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心は王様で

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第四章


第四章

 余裕を見せてそうしてだ。美女と共に豪華なホテルに向かったのだった。その次の日だ。
 彼は満足した顔でカジノにまた出た。そしてだ。
 そのうえでだ。こう言ったのだった。
「じゃあ今日もまた遊ぼうか」
「また勝とうって思わずにか」
「そう思うんだな」
「そうだよ。遊ぼうよ」
 その生業もだ。あえて周囲にこんな感じで言ったのである。
「これからね。今日はルーレットをしないか?」
「ルーレット?」
「今日はそれか」
「そう、それをしないかい?」
 昨日はポーカーで今日はそれだとだ。アハマドはいつもの飄々とした感じで周囲に話したのだ。
「そうしないか?」
「ところでな」
 ここでだ。一人がだ。アハマドに問うてきたのだった。
「昨日どうだったんだ?」
「ああ、あの美人さんだね」
「あの人とはどうだったんだよ」
「うん、楽しかったよ」
 やはり感情は派手に出さずにだ。アハマドはこう答えたのだった。
「とてもね」
「それだけか?」
「うん、女の人も好きだからね」
「その割にあまり嬉しそうじゃないな」
「女の人を楽しむのもね」
「やっぱりか?」
「そう。溺れたらそれで終わりだからね」
 ギャンブルで勝とうと思ってはいけないこととだ。同じだというのだ。
「そうしているんだ」
「何か遊ぶのも大変なんだな」
「勝とうと思ったり溺れたりしたら駄目なんだな」
「王様でいるってそういうことか?」
「まあそうかもね」
 飄々とした感じはそのままで。アハマドはそう言う周囲に答えた。
「王様。俺達の王様は俺とはまた違うに決まってるけれど」
「陛下は立派な方だからな」
「だからな」
「俺とは違うさ。けれどね」
 だがそれでもだというのだ。心が王様であるということは。
「まあ色々とね。あるね」
「王様の心でいるのも大変なんだな」
「欲を出したら駄目だからか」
「そういうことか」
 周囲はアハマドの言葉を聞いてわかったのだった。彼はかなりのものを捨ててギャンブラーをやっていて王様の心を持っているということをだ。そのことがわかってだ。
 彼にだ。こう言ってきたのだった。
「よし、じゃあ今日の昼は一緒に食うか」
「今日は奢るぜ」
「美味いもの食おうな」
「うん、それじゃあね」
 アハマドは彼等のその申し出にも微笑みで応えた。そうしてだった。
 彼は王様の心で周囲との昼食も摂るのだった。その馳走は確かに美味い。しかしだ。
 彼はここでも派手な感情は見せず淡々としていた。王様のままだったのだ。


心は王様で   完


                   2012・3・1
 
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