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万華鏡

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第七十七話 迫るバレンタインその二

「男の子にプレゼントすればいいのよ」
「そうね、手間はかかってもね」
「安くつくし」
「それならよね」
「それが一番よね」
 女の子達もそれで納得した、他の娘達もだ。
 それでだ、琴乃もこう言うのだった。
「じゃあ私もね」
「そう、琴乃ちゃんもよ」
「やっぱり手作りよ」
「手作りチョコよ」
「それが一番安くつくわよ」
「そうね、うちのクラスもね」
 ここで琴乃もクラスの中の男子生徒達を見る、見れば二十人いる。二十人ともなればだ。
「結構いるから」
「二十人だからね」
「女の子も同じ数だけれどね」
「二十人に百円ずつだとね」
「二千円よ」
 これだけの出費になるとだというのだ。
「馬鹿にならないお金よ」
「高校生で二千円よ」
「結構辛いでしょ」
「お金は他にも使うから」
 金には羽根が生えているのだ、しかも寂しがり屋であり多くある方に行くと言われている。そうした絶対のものがあるからだ。
 女の子達もだ、こう言うのだ。
「バレンタインだけで集中的に使うのはね」
「そこがポイントなのよね」
「それでどうするか」
「出費は抑えるに限るわ」
 お小遣いには限りがあるからだ。
「バレンタインだけにはお金は注げない」
「一点豪華主義は駄目よ」
「それ貧乏の元だから」
 江戸っ子風のそうした金の使い方は関西では好まれない、八条学園も関西の学校なので彼女達もこう考えているのだ。
 それでだ、バレンタインのみに金を使うことはというのだ。
「止めておいてね」
「バレンタインでも出費は抑えて」
「多少手間かけてもね」
そうしないよね」
「業務用のお店で買うのね」
 琴乃もこの人生の経験から理解する大切なことを頭に入れたのだった。それでクラスメイト達に確かな顔で言った。
「わかったわ」
「それも大量にね」
「要は大量生産よね」
「カレーもそうだしね」
「大量に作ってこそだから」
「そうね、わかったわ」
 琴乃はその確かな顔で頷いた、そしてだった。
 部活の時にだ、プラネッツの四人にそのことを話した、するとだった。
 美優がだ、確かな顔で琴乃にこう返したのだった。
「そうそう、バレンタインもな」
「お金はあまり使わずになのね」
「義理チョコでもだよ」
「手間かけてなのね」
「お金は使わないんだよ」
 そのことも言う美優だった。
「出来る限りな」
「出来る限り出費は抑えて」
「手間をかけてもな」
「皆に食べてもらうのね」
「美味しくな」
「安くて美味しくなのね」
「安いのはあたし達によくてな」
 そしてだとだ、美優は琴乃に話す。今は五人でジャージ姿でグラウンドをランニングしている、そうしながらのやり取りだ。
「美味しいのは男の子にいいんだよ」
「どっちにもいいのね」
「手間はかかってもな」
 それでもだというのだ、美優もまた。
「安くて美味かったらいいんだよ」
「じゃあやっぱり手作りね」
「あたしはバレンタインいつもそうしてたよ。ただな」
「ただ?」
「業務用のお店で買うんだな」
 美優はこのことはしみじみとして言った。 
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