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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第66話 またまた交渉します!

 
前書き
久々の匙の登場です。 

 
「カラオケの話、付き合ってあげる事にしたわ」
「アーシアちゃんも!」
「はい、ぜひ」
「明日夏!」
「……部長と副部長以外は来るぞ」
『ウオォォォッ!!!!』
「桐生はともかく!」
「アーシアちゃん含むオカ研のマドンナ達の参加で!」
『テンションマックスだぜぇぇぇッ!!!!』
マックスどころか振り切っているんじゃないかって程、松田と元浜がテンションを上げていた。
「リアス先輩と姫島先輩がいないのは残念だが…」
「この際贅沢は言わん!」
「……そうかよ」
そんなテンションの高い二人とは正反対にテンションが低い奴がいた。
って言うかイッセーだ。
原因は昨日の教会から来たゼノヴィア達と戦った後の木場の事だろう。
あの後、木場はアーシアにダメージを回復させてもらうなりゼノヴィア達の後を追うかの様に部室を後にしようとした。
当然部長は止めた。
「待ちなさい祐斗!私の下を去ろうなんて許さないわ!貴方はグレモリー眷属の騎士(ナイト)なのよ!」
「……部長…すみません…」
「祐斗ッ!」
だが木場は部長の制止の言葉に耳を貸さず、部室から立ち去った。
「……祐斗…どうして…」
その時の部長の悲しそうな顔は見ていられなかった。
おそらくイッセーもだろう。
そして現在、イッセーは木場の事で悩んでいると言う訳だ。
部長にあんな悲しそうな顔をさせたく無いって言う思いと仲間である木場の為にできる事は無いだろうかって言う思いを抱いて悩んでいるのだろう。
コイツの性格ならこのまま放っておくなんて言う選択肢は存在しないからな。
「こんな奴らと一緒にいると穢れてしまうよ」
当然一人の男子生徒がアーシアの手を取って現れた。
生徒会の書記兼上級悪魔である生徒会長の兵士(ポーン)の匙元士郎であった。
「あぁ…匙さんこんにちわ…」
アーシアは若干呆気に取られながらも挨拶をした。
「やあアーシアさん、御機嫌麗しゅう…」
「黙れッ!!」
「生徒会の書記ごときに言われる筋合いなど無いわぁぁぁッ!!!!」
匙は松田と元浜の言い分を適当に流していた。
「フッ、では諸君、失敬するよ」
終始かっこつけてそう言い去っていった。
結局何しに来たんだアイツは?
「……そうだ、アイツがいた…」
俺はイッセーのその呟きを聞き逃さなかった。


放課後、駅前のカフェでジュースを飲みながら俺はとある人物達を待っていた。
「イッセー」
「兵藤」
「お」
やって来たのは明日夏と匙だった。
待っていた人物達とはこの二人の事だ。
「よう悪いな二人とも、呼び出しちまって」
「気にするな」
「同じく」
「で、呼び出した理由は?」
とりあえず二人を座らせ、ある事、つまりこれから俺がしようとしている事を告げ、その協力を頼む。
「聖剣の破壊に協力しろッ!?しょ、正気かお前!!」
匙が物凄く驚愕していた。
「なあ頼む!この通り!」
俺は二人に頭を下げる。
「ふざけるなッ!!」
「匙、少し落ち着け。周りの視線を集めてる」
怒鳴り散らす匙とは違い、明日夏は非常に落ち着いていた。
なんとなく呼ばれた理由を察していたのだろう。
