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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第63話 交渉します!

 
前書き
残りの教会のオリキャラの名前が出ます。 

 
「……はぁ…よく無事だったわ!…」
イリナ達が去った後、とりあえずイッセーの部屋に集まったところに、血相を変えた部長が慌てた様子で部屋に駆け込み、俺達(特にイッセーとアーシア)を見て安堵し、自身の眷属であるイッセーとアーシアを抱き締める。
「ごめんなさい、私がもっと周囲に気を配っていれば…最悪の事も覚悟して戻ってきたのよ…本当によかったわ…」
どうやら部長はなんらかの方法(おそらく会長経由)でこの町に教会関係者がいるのを知り、最悪の展開を想像して慌てて帰ってきたと言った感じのようだ。
「これからは貴方達をもっともっと大事にするわ」
ほんと部長は自分の眷属を大事にする人(悪魔)だ。
「……部長…」
「なあに?」
「……おっぱい…」
「ええ、ええ、わかったわ。イッセー、貴方は本当に甘えん坊さんね…」
「ってストップ!!」
『ダメッ(です)(~)!!』
イッセーの要求を聞き入れて、自身の服に手をかけようとする部長を俺とアーシア達とで慌てて止めさせる。
「……あ、やっぱり…」
なんてやり取りして落ち着いたところで事の顛末を部長に話す。
「話をしただけ?」
「ええ」
「まあいいわ、どう言うつもりかは分からないけれど、どうせ明日には会う訳だし」
「え、明日?」
「明日の放課後、彼女達が部室にやって来るそうよ」
「なるほど、明日会うかもしれないって言ったのはそう言う訳か……厄介事になりそうですね…」
「……ええ、そうね」
……どうにも一波乱ありそうであった。


翌日の放課後、部室を張り詰めた空気が支配していた。
現在、五人の教会関係者が部室に訪れていた。
昨日、イッセーの家にやって来たイリナ達三人の他にイリナ達同様悪魔祓い(エクソシスト)と思われるローブを着込んだ男性二人がいた。
一人は黒髪で俺達と年が同じと思われる青年、もう一人は白髪で二十代(兄貴よりは年上か?)と思われる男性であった。
配置はソファーに部長、その背後に眷属であるイッセー達、その後ろに俺達は立っていた。
ちなみに木場は今日も休みでいない。
そして、部長の対面のソファーにイリナと青髪の女性、その後ろに白髪の男性を真ん中にしてその隣に神田ユウナ、黒髪の青年が立っていた。
青髪の女性が口を開く。
「会談を受けていただき感謝する。私はゼノヴィア」
「紫藤イリナよ」
「神田ユウナです」
「アルミヤ・A・エトリア」
「……ライニー・ディランディ」
教会関係者の五人がそれぞれ各々の名を告げる。
……にしても黒髪のライニーと名乗った奴、やけに俺達を忌々しそうに見ているな?
