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東方魔法録~Witches fell in love with him.

作者:枝瀬 景
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15 復讐~The beginning of the end.

 
前書き
鬱注意 

 
ドサッと崩れ落ちるような音に気がついたシェルとフラウが玄関を覗き込むと、修造、エドワード、ベル、レイとレウ、エリー、負傷して連れてこられた華人小娘、服だけ血まみれのパチュリーが明希の家の玄関で倒れていた。勿論、その家の一員である明希のの姿はない。

慌てたシェルとフラウが駆け寄るが、修造にエドワードとベルはフラフラとしながら立ち上がって自分達よりも華人小娘とパチュリーのことを頼むと言った。
二人の姿を見た母親二人は再び驚いた。華人小娘の方は今すぐには死なないが、このまま何の手当てもしないと出血多量で死んでしまう程度の傷を負っている。そして何よりも、端から見れば死体のような出で立ちのパチュリーに驚き、何があったのと問い詰めた。明希がいないことも含めて。

だが、まずはこの二人を休ませるのが先だと言って、修造はレイを、エドワードはレウを、ベルはエリーに肩を貸し、リビングに向かった。その言葉に従い、シェルとフラウも死人のような二人を抱え運んでいった。

………………………………………
…………………………………
……………………………

瞳からは光が失われ、されるがままのパチュリーを椅子に座らせ、華人小娘の手当てをしたシェルとフラウは回復した修造、エドワード、ベル、レイとレウ、エリーを問いただした。

「一体何があったの」
「明希とパチュリーちゃんに何があったの」

修造とエドワードは言いにくいのか、口を開け声を出そうとしてそれを呑み込み黙って、だけれども言わないといけないと思っているのかまた口を開け、声を出そうとするが、また呑み込んでしまう。
それを何回か繰り返してベルが見かねて代わりに説明した。

「ウェネフイクスがマロウ家に教われました。そのとき、マロウ家の当主であるマロウに

明希君は殺されました

それを見たパチュリーちゃんはあんなふうになってしまいました」

殺された。その言葉を聞いたシェルとフラウは茫然とした。実感がないのだ。
修造とエドワード、レイとレウはベルが放った一言に改めて明希が死んだことを思い起こさせられ、悔しさで強く握りこぶしを作り、歯を強く噛み締めた。エリーはじんわりと涙を浮かべ声を殺して泣いた。

「殺されたってどう言うことよ!?」
「言った通りです。僕達が駆けつけた時には明希は血を流して倒れてました。パチュリーちゃんは明希を揺すっていたけど何の反応も無かったです」

明希が死んだ。その事を認識した母親であるシェルは泣き崩れ、フラウは我が子同等のように思っていたので、シェルと一緒に悲しんだ。

明希のいなくなった明希の家では悲しみが溢れていた。










物心ついた時から私は魔力に憧れ、魔法の練習ばかりしていたが一向に上達しなかった。それどころか魔力とやらが感じられなかった。
訝しんだ私は親に聞いてみるとお前は魔力を消す魔法使いの出来損ないだと言われてしまった。

私は激しいショックを受けた。親にそんなことを言われたのもあるが、魔力を消すと言うことは魔法が使えないと言うことを意味する。何よりも、魔法が使えないと言うことにショックを受けた。
すぐには信じられなかったが私の周りで魔法が消えることを思い出し、それが真実だと悟った。

以来、私は魔法に執着した。ウェネフイクス魔法学園に入学出来なかったことがとても悔しかった。何の苦労もなく魔力を持っている奴等に嫌悪感も抱いた。同時に、魔法の真似事であるマジックにも没頭した。どうしても普通では起こり得ない現象を自分で体現したかったのだ。