「聖剣なんて関わっただけでも会長からどんなお仕置きされるか分からないのにそれを破壊するだと!それこそ会長に殺されるわ!お前ん所のリアス先輩は厳しいながらも優しいんだろうが俺ん所の会長は厳しくて厳しいんだぞ!絶対に断るッ!!」
……そうか、会長は厳しいか。
「……ふう」
「……明日夏も駄目か」
「いや。むしろ少し感動してるな」
「え?」
「また前みたいに俺を頼らないんじゃないかって思ってたからな」
「……まあ、隠しててもすぐにバレるんじゃないかって思ってたし、だったらいっその事ダチとして頼ろうと思ってな」
「始めっから遠慮なんか要らねえよ。ちなみにまた頼らなかったら八極拳のフルコースを用意してたぜ」
「……それは勘弁だな…」
「フッ」
明日夏は笑みを浮かべると手を顔の位置まで上げて握手を求めてきた。
「じゃあ、よろしく頼むぜ!親友!」
俺と明日夏はお互いの手を強く握りあった。
「あぁ、はいはい。友情ごっこは二人でやってくれ。俺は帰る」
そう言って匙は立ち上がり、この場を立ち去ろうとする。
が、植物の仕切りを丁度通り過ぎた所で何故か歩いているのに全然進まなくなった。
「あれ?」
『ん?』
怪訝に思い、匙は隣を、俺と明日夏は仕切りの向こうを覗く。
「……やっぱりそんな事を考えていたんですね」
「……イッセーらしいけど」
「……私の事も頼ってほしかった」
そこには大盛りのパフェを食べながら匙の服の裾を掴んでいた小猫ちゃんと少し不機嫌そうな顔をしてジュースを飲んでいる千秋と燕ちゃんがいた。
どうやら俺が不振な行動をしていたからつけて来たらしい。
バレちゃってるのら仕方ないので三人にも俺の話を聞いてもらう。
「……うぅぅ…やっぱり帰…あうっ…」
立ち上がって帰ろうとする匙を小猫ちゃんが服の裾を引っ張って強引に座らせていた。
「……教会側に協力を?」
「アイツら、堕天使に利用されるくらいなら消滅させるとか言ってただろ」
「最悪、破壊してでも回収する気みたいだからな」
「……木場先輩はエクスカリバーに打ち勝って復讐を遂げたい…」
「……彼女達はエクスカリバーを破壊してでも奪い返したい…」
「……目的は違うが結果は同じ…」
「ああ、だからさ…」
「……こっちから協力を願い出る…そう言う事だろ?」
「ああ」
「……素直に受け入れるとは思えませんが」
「……あのライニーって奴は特にだろうな…」
「当たって砕けろだ!木場が今まで通り、俺達と悪魔稼業を続けられるんなら、思い付く事は何でもやってやる!」
「……当然部長達この場にいないメンバーには内緒なんだろう?」
「……まあな」
「……部長は立場上絶対に拒否するだろうしな。副部長もしかり」
「……アーシア先輩は嘘がヘタそうだし」
「……あの昼寝好きでのんびり屋の姉さんに隠し事は難しいわね。寝惚けて口を滑らせかねないし」
「……おまけに部長に思いっきり迷惑を掛ける事になりかねない」
「それでも木場は大事な仲間だし!何より部長のあんな悲しそうな顔を見たらいてもたってもいられないからな!」
俺がそう言うと明日夏達幼馴染み組が笑いだした。
「全くあんたは…」
「イッセー兄らしい」
「だな」
笑顔で言う三人の反応からどうやら明日夏達幼馴染み組は協力的の様だ。
「悪いな三人とも。本来なら悪魔の事情なのに…」
「さっきも言ったが遠慮は要らねえよ」
「……サンキュー」
「……まずはあの人達を探さないといけませんね」
「小猫ちゃん?」
「……部長達に内緒で動くのは心が痛みますが、仲間の為です」
小猫ちゃんっていつも無表情だけど熱い所があって本当に仲間思いだよな。
「………そ~……」
ガシッ!