まあいいか。
部長が口を開く。
「神の信徒が悪魔に会いたいだなんてどうゆう事かしら?」
「元々行方不明だった一本を除く六本のエクスカリバーは教会の三つの派閥が保管していましたが、その内三本が堕天使の手によって奪われました」
『ッ!?』
「奪われた!……」
イリナの言葉に俺達は驚く。
「私達が持っているのは残ったエクスカリバーの内、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)と…」
「私の持つこの擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の二本だけ」
ゼノヴィアと名乗った女性は布で包まれた剣を掲げ、イリナは腕に巻いてある紐状の物を指差す。
イリナのエクスカリバーおそらく、擬態の名の通り、自由に変化させる事ができ、あの様に紐状にして持ち運んでいるのだろう。
すると今度は後ろにいる白髪の男性が口を開く。
「残る一本は全て奪われる事を危惧した正教会が死守している状態の為、今回の奪還任務に持ち出されていない」
失敗した時の事を想定して最後の一本だけでも死守しようと言う訳か。
「で、私達にどうしてほしい訳?」
「今回の件は我々と堕天使の問題だ。この町に巣食う悪魔に要らぬ介入をされるのは面倒なのでな」
「……ずいぶんな物言いね。私達が堕天使と組んで聖剣をどうにかするとでも?」
「悪魔とって聖剣は忌むべき物だ。堕天使と利害が一致するじゃないか」
「………」
まあ確かに、ゼノヴィアの言い分は正しい……が、その言い方は部長のプライドを酷く逆撫でしているだろうな。
実際、部長は今にもキレそうであった。
「もしそうなら、我々は貴女を完全に消滅させる。例え魔王の妹であろうともな」
「そこまで私を知っているのなら言わせてもらうわ。私は堕天使などと手を組む事は無いわ!グレモリーの名にかけて、魔王の顔に泥を塗るようなマネはしない!」
部長の言葉を聞いたゼノヴィアが不敵に笑む。
「それが聞けただけで十分だ。今のは本部の意向を伝えただけでね、魔王の妹がそこまでバカだとは思っていないさ」
「なら私が神側、すなわち貴女方にも協力しない事も承知している訳ね?」
「無論。この町で起こる事に一切の不介入を約束してくれるなら」
「了解したわ」
どうやら会談は何事も無く終わりそうであった。
ゼノヴィアとイリナが立ち上がる。
「時間を取らせてすまなかった」
「せっかくだからお茶でもどう?」
「いや、悪魔と馴れ合う訳にはいかない」
「ライニー君なんかさっさとこの場から立ち去りたいって顔してるしね」
「……フン」
イリナに言われそっぽ向くライニーと言う名の青年。
神田ユウナとアルトミヤと名乗った男性はそんな奴を何か含みのある視線を向けていた。
「では失礼する」
ゼノヴィアのその言葉と同時に五人は立ち去ろうとする。
ちなみに神田ユウナだけはきちんとお辞儀をしていた。
とりあえず何事も無くて良かったよ。
……特に木場がいなくて…。
エクスカリバーが二本あるこの状況に今のアイツがいれば確実に一悶着(突然斬りかかるや勝負を吹っ掛けたり等)あっただろう。
だが俺はここでのもう一つの懸念材料を失念していた。
ゼノヴィアがふと歩みを止め、アーシアへ視線を向ける。
「……兵藤一誠の家を訪ねた時、もしやと思ったが…アーシア・アルジェントか?」
「え、は、はい」
まずい、イヤな予感が!
「……まさかこんな地で魔女に会おうとはな」
「ッ!?」
魔女……この単語はアーシアにとっては辛い思い出を思い出させるものだった。
「あ~、貴女が魔女になったと言う元聖女さん?堕天使や悪魔をも癒す能力を持った為に追放されたとは聞いていたけど~、悪魔なっていたとはね~」
「………っ…あ…あの…私は……」
「……アーシア…」
アーシアは体を震えせながらスカートの裾をギュッと掴み俯く。。
そんなアーシアにゼノヴィアはさらに無情な言葉を掛ける。。
「しかし聖女と呼ばれていた者が悪魔とはな。堕ちれば堕ちるものだ」
「テメエ!いい加減にしろお前…」
「……イッセー先輩」
「……落ち着け」
ゼノヴィアの言い分にイッセーが突っ掛かろうとするが、俺が肩を掴み、塔城が手で制して落ち着かせる。
「……気持ちは分かるが…」
「……分かってる!…ここでアイツらとやらかしたらマズイって事ぐらい!…」
頭では分かってるようだが、沸き上がる感情は抑えきれない様だ。
「まだ我らが神を信じているのか?」
「ゼノヴィア、彼女は悪魔になったのよ」
「いや、背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら信仰心を忘れられない者がいる。その子にはそう言う匂いが感じられる」
……面倒な鼻をしてるじゃねえか。
「へぇ~、そうなんだ。ねえ、アーシアさんは主を信じているの?悪魔になってまで?」
「………す、捨てきれないだけです……ずっと信じてきたのですから……」
イリナの質問(悪意が無いせいで余計に心を抉る)にアーシアは震える様に呟くだけであった。
「ならば今すぐ私達に斬られると良い」
「ッ!?」
コイツ、冗談じゃなく真剣(マジ)で言ってやがる!
