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美しき異形達

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第十二話 光の符号その七

「そうしてみたらどうかしら」
「ああ、今ここで」
「そう、どうかしら」
「それじゃあしてみる?」
 向日葵も話に乗って薊に笑顔で言った。
「これから」
「してみるか、じゃあ」
「お互いの武器も出してね」
「それじゃあな」
 こうしてだった、薊と向日葵は立ち上がってだ。寺の庭に出た。他の面々もその手合わせを観に庭に出た。
 寺の庭は広くよく手入れされている、小石と池、それに芝生と木々が絶妙の配置で飾られている。観光地としても通用しそうな庭だ。
 その庭の中でだ、薊と向日葵はまずは向かい合ってだった。
 それぞれの流派の礼をした、それから。
 薊はその手に七節棍、向日葵は弓を出した。そうしてだった。
 まずは向日葵がだ、素早くかつ的確な動きでだった。
 弓に矢をつがえる、しかしその矢は。
 光だ、彼女の力である橙色の光の矢を出してだった。
 それを薊に向かって放つ、しかも。
「!?一本じゃないわ」
「そうね」
 菖蒲は裕香の言葉に応えた、向日葵のその動きを見ながら。
「矢は二本、いえ三本あるわ」
「弓道ってああいうことが出来るの?」
「出来ることは出来るわ」
 菖蒲はそれは可能だと答えた。
「けれどかなり難しいのよ」
「そうなの」
「それが出来るということは」
「向日葵ちゃんも」
「ええ、かなりの腕よ」
 弓の腕がというのだ。
「そうそう出来ることではないわ」
「そうなのね」
「弓は難しいのよ」
 菖蒲は裕香達にこのことも話した。
「ただつがえて引くだけじゃないのよ」
「狙いを定めないとね」
「そしてね、力も必要だから」
「弓を引く力ね」
「そうしたものも必要だから」
 それでだというのだ。
「相当なものが必要なの」
「技と力も」
「どうやら向日葵さんは」
「かなりの腕の持ち主なのね」
「そうみたいね」
 こう話すのだった、そして実際にだった。
 三本同時に放たれた向日葵の光の矢はそれぞれ見事な速さと威力で正確に薊を狙ってきた、その矢達に対して。
 薊は左に跳んでかわした、だがそこに。
 向日葵は弓矢をさらに放った、今度は二本。その大きな目で薊の動きを細かいところまで見つつ放った。
 薊は今度は右にかわす、向日葵は真剣な目だが口元は微笑まさせてそのうえでその薊に対して言った。
「凄いフットワークね」
「いやいや、いい矢だね」
「それは拳法の動きよね」
「ああ、そうだよ」
「そうね、私から見てもね」
 それはというのだ。
「いい動きだと思うわ」
「有り難うな、褒めてくれて」
「それに上には跳ばないのね」
「跳ぶ場合もあるけれどな」 
「今はなのね」
「上に跳んだら途中で動きをかえにくいからさ」
 だからだというのだ。
「ここぞっていう時以外は跳ばないんだよ」
「そういうことね」
「さて、じゃあな」
 薊は徐々に前に出ていた、そうしてだった。
 今度は彼女からだった、その七節棍を右手一本で持ち思いきり前に突き出した。そうしてその伸びた棒で向日葵を突いた。
 棒は唸り声をあげつつ向日葵に襲いかかる、炎を帯びて。それはさながら紅蓮に身体を燃え上がらせる蛇であった。 
 だがその蛇をだ、向日葵は。
 身体を左に捻ってかわす、そしてかわしながら。
 また矢を放った、薊は攻撃をすぐに引っ込めてその矢をかがんでかわし。
 そこにまた来た矢を右に転がってかわした、そうして起き上がってから言った。
「いやいや、接近戦も出来るんじゃね?」
「そうかしら」
「ああ、今のはよかったよ」
 今の動きは、というのだ。 
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