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インフィニット・ストラトス 自由の翼

作者:ren sagiri
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シャルルの秘密と春奈の新たな友達……です。

○Noside

現在は夕飯後の自由時間であった。

「とりあえず、よろしくなシャルル。」

「うん、こちらこそだよ天地。」

質問攻めと女子包囲網から逃れるために二人は通風管やダクトを伝って寮に戻ってきていた。

「ダクトが埃だらけじゃなくてよかったよ。」

「変なところまで掃除されているのかもしれないね。」

「いや……最近誰かが通ったのかもしれないな。ちょうど、ほれ。」

そう言うと天地はOOを準起動モードで待機させながら自室をスキャンニングする。

「……盗聴器3つと超小型(マイクロ)カメラが4つか。まったく悪趣味な奴もいるな。」

コンセントの裏などから小さな機器を外して指で潰していく天地。

「……えっ!?盗聴器!?」

「先月よかマシだよ。酷い時なんか誰かが潜んでるってこともあったんだぞ?気絶させて織斑先生に引き取ってもらったけどなその時は。」

堂々とそんなことを言う天地に呆気に取られたシャルルであった。ちなみに潜んでいたその女子の末路は……本人のためにも察して欲しいと思う。

「……それをマシだって言える君の感性を僕は疑うよ。」

「んなこと言ってられるかよ。―――慣れだ、慣れの境地なんだよ!悟りの域なんだよ!」

「いや、待ってよ天地くん!?なんで逆ギレしてるのっ!?」

「俺かってこの状況に慣れたくはねぇよっ!?でも、なれなかったら胃が持たないんだよっ!」

その様子を見たシャルルは天地が如何に苦労しているのかを悟った。

「……天地もいろいろ苦労してるんだね。」

「すまん、取り乱した。こんなもん人に話すべきじゃない悩みだし忘れて欲しい。」

それに対してシャルルは首を横に振って応えた。

「せっかくのルームメイトなんだし悩みくらいなら共有してもいいよ。どうするか考えるのも手伝うしさ。」

「シャルル……わかった。改めてよろしくな。」

「うん、こちらこそ。」

こうして天地とシャルルの共同生活は幕を開けるのであった。

―――もっとも、この後のハプニングを天地が予測できるはずもなかったがと言うのは別の話。

「お茶でも飲んで休憩するか。」

「うん、賛成だよ。」




○side春奈

「ここはこうして……荷電子の収束率を高めて上げれば?」

「……それだと……エネルギーに問題が……出ちゃう」

……確かにそうですね……春雷は速射性を求めた荷電粒子砲でしたね。

私は現在IS学園の第2アリーナに併設された第2整備棟に来ています。ここ最近は友人のISを組み立てるのを手伝っています。

友人の名は更識簪と言って私は更識さんと呼んでます。出会いのきっかけは彼女から手伝って欲しいと誘いを受けたからですね。

その時の様子を回想しますと……

『あの……』

『はい、何でしょうか?』

『その……』

『……?』

『……』

『……』

回想終わり……じゃないですよ!?

『更識……簪……です。』

『……!あ、楯無さんの妹さんですね?私は生徒会にて庶務を務めています織斑春奈です。初めまして。』

『……よろしく……。』

『あなたから声をかけてこられるなんて思ってもいなかったものでしたけれど……どうかしましたか?』

『姉さんから……あなたがISに詳しいって聞いて……私の専用機の組み上げを手伝ってもらいたいんです!』

……とまぁ回想は終わりですね。

最後の一声が大きかったのを覚えています。蚊の鳴くような声で喋っていたと思ったらいきなり大きな声になって驚いたものでしたので。

「更識さん、ちょっとISコアを見せてもらってもいいですか?」

「……どうぞ」

では遠慮なく。私は彼女の専用機である打鉄弐式のISコアにコードをつないでエネルギーパターンをグラフに……

「……なにこれ?」

ふとISコアの裏側を覗くとそこには薄く[G]の文字が浮かんでいます。これは一体?

「……どうかしたの……?」

「うん、更識さんもこれを見てくれない?」

更識さんにも確認してもらいましたが一応予測通りの答えが返ってきました。

「……これは何でしょうか。」

「……私にも……わからない。」

―――更識さんも心当たりがない?何でしょうかこのモヤモヤした感じは。

「まぁ、これは置いときましょうか。ISコアって未解明の部分も多いですし。」

「……賛成……?」

「どうかし……え?」

私と更識さんは目を疑いました。先程よりも打鉄弐式のエネルギー出力が上がっていたのですから無理はないでしょう。

「……何かしたの?」

「いいえ、何も……」

一体この現象は何なのでしょうか?