こそこそと逃げようとした匙を明日夏と小猫ちゃんが腕を掴んで捕まえていた。
「俺関係ねえだろぉぉぉッ!!!!お前らグレモリー眷属の問題だろぉぉぉッ!!!!何で俺を呼んだぁぁぁッ!!!!」
「他に協力を頼める悪魔がお前しかいなかったんだよ。危なくなったら逃げて良いからさ」
「今逃げさせろぉぉぉッ!!!!協力なんてしたら絶対に会長の拷問だぁぁぁッ!!!!」
「悪いが匙、この事は会長にもバレる訳にはいかないからな。話を聞いたお前をみすみす帰す訳にはいかねえ」
あ、言われてみるとそうだな。
「しない!告げ口なんてしないから帰してくれぇぇぇッ!!!!」
「……それといい加減黙らねえと俺がお前を拷問するぞ」
「………これは脅しだ~…拉致だ~……誰か~…助けてくれ~……会長~…お助けを~……」
匙の助けを呼ぶ声は俺達以外に聞かれる事は無かったのであった。


「……トホホホ…なあ、俺はいなくたって良いだろう?…頼りになりそうな幼馴染みや無敵の戦車(ルーク)がいるんだからよぉ…」
街中を歩いていると匙がぼやいてきた。
「戦力は多い方が良いんだよ」
実際コイツは悪魔に転生する際、兵士(ポーン)の駒を四つ使ってる訳だしな。
さて、現在俺達は教会の五人を探していた。
「簡単にゃ見付からねえだろうなぁ。第一、こんな繁華街であんな白いローブを着た五人組なんて…」
「……イッセー兄」
「何だ千秋?」
「……あれ」
「ん?」
俺達は千秋が指差す方向を見る。
そこには…。
「え~、迷える子羊にお恵みを~」
「天の父に代わって、哀れな私達にお慈悲を~」
「お願いします、せめて食べ物を~」
白いローブを着たお鉢を手に物乞いしている三人組の女性と「愛の手を」と書かれた紙を持って不機嫌そうにしている男性一人がいた。
「……普通にいました」
「……ああ」
「……何だあれ?」
さっきまでぼやいていた匙もなんとも言えないっと言う表情をしていた。
何故かアルミヤって人だけその場にいなかった。
「……なんて事だ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ…」
「……それ以前にさぁ、私達が浮きすぎてるせいじゃないの?周りの人達凄い怪しい人を見る様な目してるよ?…」
「……はぁ……何でこんな事しなきゃならねんだ…」
「……三人とも毒づかないで。路銀の尽きた私達はこうやって異教徒達の慈悲無しでは食事も摂れないのよ…」
「元はと言えばお前とユウナが悪いんだろうが!」
「ライニーの言う通りだ!お前達がそんな詐欺まがいの絵画を購入するからだ!」
ゼノヴィアが指差す方になんか明らかに偽物って言う感じの絵画があった。
「何を言うの!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!」
「展示会の人もそう言ってたよ!」
「……じゃあ誰だよ?」
「……私には誰一人脳裏に浮かばないぞ?」
「……たぶんペトロ……様?」
「違うよパウロ様だよ!」
「どっちも違う!!全くお前達は………」
……なんか言い争いが始まった。
「……なあ、アイツらが教会から来た戦士……何だよな?」
匙がゼノヴィア達を指差しながら聞いてきた。
あんなのが教会から来た戦士って言われても信じられないよなぁ。
ぐぅぅぅぅ~。
言い争いしてる四人から盛大に腹の虫が鳴った。
「……まずはどうにかして腹を満たさなければ…」
「……確かにこの有り様じゃあな…」
「……どうする?異教徒でも脅す?…」
「……イリナちゃん、物騒だよ…」
「……なら寺を襲撃するか?…」
「……それとも賽銭箱を…」
「……この際、やむを得ないだろ…」
「ちょっと皆!それ犯罪だよ!」
「……さっきからああだこうだ言ってるが、路銀が尽きた原因はお前の余計な買い食いも含まれてるんだぞ!…」
「うっ……だ、だって、日本の食べ物がとっても美味しくて……つい…」
「……食い気エクソシスト…」
「ちょっとライ君!その呼び方は止めてよ!」
「……事実だろうが?…」
「……なんだかライ君機嫌悪いね?もしかしてあの子に負けた事、根に持ってるの?」
「……そんな訳あるかよ、大食いエクソシスト。最近腹が出始めたんじゃねえのか?」
「ライ君のバカ!女の子になんて事言うのよ!」
ユウナって子とライニーって奴がまた口喧嘩を始め出した。
「何だと!異教徒!」
「何よ!異教徒!」
ゼノヴィアとイリナも言い争いを始めていた。
「……なあ、イッセー…」
