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東方魔法録~Witches fell in love with him.

作者:枝瀬 景
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24 久振~Girls pursue each of the goals.

パチュリーの風邪も無事に治って何時も通り書庫で本を読みふけるそんな日に、ボソッとパチュリーが呟いた。

「足りない…」

本のページをパラパラと捲ったり、机の上にある赤色の液体の入ったビーカーやフラスコやら試験管やらアルコールランプやら…とにかく沢山の道具をどかしたりして何かを探している。

「この前小悪魔にお使い頼んだのに、また材料がなくなったの?」
「だって…難しいから…。賢者の石作るの」

………………………………………
何時だったかな?パチュリーは俺が吸血鬼になったこと…正確には永遠の中に生きる存在になったことで悩んでいた。

いくら人間より寿命が長い魔法使いとは言え、いつかは寿命が尽きてしまう。自分は年老いて先に死ぬことで、永遠の中に生きる俺に悲しんで欲しくないし、自分も出来ることなら永遠に俺と一緒にいたいと思っていた。

いっそのことパチュリー自身も吸血鬼になってしまおうかと思っていたある日、いつの間にか新刊が追加される不思議な本棚でパチュリーは錬金術の本を見つけた。

鉄とか鉛を金とか銀に変えてしまうあの錬金術だ。そしてその本には賢者の石についての記述があった。

賢者の石。他には大エリクシル、第五実体、赤きティンクトゥラとも呼ばれるもので、錬金術において様々な触媒として重宝し、不老不死の永遠の生命を与える霊薬でもあり、とても貴重で作ることがとても困難なものである。

そんな賢者の石にパチュリーは目を付けた。賢者の石を手に入れれば俺と永遠にいられるのではないかと思ったのだ。

それからパチュリーは直ぐに行動に出た。と言っても始めはいつものように本を熟読するだけだったが。まあ、本の内容を理解しないと作れないしね。

本を読み終わると、ガチャガチャと器材を机の上に用意し始めた。そしてここずっと賢者の石作りに没頭している。

最近は無理したせいで風邪をひいてしまって、パチュリーの熱の入り用はちょっと心配だ。

まあ、そんなこんなで今に至る。
………………………………………

「行き詰まってる?」
「うん…ちょっと…」


パチュリーは顔をうつむきながら答える。研究が思うように進まず気が滅入っているようだ。俺は紅茶を飲みながら聞いた。最近喉が以上に渇くんだよな。

うーん…病は気からとも言うし、落ち込んでるパチュリーをどうにかしたいけど…病気と言えば薬をくれたエリーにお礼言わなきゃな。……そうだ!

「久しぶりにウェネフィクスに行ってみない?」
「え…?」
「気分転換だよ。街の様子も見たいし、エリーにお礼言わないといけないし、レイレウのことだってある」
「……わかったわ。それじゃデートに行きましょ」
「へ?」
「あら、違うの?」
「いや、そうだよね。いこうか、デートに」














更地になっていたウェネフィクスはレイレウの指揮により、次々と復興していった。建物や資材はさすが魔法、あっという間に元通りになっていた。

「エリーこの前はありがとうね」
「ありがとう」

俺はパチュリーと一緒にエリーの店に訪れていた。この前開店したばかりなのに既に沢山の魔法薬と客で店は溢れかえっている。

「い、いいんだよ。く、薬が効いて良かった」
「すいませーん。これいくらですか?」
「は、はい、い、今いきます」

エリーは客に呼ばれ、たどたどしく魔法薬を売っていた。
店を構えたからといってエリーの口調が変わることはなく、コミュ障なのは相変わらずだ。だけどちゃんと店を切り盛りしているのは頑張っているなと思う。

ふと、商品棚を見てみるとえぇと…『まんじゅうが怖くなくなる薬』『目からビームが出るようになる薬』『耳が伸びる薬』『エラ呼吸になる薬』『センスが良くなる薬』etc…

………最後のはいいとしてなんだよ、そのラインナップは……エラ呼吸は水の中で息できるようになるから、わからないでもないけど、この品揃えで売れているから不思議だ。

「お、お待たせ……な、なにか欲しいものでも見つけた?」

勘定を終えたエリーが戻ってきた。

「エリー……もっと実用的なものを売ろうよ……あ、でもこれはいいかも」

俺が手にしたものは日焼け止め。以前、エリーが海に持ってきたものよりも使用時間が長くなり、耐水性で、丸一日はもち、日光を完璧に弾く優れもの。吸血鬼の俺にはかなり便利なものだ。