「まぁよくわかりませんが出力が上がったのであればアレ(・・)も搭載できるんじゃないですか?」

「―-―!」

打鉄弐式の完成も間近です。

フリーダムの火器管制(マルチ・ロックオン)システムをミサイル版にアレンジして完成された6×8連装マイクロミサイルポット山嵐(やまあらし)

プラズマ収束砲ビーム砲[バラエーナ]の技術を転用した複層荷電粒子速射砲春雷(しゅんらい)

カリバーンの技術を転用した物理/ビーム薙ぎ刀の夢現(ゆめうつつ)

そして携行火器に対IS用46口径強装弾仕様短機関銃の黎明(れいめい)を武装に登録しました。更識さんもかなり気に入ったようですね。

「ひとまずは一段落ってことで。タッグロワイヤルバトルまでに調整を間に合わせましょうね、更識さん。」

「……簪でいい。」

「……わかりました。がんばりましょうね、簪ちゃん。」

「うん。……このままよろしく、春奈。」

「はい、お任せください!」

私たちは月末に行われるIS関連行事のタッグロワイヤルに向けて打鉄弐式の調整を確実に進めていくのでした。

私は負けませんよ。一夏、天地くんも私のライバルなのです。




○Noside

春奈たちが第2整備棟に篭るようになって少しの日にちが経ったある日のこと。

タッグバトルに向けての訓練をアリーナ閉鎖時間ギリギリに終えた天地は疲れた体を引き摺るように自室に戻っていた。

「ちょっと無茶しすぎたか……さっさとシャワーを浴びて体を休めるか。」

そんな独り言をつぶやきながら天地は部屋のドアをノックもなしで開けた。数秒後彼はその心づかいを忘れたことを後悔することになる。

「ただいま……シャルル?いないの―――」

「て、天地っ!?」

今やシャルルと天地は互いを認め合い、完全な呼び捨てで呼び合っていた。これはやはり信頼の現われなのであろう。

さて、その話は横において置き……天地の目の前には女子(・・)がいた。

白磁のように白い肌に艶やかな金髪。目鼻の筋は整っていて異性、同姓にも人気の出そうな顔立ちでその瞳はアメジストのようなきれいな紫であった。

自分のサイズに合う服が無くて天地の私物を借りたようでその女子は裸にブラウスを着ていた。

こんなときに不謹慎と思いながらも天地はまぶしく輝く絶対領域をガン視した後ゆっくりと視線を上げた。

「お前もしかして……シャルルなのか?」

「そうだよ……天地。」

目を見て話す天地に対して目を泳がせるシャルル。シャルルは明らかに動揺しているようだった。

「ふ、服はどうしたんだよ。」

「汚れちゃって……洗濯中だよ。今乾燥にかけてるんだ。」

「そ、そうか。」

「「……」」

それからしばらくお互いに背中を向けてお互いの気持ちを落ち着かせていた。

「「……」」

そして沈黙してから小一時間経過した頃だろうか。

「「……」」

ピー……

「……服、着替えてくるね。」

「あ、ああ。」

天地はそう答えるのがやっとだった。

そしていつものようにラフなジャージで過ごすシャルルだった。ただし、そこに居たのはやはり女子だった。




○side天地

「さて、シャルル。俺はお前のことを信じている。」

俺はシャルルにできるだけ優しそうな口調を心がけてそう話しかけた。

この言葉を聴いたシャルルは少しだけ思いがけないことを聞いたと言うような顔をしていた。

「……も、もちろん友達(・・)としてな。だから、嘘なんかつかないで正直に話して欲しい。」

一夏の二の舞はごめんなので友達と言う言葉を強調して言葉を紡ぐ俺を見たシャルルは少しだけ笑っていた。

「うん、わかったよ。……天地、こんな事いうのはアレだけど顔が真っ赤だよ?」

「……う、うるさい。それは俺も薄々感じてたことだよ。」

最近はシャルルが隣に居ると言いようの無い気持ちに捕らわれることがあった。これは間違いなく……師匠の言葉を借りると「これはまさしく愛だ!」