「……言いたい事は分かるぞ…」
「……だが言わせてくれ……いろんな意味でアイツらに関わり合いたく無いんだが…」
「……うん、分かるぞ…」
「よし、じゃ、帰ろうぜ!」
俺と明日夏の会話を聞いて匙が一目散に帰ろうとするが、明日夏と小猫ちゃんにまた腕を掴まれていた。
「……とは言え、部長や木場の為だ…」
「……ああ、分かってる…」
そう納得し、いざ接触を試みようとしたら…。
「君達は何をしているのだね?」
『ッ!?』
突然背後から声を掛けられ、慌てて振り返る俺達。
そこにはアルミヤって人がいた。
「もう一度聞く…君達は何をしているのだね?」
目を鋭くして聞いてくる。
背筋がゾッとした。
他の皆も冷や汗を流していた。
……交渉する前にいきなり決裂か…。
なんて思っていると…。
「……そのセリフ…そっくりそのまま返すぞ…」
明日夏だけが全く動じず、ゼノヴィア達を指差しながら聞く。
「…………ノーコメントで頼む……」
ゼノヴィア達を見て、頭が痛そうに手を当て、酷く呆れながら呟いた。
「……それで、我々に何か用かね?…その為に接触を試みようとしていたのだろう?…」
どうやら俺達の行動は既に見抜かれている様だ。
だったら、変に取り繕っても仕方ないな。
「アンタ達と交渉がしたい」


「美味い!三人とも、この国の食事は美味いぞ!」
「これよこれ!ファミレスのセットメニューこそ私のソウルフード!」
「イリナ、言ってる事の意味がよく分かんねえぞ!」
「ライ君、細かい事は良いのよ!」
向かい隣の席で運ばれて来る料理を片っ端から平らげていくローブを着た四人の男女がいた。
「……物凄い食べっぷり…」
「よっぽど腹が減ってたんだな…」
俺達は彼女達の向かい隣の席でそれぞれジュース等を飲んでいた。
「……なんと言うか…申し訳無いな…」
こっちの席(隣でガツガツされたんじゃ落ち着いて食べられないと言う事で)でパスタを食べているアルミヤさんが本当に申し訳無さそうに言う。
「……なんと言う事だ…。信仰の為とは言え、悪魔に救われるとは…。世も末だ…」
「私達は悪魔に魂を売ってしまったのよぉ!…」
「奢って貰っといてそれかよ!」
「……イッセー…」
……分かってるよ…怒らせたら元も子も無いってのは…。
「おい、俺は心まで売った覚えは無いからな!」
「……ライ君、そんな食べながら言っても説得力無いと思うよ…」
「勘違いするな、出された物を無下にすれば作った奴に申し訳無いだけだ!あくまで仕方無くだ!」
「……その割に結構がっつり行ってるよね…」
「お前に言われたくない!」
……確かにライニーの言う通り、ユウナが四人の中で一番食べていた。
「………悪いな明日夏…ほとんど出して貰って……」
「……気にするな」
ゼノヴィア達の分は俺が出そうと思ったんだけど、とてもじゃないがあの四人の食べっぷりでは俺一人じゃ無理だ…。
ちなみに伝票を見た明日夏曰く「……ファミレスであんな値段は初めて見たよ…」らしい。
「主よ、この心優しき悪魔達と人達にご慈悲を…」
「だぁぁぁぁッ!?!?」
「ッッッ!?」
「痛たたたたッ!?!?神のご慈悲なんか要らねえよぉッ!?」
「あら、ごめんなさい。つい癖で…」
……あぁ、いってぇ…。
……小猫ちゃんでさえ頭抱えてたよ…。
「……で、私達に接触してきた理由は?」
ゼノヴィアがコップの水を飲み干して聞いてきた。
「……交渉したいそうだ」
「……交渉?」
「エクスカリバーの破壊に協力したい!」
「……何?」
俺はこうなった経緯と理由をある程度簡略化して説明した。
「ふざけるな!そんな個人的な理由!ましてや悪魔の協力なんか!」
う~ん、ライニーの反応は予想通りだったな。
見るとイリナも否定的だった。
ゼノヴィアとユウナ、アルミヤさんは何か思案している様子だった。
「……話は分かった。一本くらいなら任せても良い」
「私も良いと思うよ」
「私も構わない」
「なッ!?」
「えッ!?」
「マジで!」
言ってみるもんだな。
「くぅ…あっさり断ってくれると思ったのにぃ!」
まあ、そう言うな匙よ。
巻き込んだ俺が言うのもあれだが…。
「ちょっと三人とも!」
「どう言うつもりだ!」
「向こうは堕天使の幹部コカビエルも控えている」
「それにフリード・セルゼン他、手練れのはぐれエクソシストがいるとなると…」
「正直、私達だけで聖剣の三本を回収するのは辛い…」
「それは分かるわ!けれど…」
「……無事帰れる確率は三割程度だ…」
