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オズのモジャボロ

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第九幕その五

「あそこは」
「ううん、どういう学園か」
「謎が多いんですね」
「そうした場所だね」
 それが八条学園だというのです。
「あそこは」
「だからオズの国の人達も出入り出来るんですね」
「本来は出来ない筈なのに」
「僕達は本来君達の世界には行けないよ」
 これは絶対のことです、オズの国と恵梨香達の世界は本来は絶対にお互いに行き来出来ません。見ることも出来ません。
 ですが、です。八条学園からだけはなのです。
「行き来出来るんだよね、あそこだけは」
「謎の多い場所なのね、考えてみたら」
「そうよね」
 恵梨香とナターシャがここでお話しました、女の子達で。
「妖怪のお話も多くて」
「しかもオズの国の人達が出入り出来て」
「私達そうした学園に通っているのね」
「とても不思議な場所に」
「不思議なことは何処にもあるわよ」
 ドロシーは考えている二人に言いました。
「何にでもあるし」
「不思議はですか」
「何処にも何にでもあるんですね」
「そうだったんですか」
「不思議はあちこちに備わってますか」
「そうよ、だからね」
 それでだというのです。
「あの学園にもなのよ。ただね」
「あの学園はとりわけ不思議が多いね」 
 モジャボロも言ってきます。
「オズの国と同じだけね」
「じゃあ八条学園もですね」
「回ってみたら」
「色々面白いと思うよ」
 不思議をです、楽しめるというのです。
「世の中自体がそうだけれどね」
「あちこちに不思議があるからですね」
「だからですね」
「そうだよ、今もね」 
 モジャボロは明るく笑って皆に言いました、今度は恵梨香とナターシャにだけ言ったのではありません。男の子達にもドロシー達にもです。
「ミュージッカーに会いに行くんだし」
「あの人も不思議ですね」
「あの人にしても」
「いつも音楽が出ている人だから」
「不思議ですね」
「そうだよ、あの人にも不思議があるから」
 だからだというのです。
「楽しもうね」
「はい、あの人とも」
「そうさせてもらいます」
 五人は笑顔で応えてでした、そのうえで。
 一行はさらに進んでいって遂にでした、一軒のお家がある離れの場所のお庭に置かれているベンチに一人の髪の毛が殆どない丸い頭の太った小柄な男の人がいました。口髭が丁寧に切り揃えられています。
 とても派手な軍服を着ています。
 金モールの付いた赤いチョッキに青いベスト、それに白いズボンという格好で杖を持っています。
 その人を見てです、ドロシーが笑顔で挨拶をしました。
「お久しぶり」
「おお、ドロシーさん」
 ミュージッカーが声を出すと、です。その声がです。
 音楽になっています、その音楽はバラードでした。
 そしてそのバラードに従ってです、こう言うのでした。
「お久しぶりでね」
「バラードね」
「はい、私の今の気分は」
 バラードを歌いたいというのです。
「それでなのですか」
「ううん、久しぶりの再会だから」
 ドロシーはそのバラードを聴きながらミュージッカーにお話します。
「明るい音楽がいいけれど」
「明るいですか」
「ポップスとか駄目かしら」
「わかりました、それじゃあ」 
 ドロシーの言葉を受けてでした、そうして。
 その人ミュージッカーは音楽を変えてきました、明るい音楽にです。
 そのポップスの調子で、です。ミュージッカーは歌いながらドロシーに尋ねました。 
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