「まぁなんとなく俺はシャルルの言動がおかしいとは前から感じていたんだ。ほんとに男子なのか?……てな。」

シャルルは俺の言葉を聞いて若干俯いていたが気を持ち直したのか頭を上げた。

「シャルル。なんで男のふりをしてたんだ?」

「うん、その前に天地の淹れてくれたお茶が飲みたい。」

「……わかった。飲んだら―――」

「そんなに心配しなくても僕は事情を話すよ。だからお願い。」

俺が淹れたお茶を飲んで気を落ち着けたシャルルはぽつぽつと話してくれた。その話を聞いた俺は絶句した後で沸々と怒りがこみ上げてくるのを感じた。

シャルルの話してくれたことを俺なりに纏めたらこう言う内容だ。

一つ、今回の男装については身内の指示で[デュノア社]の広報と並行して俺と一夏のISの稼動データと機体データを盗むことであったと言うこと。

一つ、シャルルは[デュノア社]現社長の愛人が生んだ子であると言うこと。

一つ、経営難に至ったデュノア社を立て直すためにシャルルは利用されたと言うこと。

……俺は話を聞いている間にシャルルの表情が何度か曇っていたのを見逃さなかった。

「こんな事情があってね……僕は天地と一夏くんに近付いてたんだよ。僕は所詮、泥棒猫の娘。あの人からすれば捨て駒に過ぎないのかもね。……天地に話したらなんだか楽になったよ。デュノア社は潰れるかどこかの傘下に入るしかないかな―――まぁ、僕には関係の無いことだけどね。」

「話を聞いてくれてありがとう、天地。」と微笑むシャルル。でも、哀しみに満ちたその微笑は俺の胸をひどく締め付けた。

こんな笑顔はシャルルには似合わないと……心がひどく騒いだ。

「シャルルはどうなるんだ?」

「うん?僕はよくて牢屋行きかな?だって、フランス政府を騙したんだからね。あの人は僕に責任を押し付けて―――」

そして、俺は我慢できずに―――

「ふざけんな!」

「……天地?」

俺の押さえ込んでいた激情の枷が外れるのを感じた。そして激情は[言葉]と言う流れにのって暴れだした。

「いいはずねぇだろ!親の勝手でお前は牢屋にぶち込まれるだと?シャルルは確かに俺と一夏を騙したかもしれない。けど、お前の笑顔は騙すための笑顔じゃなかった!」

「―――!」

いきなり暴走する俺に戸惑うシャルル。でも、少しの間付き合ってもらうぜ。

「確かに親がいて子が居る。それは当たり前だ。でも、子供の自由を親が否定していいはずがねぇ!親は子供を守るために子供の自分勝手(ワガママ)を止める。どんな親にも子供が出来たら責任が付きまとうんだ!」

心から流れる激情……まだ止まらない。とまってくれない。

「シャルルの親父さんはそれをわかっていない……子供の自由を奪おうとしている。親がしていい行動じゃないと分かっていないんだ!それをお前は受け入れるって言うのか、シャルルッ!?」

「天地、僕は愛人の子なんだよ?」

卑屈になっているシャルルの心を一蹴するように俺は

「そんなもん関係ねぇ!俺はお前の意思を聞いているんだ、シャルル!」

「……僕の意思?」

「関係ない話をするけどよ、俺は10歳の頃まで両親に育てられた。けどな……」

俺は左目を隠す眼帯を外した。傷跡の残る左目は再生医療で視力を戻している途中だが。

「その目は……まさか6年前のテロ!?」

「ああ、俺はあの時の自爆テロで両親と左目の視力を失った。」

「……え?」

「でも、俺は生き延びた。なんでか分かるか?」

シャルルは分からないと首を横に振った。

「母さんが俺を突き飛ばして守ってくれたんだ。母さんは爆風をもろに受けて激しい全身打撲と全身火傷によるショック死。父さんは飛来する破片から俺を守り重傷の身でありながら俺を駆けつけた救急隊員に引き渡したところで事切れたと聞いた。」