「……ゼノヴィアが奥の手を使ったとしても三割半だと思うよ…」
「それでも高い確率だと覚悟を決めて、私達はやって来たはずよ!」
「……ああ、私達は端から自己犠牲覚悟で上から送り出されたのだからな」
「……それこそ信徒の本懐じゃないの…」
「……だが私達は、私達の全滅、さらに二本のエクスカリバーを奪われると言う最悪の結果をなにがなんでも避けなければならない」
「………」
「それにあの木場祐斗がこのまま黙っているとは到底思えない。おそらく何らかの形で私達の戦いに介入しかねない。堕天使の幹部との戦いの最中でその様な介入はできれば避けたい。ならいっその事、彼らと繋がりを持つ事で彼をある程度私達に害が及ばない様にするすると言うのが私の意見だ。……二人は何か意見はあるかね?」
『………』
「……それにライ君にはこんな所で死ぬ訳にはいかない理由があるでしょ?…」
「………チッ……」
「……話は纏まった」
「じゃあ!」
「ただし、私達と君達が繋がっている事を上や堕天使に悟られるのは避けたい。その辺を注意しほしい…」
「分かった…」
「……交渉成立か…」
よっしゃあ!
なるようになったもんだぜ!
後は木場にこの事を伝えるだけだな。
俺はケータイを取り出し、木場と連絡を取った。


「……なるほど。でも正直、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だね…」
「……随分な物言いだね?君はグレモリー眷属を離れたそうじゃないか。はぐれとみなしてここで斬り捨てても良いんだぞ!…」
「……そう言う考えもあるよね…」
「待てよ!共同作戦前に喧嘩は止めろって!」
あの後、木場と連絡を取り、公園の噴水前でさっきの話を聞かせたまでは良いんだが、いきなり喧嘩を始めようとしたので慌てて止める。
「……君が聖剣計画を憎む気持ちは理解できるつもりだ。あの事件は私達の間でも最大級に嫌悪されている…」
「……だから計画の責任者は異端の烙印を押されて追放されたの…」
「……バルパー・ガリレイ…皆殺しの大司教と呼ばれた男よ…」
「……バルパー…その男が僕の同士を…」
「……手先にフリード・セルゼンがいると言ったな?教会から追放された者同士が結託するのは珍しくもない。ましてや今回は聖剣も関わっている…」
「……そいつがいてもおかしくねえんじゃねえのか…」
「……それを聞いて、僕が協力しない理由は無くなったよ…」
「話は着いたな。私達はこれで失礼する」
アルミヤさんがそう言うと、ゼノヴィア達はこの場を去ろうとする。
「待て」
『?』
何故か明日夏が呼び止めた。
すると明日夏はポケットから何かを取り出し、アルミヤさんに投げ渡す。
それは血の付いた十字架だった。
「事前調査をしていたお前達の仲間の物だろ?偶然、遺体を発見してな…」
「……そう言えば発見した遺体で一人だけ十字架を紛失していたな…」
「そいつをやった奴はフリードじゃない…」
「何?」
「何で分かるんだ明日夏?」
「そいつは近くの壁に血で自分の名前…いや、あれは通り名だな…それが書かれていた。アンタ達が発見した頃には雨で読めなくなっていただろうが…」
「……なんと書かれていた?」
「……Bell the Ripper…」
「ッ!?ベルだとッ!!」
明日夏が口にした単語を聞いたライニーが顔を驚愕に染めていた。
よく見るとユウナも驚いていた。
「……知り合いか?」
「………」
ライニーは黙ったままだ。
「……ベル君は私とライ君と同じ孤児院出身の教会の戦士(エクソシスト)だよ…」
「……何?…」
「……ここからは私が話そう…」
ユウナが辛そうにしているのを見かねたのか、アルミヤさんが代わりに話し始めた。
「……本名はベルティゴ・ノーティラス、教会からは切り裂きベル(ベル・ザ・リッパー)と呼ばれている。幼い時に妹と路頭でさまよっている所を孤児院を兼任していた教会の神父が保護した。そしてほぼ同時期に入院したライニーとユウナと共に教会の戦士(エクソシスト)となった。だが、教会の戦士(エクソシスト)となって間もない時期、ある日彼は自身を拾い、育ての親となった神父を惨殺し、妹を引き連れ行方を眩ませた…」
な、何だよそれ!…。
「何で育ての親を!…」
「……彼はサイコキラーであったのだ…」
サイコキラーって確か、変な理由と目的で人を殺しまくる奴の事を言うんだっけ?…。
「……彼は人を殺す事、切り裂く事に異常なまでの衝動を持ち、興奮を覚える男だった…」
な、なんじゃそりゃッ!?
