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美しき異形達

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第八話 土の忍者その一

               第八話  土の忍者
 菊は二人に自分のことを話した、闘いが終わり学校に向かう中でだ。
「私のクラスとか部活のことはもう知ってるわよね」
「ああ、今さっき聞いてな」
「知ってるわ」
 そうだとだ、二人も菊に答える。
「二年C組でな」
「忍術部所属よね」
「そう、家は忍者の道場でね」
 このことも話す菊だった。
「ついでに言えば探偵業とかもやってるわよ」
「あれっ、道場だけじゃねえのかよ」
「今時ね、道場だけじゃね」
 ここで苦笑いになって言う菊だった。
「ちょっと経済的に不安だから」
「お金ねえのかよ」
「いや、結構お弟子さんは多いけれど」
「それでもかよ」
「そうなの、やっぱり不安なものがあってね」
 将来への不安であろうか、菊が言うことは。
「お父さん達探偵もやってるのよ」
「そうか」
「お兄ちゃん達と一緒にね」
「ああ、兄さんもいるのかよ」
「そうなの、三人ね」
 菊は自分の兄弟構成も話した。
「三人共忍者よ」
「それで菊ちゃんもか」
「そう、忍者でね」
「だから手裏剣とか忍者刀使ってるのか」
「そうなのよ。ついでに言えば私も孤児だったのよ」
 既に薊達のことは今の登校中に聞いている、そしてそれは自分もだというのだ。
「お兄ちゃん達はお父さんとお母さんの実の子だけれど私は養子なのよ」
「私と一緒ね」
 菖蒲がここで菊に応えた。
「奇遇ね」
「そうよね、力の持ち主が三人とも孤児ってね」
 菊自身も言うのだった。
「ついでに言えば私は生まれてすぐに伊賀の棟梁のお家に預けられたのよ」
「伊賀の棟梁って」
「そう、私の家の忍術は伊賀なのよ」
 甲賀と並ぶ忍者の代名詞となっている流派である。服部半蔵や百地三太夫といった忍者が有名である。
「棟梁さんのところにある人が預けに来たのよ」
「その誰かって誰だよ」
「それがわからないの」
 そこまではというのだ。
「棟梁さんも誰かわからなかったらしいわ。もっとも知っていてもね」
「言わないか」
「そうみたいね、どうやら」
「それで菊ちゃんは棟梁さんに預けられてか」
「神戸にいる私のお父さん達の養子に入れたのよ」
「成程な、そうなんだな」
 薊は菊の話をここまで聞いて述べた。
「菊ちゃんも孤児か」
「実の親はわからないわ」
 一切、という口調だった。
「けれどお父さんとお母さんがいてお兄ちゃん達がいてね」
「家族はいるんだな」
「実の家族よ」
 今やまさにというのだ。
「生まれてすぐに育ててもらってるからね」
「いい人達なのね」
 菖蒲は菊の明るく話す横顔を見ながら言った。
「禄存さんのご家族は」
「菊でいいわよ」
 菊は今度は菖蒲に顔を向けてこう返した。 
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