゃない?」
「・・・ごめん。判断間違えた」

 少し聞き耳を立ててみると、「やっぱり席組みの・・・」「あの噂は本当だったんだ・・・」「実物も美人だな・・・」という殺女に対しての話が多く聞こえた。が、一部には「ところで、土御門さんと一緒に来た子は誰・・・?」「土御門さんのパートナーって確か男じゃ・・・」「席組みだし、個人的に雇われてるんじゃ・・・」「好みドストライク」「お前、小さい子が好きだもんな。胸も背も」というような会話も聞こえてきた。最後二人、今すぐ死んでしまえ。

「はぁ・・・これは、一輝が来たらどうなる事やら・・・」
「確かに、カズ君は私たち以上に大変なことになるかもね」

 卵で学生のくせに学校在留陰陽師であり、さらに表向きは第十五位で殺女のパートナー。まず間違いなく大変なことになる。

「はぁ・・・しばらく、このまんまかなぁ・・・」
「そう、だろうな。あ、私ちょっと用事が、」
「逃がさないよ、ユッキー?」

 教室を抜け出そうとしたら、殺女に腕を掴まれた。やめろ、私を巻き込むな。

「ほら、どうせカズ君が来たらユッキーもこんな感じになるんだから。今のうちから慣れといた方がいいよ?」
「忍びの一族を表舞台にならそうとするな。殺女はいいだろう、席組みで人に見られるのは慣れてるんだから」
「それでも、ほら。クラスで一人この状況に放置されるのは辛い物があるよ?」

 それは分かるが、そこに巻き込まれた私の方が面倒だからな?席組みの知り合いとか、まず間違いなく。

「あの・・・やっぱり、席組みの土御門さんなの?」
「え・・・?あ、うん。そうだよ」
「やっぱりそうなんだ!私、ファンなんです!」

 握手を求められて、いつもの調子に戻って握手をする殺女。

「ありがとね~。あ、そうだ。私のことは殺女でいいよ?」
「え、でも・・・」
「いいのいいの。少なくとも、一年間は同じクラスなんだし!」

 そして、持ち前の性格でその女子との距離を詰める殺女。さらに、予想以上に話しかけやすいと思ったのか男女問わずどんどん人が集まってきた。
 さて、今度こそこの場を・・・

「それで、そっちの人・・・寺西さんとはどんな関係なの?」

 立ち去れなかった。
 はぁ・・・やっぱり、この二人につきあってるとその気がなくても目立つ。

「あー・・・寺西は便宜上の苗字だから、雪姫でいい」
「そうなんだ・・・じゃあ、雪姫ちゃん」

 なんだか呼ばれ慣れないが、寺西で呼ばれるよりはいいか。
 殺女の時と違って、こっちの事情も考慮して名前で呼んでくれた。

「それで、殺女ちゃんとはどんな?」
「説明が面倒だな・・・細かいところを省くと、殺女のパートナーの秘書みたいなことをしている」
「なんだか・・・大変そうだね」
「大変だが、まあ前にいたところに比べればはるかに待遇はいいな」
「へぇ・・・それって、ここの人?」

 そう言いながら、今自分が腰かけている机をさしてくる。
 この学校、男女混合の名簿順になるので殺女、一輝、私の順に並ぶのだ。

「まあ、そこの人だが・・・」
「へぇ・・・じゃあ、その人が殺女さんのパートナーなのか。どんな人なんだ?」

 男子生徒の問いかけに、私と殺女は視線を合わせて会話をする。
 事実は、説明できないものが多い。とはいえ、テキトーに言うと後々一輝が困る。言えるのは事実だけ。
 ・・・・・・・・・

「第一印象は、まともそうな人だな」
「あー・・・確かに、今のカズ君はそういう印象を受けるよね~」
「へぇ、そんな人なんだ・・・」
「え、違うよ?」

 殺女が首をかしげながらそう言うと、一瞬全員が黙った。

「え、違うの?」
「まあ、違うな・・・あくまでも第一印象と言うか、少し話をするくらいまでなら、その印象を抱ける」
「でも、ある程度親しいところに来るとそうじゃなくなるよね~」
「こう・・・説明が難しいな・・・」

 私の場合、普通の出会い方じゃなかったから少し違っただろうけど。
 殺女もそんなことは言ってたな・・・

「まあでも、本人に自覚はないがいい人だ。基本的には」
「そうだよね~。一切自覚はないけど、いい人だよ。親しい人のためなら何でもできる感じ」

 それこそ、犯罪でもためらいなく。・・・ああなった一輝は、少し怖いがな。

「で、最後に一番重要なのは・・・」
「・・・ああ、あれか・・・」
「何々?」

 興味がわいてきたのか、もはや教室にいる全員が集まっていた。どうりで暑いわけだ・・・
 そして、私と殺女は異口同音に、

「「問題児」」

 一輝についての一番の情報を、全員に伝えた。
 まあ、ちゃんと付き合いがないと分からないし、危険な意味合いでの問題児じゃないことは伝えておいたが。
 
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