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美しき異形達

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第六話 水と氷その十

 それぞれ怪人の左右に回り込んだ、薊は怪人の左手の方に菖蒲は右手の方に回り込んでだ。そのえうでだった。
 怪人を斜めの方から攻めようとする、だが。
 怪人は二人を的確に見ていた、顔の横についている蛇の目でそれぞれ二人を見つつ言うのであった。
「見えている」
「ああ、蛇だからな」
「それぞれの目で見えるのね」
「蛇の武器は毒と素早さだけではない」
「その視界もか」
「そうなるわね」
「そうだ、そのことは覚えておくことだ」
 視界のことをここで言う怪人だった。
「蛇を侮らないことだ」
「そういうことね。けれど」
「それでもか」
「私もそのことはわかっているわ」
「あたしもな」
 薊も笑って言う。
「私達をそれぞれ同時に見られることは」
「蛇のことはわかってるんだよ」
「だからね」
「そのことは自慢しなくていいぜ」
「そうか、別に自慢はしていないがな」
 その能力のことは話したというのだ、そうして。
 怪人は攻撃に転じた、それぞれの手に二本ずつ持っている蛇の身体の鞭でだった。
 二人を襲う、薊を左手の二本の鞭が来た。その鞭に対して。
 薊はまずは一本目を棒の先で弾き返した、しかし。
 そこに二本目が来る、それが脚、太腿のところを打った。薊はその一撃を受けてくっ、と苦い顔になって言った。
「結構効くねえ」
「鞭は馬鹿に出来ないわよ」
 菖蒲も鞭を防いでいる、彼女は一撃は受けていないがそれでも攻撃を受けた薊に対して言うのだった。
「ダメージは大きいわよ」
「だよな、結構以上にな」
「鞭の速さは音速を超えるわ」
 振ったそれはというのだ。
「しかもその太さ、重さがあるから」
「相当効くんだな」
「そうよ、けれどね」
「けれど。何だよ」
「今の一撃は普通の人間なら脚を砕かれていたわ」
 太腿の骨、つまり大腿骨をだというのだ。
「直撃だったし」
「ああ、結構効いたよ」
「本来は結構どころではないわ」
 そこまでダメージを受けているというのだ。
「それで痣にもなっていなくて」
「痛いことは痛いぜ」
 薊もそのことは言う。
「結構な」
「だから痛いどころでは済まないわ」
 また言う菖蒲だった、ここでだった。 
 菖蒲は左手の甲に一撃を受けた、だが彼女もだった。
 痛みは感じた、しかしだった。
「骨までは何ともないわ」
「そっちもかよ」
「怪人の力は明らかに普通の人間の何十倍もあるけれど」
「鞭もだよな」
「ええ、それでもね」
 その力で振った明らかに普通のものではない鞭を受けてもだというのだ。
「痛いことは痛いけれど」
「骨は何ともないか」
「動かせるわ」
 実際に左手の指を握って開いて動かしての言葉だった。 
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