やがて両親が死に、一人息子だった私が家督を継いだある日のこと。生前、父親が私を頑なに立ち入らせようとしなかった書庫で、私は魔力を消す体質を治す方法が書かれた書物を見つけた。
この書物を見つけた時、私は狂ったように喜んだ。と、同時に父親を憎みもした。なぜ私にこの書物を見せようとしなかったのかと。
早速儀式に取りかかったが、その儀式には到底、並みの魔法使いでは集められない量の魔力を必要としていた。魔力がない私だけでは一生かかっても集められない。そこで私は悪魔と契約することにした。儀式を成功させるため、強力な力を持つ者の協力が必要だったからだ。

魔法を使えない私が当主になってしまったため、今ではすっかりと衰えてしまったマロウ家だが、マロウ家には悪魔と契約する環境ぐらいは残っていた。悪魔は正しい手順を踏めば何の力もない人間にでも召喚することは可能だ。なら、魔力を持たない私でも召喚することができるはずだ。

なぜ人間が悪魔を呼び出すことに失敗しやすいのかと言うと正しい手順を殆んど知らないからだ。その点、うちには降魔の本が大量にある。問題があるとすれば相手をあまり選べないところか。

召喚は問題無く成功し、名のある家の吸血鬼と契約することに成功した。
悪魔と契約するにはそれ相応の代価を必要とする。儀式を成功するまで誰にも邪魔させないという代価に、腕の一本ぐらいは覚悟していたが、この少女は奇妙なことを代価とした。

「妹をこの館の地下に幽閉させてもらえないかしら?」

姉妹の仲に何があったのかは知らないが俺には関係ない。こんな簡単な代価で拍子抜けしたが私は快諾した。

「あと、私と従者一人ここに住んでもいいかしら?まさか呼び出しておいて、こんな美少女をほったらかすつもりは無いわよね」

それは御願いという名の強迫観念では?まあ、この館に一人や二人増えたところで変わらない。これも了承した。
吸血鬼とその従者が加わったことで魔力は順調に集まった。

そんなある時、契約者の吸血鬼が明希とパチュリーとか言う魔法使いとその家族には手を出さないで欲しいと言ってきた。契約ではないので断ることが出来るのだが、そこはあえて約束を守ることにした。そうしないと私の願いに影響すると思ったからだ。

それから何年か過ぎ、明希とパチュリーという人物が海にいるということを吸血鬼から聞き、実際に視てみることにした。手を出す出さない以前に、今更ながらその二人を見たことはないのだ。吸血鬼の方は行きたがっていたが海は苦手らしく着いてくることは無かった。

私は偶々やっていたショーに飛び入り参加させてもらった。いやはや、こんなところでマジックを披露出来るとは思わなかったよ。目的を忘れてマジックをするのに夢中になって二人が偶然、私のショーを見に来た時は焦った。
慌てて、しかしポーカーフェイスで二人に近付いた。パチュリー君の方は寝ていたが明希君と話すことは出来た。
なかなか有意義な話で楽しむことが出来た。

約五年後、儀式の準備が整い私は吸血鬼の従者を引き連れて学園に乗り込んだ。そこで偶然……いや、ここまで来れば何か因縁か宿命があるのかも知れない。また彼らに出会った。
彼らは私に向かって魔法を放って私を止めようとしてきた。始め、私は彼らをどうこうするつもりは無かった。しかし、儀式の時間が迫るにつれ、私の心は焦りと期待と待ち遠しい心で一杯になり、段々と彼らが目障りになってきた。

儀式はもう少しで出来るから約束なんてもう守る必要なんてないし、何よりも儀式の時間に影響しないかと不安になり怒り、焦っていた。殺して魔力を奪うのも良いと思ったので、私は隠し持っていた剣で彼らを皆殺しにすることにした。
近くにいたパチュリー君を刺そうとしたが明希君がそれを庇った。問題無い。どうせ皆殺しだ。

吸血鬼が見張りにつけた従者がうるさかったので彼女も切り裂いた。だが、体術を得意とするだけあって即死まではいかなかった。
そこに明希君とパチュリー君の父親らしい人がやって来た。同時に儀式の準備が整ったので、私はいよいよ私の体質を治す儀式を始めた。