「君が罪深くとも我らの神は救いの手を差し伸べてくれる筈だ。せめて私の手で断罪してやる。神の名の元に」
「テ…」
「そのくらいにしてもらえるかしら!」
淡々と告げる彼女にイッセーが物申そうとするが、先に部長が言葉に怒気を含ませて割り込む。
「私の下僕をこれ以上貶めるのは」
「貶めているつもりは無い。これは信徒として当然の情け…」
「ッ!!」
イッセーが俺と塔城の手を振り払う。
(……これ以上は無理だな)
イッセーの我慢が限界に達した様だ。
だったらいっその事、言いたい事を言わせてやるか。
イッセーはアーシアを庇う様に前に出て真っ向からゼノヴィアと対峙する。
「アーシアを魔女と言ったなぁ!」
「少なくとも今は魔女と呼ばれる存在だと思うが…」
「ふざけるな!!」
「?」
「自分達で勝手に聖女に祀り上げといて!アーシアはなぁ!……ずっと一人ぼっちだったんだぞ!…」
「聖女は神からの愛のみで生きていける。愛情や友情を求めるなど、元より聖女になる資格など無かったのだ」
「何が信仰だ!神様だ!アーシアの優しさを理解できない連中なんかみんな馬鹿野郎だ!」
「……君はアーシア・アルジェントの何だ?」
「家族だ!友達だ!仲間だ!お前らがアーシアに手を出すのなら、俺はお前ら全員敵に回しても戦うぜ!」
「フ、なるほどな」
「ッ!?」
突然、嘲笑うかのような言葉が紡がれた。
言葉を発したのは、今まで会話に参加せず黙っていたライニーと名乗った男だった。
「何がなるほど何だよ!」
「家族、友達、仲間、なるほど、愛情や友情を求めたそいつにはうってつけのたぶらかし文句だった訳だ」
「何!」
「そう言ってそいつをたぶらかして悪魔に仕立て上げたんだろう?」
「ッ!?」
「悪魔の誘惑ってヤツか?悪魔らしいかぎりだ」
「そんなんじゃねえ!俺はアーシアと友達になりたいって思っただけだ!」
「そりゃあ悪魔を癒す力は何がなんでも欲しい…」
「そんなの関係ねえ!悪魔もシスターも関係ねえ!俺はそんな物抜きでアーシアと友達になろうとしたんだ!」
「そう言ってたぶらかしたんだろう?後ろ三人も同様に」
奴が言った三人とは千秋、鶇、燕の事だろう。
三人とも奴のイッセーに対する言動に怒りを覚えていた。
ま、書く言う俺も頭に来てるんだけどな。
「哀れだな。こんな男にたぶら…ッ!」
ドガァッ!
千秋が我慢の限界が来たのか、奴に向けて上段蹴りを放つ。
が、奴もすぐ反応して腕で防いだ。
「何も知らないでイッセー兄を語るな!」
千秋は鋭い視線で睨む。
鶇と燕も鋭い眼光を放っていた。
コイツらはイッセーに救われた。
イッセーのその行動に企み云々は無かった。
それを知ってるからコイツらは救ってくれたイッセーに感謝の念を抱き、そして惹かれた。
コイツの言葉はそんなイッセーを侮辱する事と同義、穏やかではいられないだろうな。
俺自身、来るものがあるからな。
「そっちがその気なら受けてたつよ。先ほど盛大に喧嘩を売られたからね」
「フン、目を覚まさせてやるよ!」
ゼノヴィアも奴もやる気満々であった。
「ちょっ!?二人とも…」
「止めなさい!みんな…」
「……ちょうど良い。僕も混ぜてもらおうか」
神田ユウナと部長の制止の声を遮る声があった。
声がした方を見るとドアに背を預けて立っている木場がいた。
「……誰だ君は?」
ゼノヴィアが尋ねる。
「……君達の先輩だよ…」
その瞳に憎悪で満ち溢れさせ、その鋭い視線をゼノヴィア達の持つ聖剣に向けられていた。 
 

 
後書き
ライニーがかなり悪魔嫌いな様子ですが、ちゃんと理由があります。
ライニー達の紹介は次回の後に書きます。 
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