「……最初はそれを教会の敵にしか向けなかったが、徐々にそれを仲間にまで向けるようになった…」
「……その果ての結果で育ての親の神父を…」
『………』
明日夏の言葉を聞き、ライニーは怒りで、ユウナは悲しみで顔を歪ませていた。
「……情報提供に感謝する。では今度こそ失礼する…」
二人の心情を察したのかアルミヤさんはこの話を切り、この場から立ち去ろうとする。
「……えっと、食事のお礼はいつか必ずするね兵藤一誠君…」
「……邪魔だけはするな…」
二人はそう言い、アルミヤさんに着いて行く。
ゼノヴィアとイリナも三人に着いて行った。


「………」
交渉がうまくいったにも関わらず、匙が物凄く落ち込んでいた。
……当然か…。
匙的には関わり合いたく無いのに、どんどん関わっていく方向に話が進んだ訳だしな…。
そんな匙にイッセーが肩を手で叩きながら言う。
「ふぅ。よかったなぁおい!」
イッセー的には交渉がうまくいって万々歳なんだろうが、今の匙にその言葉は…。
「よかったじゃねぇ!」
案の定、捲し立てて叫んだ。
「斬り殺される所か、悪魔と神側の争いに発展してもおかしくなかったんだぞッ!!」
……まあ、否定はしないな…。
コイツの言う通り、そうなってもおかしくなかったからな。
「……イッセー君…」
「お前には何度も助けられてるからな…」
「……君達は手を引いてくれ…」
「え?」
……やっぱり言ってきたか…。
ちなみに、この木場の申し出に匙だけ嬉しそうにしていた。
「……この件は僕の個人的な憎しみ、復讐なんだ。君達を巻き込む訳には…」
「俺達眷属だろ!仲間だろ!違うのかよッ!!」
「……違わないよ。でも…」
「大事な仲間をはぐれになんてさせられるかッ!!」
木場の言葉を遮り、イッセーは木場の両肩を掴み、真っ正面から思いの丈をぶつける。
「言っとくが木場、こうなったイッセーは絶対に止まらねえよ。無論、俺達もな」
「うん」
「諦めて」
「………」
「それに俺だけじゃねえ!部長だって悲しむぞ!良いのかそれで!」
「……ッ…リアス部長…そう、あの人と出会ったのは聖剣計画が切っ掛けだった…」
そこから木場の口から、当時の思いと記憶が語られる。
それは当人の口から出た事のせいか、部長から聞いた以上に残酷な話だった。
剣に関する才能と聖剣への適性を見出されて集められた子供たちが来る日も来る日も辛い実験の毎日で、自由はおろか人間としてさえ扱われず、それでも誰もが神に選ばれた者だと信じ、いつか聖剣を使える特別な存在になれると希望をもって耐えた。
「……でも、誰一人として聖剣に適応できなかった。実験は失敗したんだ…」
計画の失敗を悟った責任者は計画の全てを隠匿する為に処分を実行した。
「……血反吐を吐きながら…床でもがき苦しみながら…それでも僕達は神に救いを求めた…」
が、結局救いは無く、それどころか神の信徒に殺された。
そんな中、同士達が必死の抵抗を行い、木場だけを研究施設から逃げ出させる事ができた。
「……逃げるんだ!…」
「せめて貴方だけでも!」
だが、毒ガスによって木場の命は、もう長くはなかった。
それでも追っ手から必死に逃げていたが、結局限界が来て倒れる。
そして、倒れても尚、強烈な無念と復讐の念を抱えたまま生きあがこうとしていた木場を救ったのが当時の部長だった。