俺はこれを買うことにした。

「つ、ついでにこ、これも…」
「ん?いいの?」
「お、幼馴染みよしみ。さ、サービス」

エリーから貰ったものは…『死んだふりが出来る薬』…まあ、いいや。ありがたく貰っておこう。

「パチュリーは何か欲しいものあった?」
「そうね…あれとこれとそれと……」

~五分後~

「あ、ありがとう…!!」

パチュリーは俺と二人で持ちきれないぐらい沢山の薬を買った。俺はそれを魔方陣の中に収納した。いや、本当魔方って便利。

「じゃあ俺たちはそろそろ行くね」
「またね、エリー」
「う、うん。ま、またね」

俺たちはエリーの店を後にした。
………………………………………
……………………………………
…………………………………

「おうお前ら!」「久しぶりだな!」

エリーに会った後、レイレウに会いに行った。レイレウは復興を指揮して、なんとそのままウェネフィクスの街長になってしまったのだ。

「お前らこそ元気そうでなによりだよ」
「どうだ?」「街の様子は?」
「人は減ってしまったけど…よくここまで復興したわね」

しかしお調子もののこいつらが街長ねぇ。……なんかやらかしそう。

「それほどでもないさ」「人を元気付けるために色んなことをしたなぁ」
「例えば?」
「ロケット花火大会とか」「枕投げ大会とか」

すでにやらかしてました。

「大変だったんだぜ?」「特に片付けが」

そりゃそうだろう。街中の花火の燃えカスやら飛び散った枕の中身を掃除するんだから。

「おお、そうだ」「ほれ、これ」

そう言ってレイレウは二枚のチケットを取り出した。

「これは?」
「街の復興する予算のためのチャリティーイベントのチケットだ」「余ったからやるよ。二人で見てこい」
「おー、ちゃんと街長らしいことしてるじゃん」
「「お前、俺たちを何だと思ってるんだよ…」」
「そりゃねぇ」「やんちゃなお調子もの」
「「真似してまで言うことか!」」

俺とパチュリーはレイレウの真似をして言ってやった。

「おっと」「そろそろ時間だ」
「そうなの?」
「わりぃな」「これでも忙しいんだ」
「そう、また会いましょう」
「「それじゃな」」
「「お前ら(貴方たち)こそ頑張れよ(りなさいよ)」」

………………………………………
……………………………………
…………………………………

レイレウに貰ったチケットでチャリティーイベントにやって来た。
悲しいがチャリティーイベントにはあまり人がいなかった。来ているのはお爺さんお婆さんばかりで若いのは俺たちぐらいなものだった。まぁ、来ない人の気持ちはわかる。

俺とパチュリーは最前席に座った。

開演時間になると金髪で肌の色は薄く、一見すると人形のような姿をしていて 、青のワンピースのようなノースリーブに、ロングスカートを着用し、その肩にはケープのようなものを羽織っており、頭にはヘアバンドのように赤いリボンが巻かれている女性と、同じような服装をした宙に浮いた二体の人形が出てきた。

「今日はお集まりいただき、ありがとうございます」
「シャンハーイ!」
「ホウラーイ!」
「私はアリス・マーガトロイド。この子達は上海と蓬莱です」
「シャンハーイ!」
「ホウラーイ!」
「先日は沢山の魔法使いが亡くなり、同じ魔法使いとして悲し……」

綺麗な子だなぁ。勿論、パチュリーが俺の中では一番だが。しかし、あれどうなってるんだ?人形が喋ったぞ?魔法を使って操ってるのはわかるけどそれ以上は何もわからん。

「……ます。それでは『ロミオとジュリエット』の人形劇をお楽しみ下さい」

マーガロイド…違ったっけ?呼びづらいからアリスでいいや。
アリスが操る人形はとても凄かった。人形は劇用と言うより、子供が遊ぶようなゴスロリ人形だがまるで生きているかのような動きをする。

「ああ、ロミオ様、ロミオ様! なぜあなたは、ロミオ様でいらっしゃいますの? 」

ただ、さっきみたいに人形は喋らず台詞は全て彼女が喋っていた。上海と蓬莱は終始シャンハーイホウラーイと言っていたので彼女の操る人形は言語は話せないのかもしれない。

「僕を恋人と呼んでください。さすれば新しく生まれ変わったも同然、今日からはもう、ロミオではなくなります」

でも、その事が気にならなくなるぐらい人形の動きが細かく、イキイキしている。

やがて物語が終わりに近付き、ジュリエットが薬で仮死状態になっていることに気付かず、ロミオは自殺してしまった。その時、俺は何となくエリーに貰った『死んだふりが出来る薬』を思い出した。

そして仮死状態が終わって目を覚ましたジュリエットはロミオが自殺したことを知り、ロミオの後を追ってロミオの短剣で自殺した。

「こうして、事の真相を知って悲嘆に暮れる両家は、ついに和解するのでした」

パチパチパチパチパチパチ

………………………………………
……………………………………
…………………………………

「ねえ、ちょっと」
「ん?」

劇も終わり、そろそろ紅魔館に帰ろうとしたときに劇をしていたアリスに呼び止められた。

「貴方たちは人形に興味があるの?」
「いや、君の人形を操る技術には興味あるけど、正直人形には…」
「あら、ごめんなさい。てっきりそうだと」

まあ、言っちゃ悪いがチャリティーか人形に興味がないと普通見に来ないよね。

「人形がどうかしたのかしら?」
「あ、えっと、私は完全自立型の人形をつくるのが目的なの」

なるほど、お爺さんお婆さんなら兎も角、俺らみたいな人がわざわざ人形劇を見に来るような人形好きなら何か知っているかも知れないと思ったのか。

「それで声をかけたってわけか」
「そうよ。人形には興味なかったのに見に来たってことはチャリティーかしら?」
「いや、違うわ」
「え?じゃあなんで…」
「この街の街長にチケットを貰ったんだよ」
「アイツ達とは小さいときからの知り合いなの」
「へぇ。そう言うこと」

銀時計を確認すると、そろそろ紅魔館で食事の時間に近付いていた。レミリア達を待たせちゃ悪いし、ここらで帰るか。

「あ、そろそろ俺達は帰るね。飯があるから」
「引き留めてしまってごめんなさいね。ええっと…」
「明希・ヘルフィ・水原。明希でいいよ」
「パチュリー・ノーレッジ」
「明希にパチュリー。今日はありがとう」
「いやいや。アリスの人形劇凄かったよ」
「目的達成できればいいわね」
「ふふ、ありがとう。それじゃさようなら」
 
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