膨大な魔力が私の中を流れるのを感じる。私の体質が魔力を打ち消すが、私に流れ込む魔力の量は圧倒的で打ち消すことが追い付かなくなって、やがて私の魔力を消す体質が改善された。

私は歓喜し、私の儀式から逃れた彼らに向かって魔法を試すことにした。だが、いきなり魔法が上手くいくわけがなく、逆に反撃を受けてしまった。しかし、私の体質が魔力を打ち消した。

これは私も驚いた。完全に魔力を消す体質は無くなったと思っていたが、どうやら治ったのは私の魔力を打ち消しすことだけらしい。
これは都合がいい。私は魔力を使えるが相手の魔法は効かないということだ。
今は魔法は使えないが降魔館(紅じゃないのはわざと)に帰ってから練習すればいい。そう思って持っている剣で皆殺しにをしようかと思ったが、そこのドアから逃げたようでもういない。私は降魔館に帰ることにした。

私は降魔館に戻って魔法の練習を沢山した。お陰でいくつか魔法を使えるようになった。
楽しい。楽しい過ぎる!魔法はなんて素晴らしいんだ!!

「ふは、ふはは、ふははハはハハハはははハはははぁぁぁ!!!!!!」

悪魔を降ろす館で笑い声が響く。










「そうだ、パチュリーちゃん。これ…」

ベルは戦いの最中、落ちていた明希の銀時計を拾っていた。それをパチュリーの手のひらに乗せ、握り締めさせた。
その形に覚えがあったようで渡された瞬間、それまで何も反応が無かったパチュリーがピクッと動いた。鈍い光を放つ銀時計のある手元にゆっくりと首を動かし、ぼんやりと滲んで映る自分の姿を見つめた。

しばらくじっと見つめ続け、やがてパチュリーの目に光が戻る。そして口を開いた。

「何であの男は生きているのよ…」

その言葉にハッとして部屋にいる一同は顔を上げた。

「復讐なんて虚しくなるのかも知れない…でも!私はあの男がのうのうと生きていることは許せない!」

パチュリーの顔は無表情だが復讐に燃えていた。

「そうだな……カタキを生かしておくほど俺は優しくない。明希はそんなことを望まないかも知れないが俺はあいつを許すつもりは無い!」

修造がパチュリーの復讐に賛同した。

「ふふふ……子供を殺されて黙っている親がどこにいるもんですか……!」

シェルも復讐に参加する。

「明希君は俺の子供も同然だ…俺も奴は許さない…!」

エドワードも決意する。

「私も…と言いたいところだけど…私は戦いに向いていないわ…ここで待っているわ。きっちりとっちめて来なさい」

フラウは同意するも、帰ってくる場所で待っていることにした。

「俺達も…と言いたいとこだが…!」「俺達は悔しいが足手まといだ…!」
「ぜ、絶対か、カタキを打って来て……!」

戦闘経験の乏しいレイとレウ、エリーは自分達は足手まといになると判断し、待つことにした。

「僕も微力ながら参加させてください…!」

自分が早く着いていたら防げていたと思い、後悔していたベルも参加する。

「それなら…私が案内しますよ…」

ベットで話を聞いていた華人小娘が、のそっと起き上がり案内役を買って出た。

「あら、あなた…もう傷はいいの?」
「私は気を操って傷の治りを早めることが出来ます。手当て、感謝します」
「いいのか?お前はマロウ側だろ?」
「紅美鈴です。美鈴とお呼びください。もうあの方に協力する義理は無くなりました。少なくとも敵ではありません」

嘘をとてもついているようには見えなく、何よりもマロウに攻撃されたことは一同を信用させるのに十分だった。

「首を洗って待ってなさい」

パチュリーは銀時計を強く握り締めた。 
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