「そんなことがあったなんて……天地の両親が君を守ったから―――っ!」

シャルルは言葉を理解したようだった。

「そうだ。俺の言いたかったことが分かるよな、シャルル。」

「あの人には……僕に対する愛情は無いって言いたいの?天地。」

「ああ。でも、亡くなったシャルルの母さんならそれくらいの事は出来るだろうよ。」

「……そっか―――僕はどうしたいのかな。」

「シャルル。ここはどこだ?」

俺はもうひとつの気づかせるべきことをシャルルに尋ねた。

「いや、IS学園でしょ……あ……。」

「ここは超国家機関が定めたどこの国にも属さない土地なんだよ。政治的干渉は出来ない……司法の孤島な。だから―――」










「ここにいろ、ここにいればいいさシャルル。」










俺はシャルルにそう言った。本心は今は隠しておく。

「3年間は大丈夫だろ?だからじっくりと考えればいいさ。どうするかとかはさ。」

「うん、そうだね。」

「答えを出すのはシャルルだ。俺じゃない。後は自分で決めればいいんじゃないか?」

「分かったよ、天地。……話を聞いてくれてありがとう。」

コンコンッとノックの音がした。ん?ノック?

「天地さん、いらっしゃりますか?」

「「!?(セシリア)」」

以心伝心と言う感じで俺とシャルルは連携を取った

何にせよばれるとまずいことは確かなのだから当たり前だろう。

「シャルル、俺が誤魔化すから布団に潜り込んで風邪のふりを頼む。」

「お願いするよ、天地。」

「おう、今開けるぞ。」

俺は平常を保ちつつドアを開ける。

「シャルルさんはどうかなさったの?」

なにか勘繰るようなセシリアの視線を流して俺は考え付いていた言い訳で誤魔化した。

「ちょっと風邪気味みたいでな。夕飯はいらないらしい。」

「そうでしたの。それは仕方ありませんわね。天地さんも夕飯一緒にどうでしょうか?一夏さんに鈴さんと箒さんでも誘って。」

「わかった。んじゃ、シャルルゆっくり寝とけよ。」

「うん、僕は寝とくから……ごほっごほっ」

……誤魔化せたのか?

「では、シャルルさんお大事にです。」

そう言ってセシリアはさっさと行ってしまう。誘ったのってセシリアだよなっ!?

そんなことを考えながら俺はセシリアの後を追うのであった。




○side???

束のラボに今日は珍しく客人が来ていた。

「姉さん。」

客人は実の妹である箒だった。

「よく来たね~箒ちゃん。束さんは姉妹の再会がうれしくて仕方ないよ~っ!……ありゃ?箒ちゃんまた大きくなった?」

「そりゃ日々精進あるのみと竹刀を振っていますから。身長も伸びます。」

「いや、そっちじゃなくておっぱ―――よっとっ!」

振り下ろされる竹刀をバシィッと言う乾いた音と共に真剣白刃取りの要領で止める束に嘆息しながら竹刀を退く箒。

「それは私のコンプレックスなんです。そこは放って置いてください。」

「あい、んじゃ手っ取り早く箒ちゃんを呼んだ理由を明かそうかな~。」

束はシステムコンソールを呼び出して操作を開始する。

「この子は[紅椿]。春ちゃんの[フリーダム]、いっくんの[白式]と天くんの[OO]の設計データと稼動データを元に調整した展開装甲と一種の人格を持つISだよ。」

機会の駆動音と共に足元の鉄板が開いて上がってきたのは真紅のISだった。

「展開装甲は第4世代の技術……私と姉さんが出した一つの終着点の見えない進化。」

「そして、この子は箒ちゃんの剣だよ。」

「紅椿。私と共に歩いてくれないか?」

[……君の実力をためさせてもらう。]

「!?」

[そう警戒しなくてもいい。俺は紅椿のコアと共生しているニューロ体……一種の電子頭脳。]

箒は喋っているのがISの前に浮遊している小人サイズの青年に気が着いた。よく見るとホログラムのようである。

[俺の名前はアスラン。アスラン・ザラだ。よろしく頼むぞ篠ノ之箒。]

この日から箒は過去(・・)の世界の英雄と手を取り合い戦うことになるとは予想もしていなかったのだが。

● 
 

 
後書き
ついに迎えたタッグロワイヤル戦そこに押しかけるのは奴等だった。

「このプレッシャーって……ジ・O!?」

[貴様、ニュータイプか!?]

次回インフィニット・ストラトス 自由の翼

タッグロワイヤルバトルと無人機襲撃と金色の重装甲機

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