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女侠客

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第四章

 おみよはわかった、寺子屋は非常にいい雰囲気だとだ。
 そしてそこから奥田の気質もわかった、噂通りの人物だった。
 それで機会があれば日本橋に行ってそのうえで奥田を見て彼の噂を聞いていた。しかしその中でだった。
 田宮からだ、こんな話を聞いたのだった。
「最近日本橋も物騒なんだよ」
「何か出るのかい?」
「ああ、夜盗がな」
 それが出るというのだ。
「追い剥ぎみたいな感じでな、しかも何人もな」
「それはまずいね」
「だからこっちも最近は夜にも見回りをしてるよ」
 眠たそうにだ、田宮は目をこすりながらおみよに話す。
「ったくよ、悪い奴がいるな」
「殺された人とかはいるかい?」
「それはまだ出ていない」
 田宮はそれはまだないと答えた。二人は今も店で蕎麦を食べつつ話している。
「いいことにな」
「それは何よりだね」
「ただな、何人も寄ってたかって刃物を持ってだからな」
「何時殺される人が出るかわからないんだね」
「ああ、人が殺られる前にな」
 その前にだというのだ。
「連中を捕まえないとな」
「最悪の事態が起こる前にだね」
「そうだよ、それで日本橋だからな」
 田宮は蕎麦をすすりつつおみよにこの場所だからだと話した。
「頼りになる浪人にも協力してもらうことになったよ」
「っていうと」
 おみよはこれだけでわかった、日本橋でしかも腕が立つ浪人と言えばだ。
「まさか」
「んっ?心当たりがあるのかい?」
「若しかしてあの人かい?」
 何気なくを装ってだ、おみよは田宮に言う。おみよもまた蕎麦を食べている。二人共江戸の人間らしく蕎麦を勢いよくすすっている。
「奥田とかいう」
「そうだよ、その人だよ」
 まさに彼だった、おみよが思った通り。
「あの浪人さんに頼んでな」
「それでなんだね」
「連中の退治を頼んでるんだよ」
「そうかい」
「ああ、夜の見回りはあの人もやってるさ」
 そうなっているというのだ、今の日本橋は。
「夜盗共を成敗して欲しいものだよ」
「そっちも頑張るんだね」
 奉行所もだとだ、おみよは内心思うことを隠しながら田宮に返す。
「一人も逃がすんじゃないよ」
「わかってるさ、まあ悪い奴等は許さないからな」
 田宮は同心としてこのことは約束した。
「我等は頑張っている」
「気合入れていきなよ」
「うむ」
 田宮はおみよの言葉に頷いた、しかし彼はおみよの気持ちには気付いていない、おみよが最近しょっちゅう日本橋に行っていることも。
 それでだ、おみよは田宮と話した後籐次に今の日本橋のことを彼からも聞いた、籐次は日本橋に知り合いがいるのだ。
 彼が話すところによるとだ、今の日本橋は。
「もうね、夜になりやすと」
「夜盗が出てだね」
「そうでやんす、追い剥ぎに逢うんで」
 それでだというjのだ。
「誰も出歩けないんでやんすよ」
「まだ誰も殺されてないんだね」
「それはそうでやんすが」
「随分タチの悪い連中だからだね」
「逢えばどうなるかわかりやせんよ」
 籐次は眉を顰めさせておみよに話す。
「光りものを持って周りを囲んで寄ってたかってでやんすから」
「金を取って行くんだね」
「はい、若しちょっとでも歯向かう素振りを見せれば」
 その時はだった。 
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