「どうせ死ぬのなら、私が拾ってあげる。私の為に生きなさい」
そして、木場は悪魔になり、現在に至る。
「眷属として僕を迎え入れてくれた部長には心から感謝しているよ。でも、僕は同士達のお陰であそこから逃げ出せた。だからこそ、彼らの恨みを魔剣に込めて、エクスカリバーを破壊しなくちゃならない。これは一人だけ生き延びた僕の唯一の贖罪であり、義務なんだ…」
……改めて聞くと、残酷な話であり、木場の覚悟が伺える話だった。
……ただ、これは俺の勝手な推測なんだが、同士達はそんな事をさせる為に木場を逃がしたとは到底思えなかった。
おそらく同士達は…。
「うぉぉぉぉッ!!!!」
思案している俺をよそに匙が男泣きしていた。
「木場!お前にそんな辛い過去があったなんて!こうなったら会長のお仕置きがなんだッ!!兵藤!俺も全面的に協力させてもらうぜッ!!」
さっきまであんなにぼやいていたり、ビクビクしていたとは
思えないほどやる気と気迫に満ちていた。
「そ、そうかぁ…サンキュー…」
イッセーも呆気に取られていた。
なんやかんやでこう言う事は方っておけない性格なのかもな。
すると塔城が木場の服の裾を引っ張っていた。
「?」
「……私もお手伝いします」
「小猫ちゃん?」
「……祐斗先輩がいなくなるのは寂しいです」
本当に寂しそうに瞳を潤ませながら言う。
普段、無表情だが、芯は仲間思いな奴だよな、塔城って。
「……参ったな。小猫ちゃんにまでそんな事を言われたら、僕一人で無茶なんてできるはず無いじゃないか…」
「じゃあ!」
「本当の敵も分かった事だし、皆の厚意に甘えさせてもらうよ」
その時の木場の顔は生き生きしていた。
「……ふぅ…いろいろ懸念材料があったが、なんとかなったな」
「……ああ…ふぅ…」
俺とイッセーは少し気を抜き、息を吐く。
「よし!いい機会だ、皆に俺の事を話すぜ!」
なにやら匙が自分の事を意気揚々と話し始めた。
「聞いてくれ!俺の目標は……ソーナ会長とデキちゃった結婚をする事だッ!!」
『………』
間を置いて宣言された目標に俺達は無言になってしまう。
……いや、約一名、感涙している奴がいた。
「同士よ!」
他でもないイッセーだった。
「匙!聞け!俺の目標は部長の乳を吸う事だ!」
「なッ!?お前分かっているのか!?上級悪魔の、しかもご主人様の乳を吸うなんて!?いや、吸う以前に触れる事自体…」
「匙、触れるんだよ!俺はこの手で部長の胸を揉んだ事がある!」
「なッ!?嘘じゃないよな…」
「嘘じゃない!ご主人様のおっぱいは遠い。けど、追い付けないほどの距離じゃない!そして、俺は揉んだ!そして次は吸うんだ!」
匙もまた感涙していた。
「……兵藤…俺は初めてお前が凄いって思ったぜ!」
イッセーと匙が固く握手する。
「匙!俺達は一人ではダメな兵士(ポーン)かもしれない。だが、二人なら違う!」
「おう!同士よ!」
『二人でならやれる!二人でなら戦えるんだッ!!』
……初めて匙と邂逅した時も思ったが…コイツら…やっぱ似た者同士だ…。  
 

 
後書き
今回、名前だけ出たベルことベルティゴ・ノーティラスですが、結構強い奴にする予定です。
っと言うかかなりイカれた奴にする予定です。 
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