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美しき異形達

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第十話 風の令嬢その三

「ここが桜ちゃんのお部屋なの」
「そうです」
「十二畳はあるわよね」
「そうですね、言われてみれば」
「いや、このお部屋を一人でなの」
「そうです、使わせてもらっています」
「やっぱり凄いわ」
 ここで唸ったのだった、裕香も。
「私の奈良の家なんてとても」
「というかあたしの寮の部屋より広くね?」
 薊はその広い部屋の中を見回しながら言った。京都の昔ながらの旅館と言っても通じる部屋のその中を。
「あたしのところ三人部屋だけれど」
「そうですか。ただ」
「ただ?」
「実は私は寂しがり屋でして」
 ここでだ、桜は少し気恥かしそうに微笑んで話したのだった。
「夜は妹達と寝ています」
「妹さん達と」
「そうです、一緒に」 
 そうしているというのだ。
「子供みたいですが」
「それってこのお部屋が広いからじゃないの?」
 菊も部屋の中を見回しながら言う。
「ここ冬とか寒そうよね」
「冷暖房はあるわね」
 菖蒲は部屋の上の方を見た。見ればそこにクーラー、ヒーターを兼ねているそれがある。
「けれどなのね」
「一人だとどうしてもです」
「寒く感じるのね」
「妹達もそう言っていまして」
「それでなのね」
「はい、夜は三人一緒に寝ています」
 今もだ、そうしているというのだ。
「そして朝起きています」
「妹さん達とも仲がいいんだな」
「はい、とても」
 そしてだ、このことは桜から言った。
「確かに私は両親とも妹達とも血はつながっていませんが」
「心で、なんだな」
「私は赤ちゃんの頃に両親に引き取ってもらいました」
「そしてその時からか」
「そうなんです、育ててもらって」
「妹さん達ともか」
「育って。暮らしてきていますので」
 だからだというのだ。
「私達は家族です」
「私と同じね」
「そうよね、私もだけれどね」
 ここでこう言ったのは菖蒲と菊だった。
「確かに家族と血はつながっていないけれど」
「それでもね」
「私達は家族よ」
「掛け替えのない、ね」
「そうそう、あたし達力の持ち主って全員そうなんだよな」
 ここでだ、薊は彼女達の事情を話した。
「孤児なんだよな、両親わからないんだよ」
「そうですね、不思議なことですね」
 桜も薊のその言葉に応えて言う。
「何故私達は皆孤児なのでしょうか」
「親がわからないんだろうな」
「何かあるのでしょうか」
「っていうかさ、力を持っていることもな」
「不思議ですね」
「何か力自体は気らしいんだよ」
 自分の掌の上に小さな炎を出して言う薊だった。
「これな」
「それですね」
「ああ、だからこれはまだわかるにしても」
「身体能力があがる理由は」
「それがわからないよな」
「はい、どうしても」
 桜も首を傾げさせることだった。 
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