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ドリトル先生と京都の狐

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第五幕その七

「ちゃんと他の部分に火が回らない様にしてね」
「それで文字になる火を点けてなんだ」
「夜に出すんだ」
「そうだよ、大文字焼きとかをね」
「へえ、そうなんだ」
「そんなことをするんだ」
「そうなんだ、京都の伝統行事の一つをする山なんだ」
 それがこの如意ヶ獄だというのです。
「京都の名所の一つだよ」
「京都は名所の多い街だね、本当に」
 王子の説明を聞いてです、トミーはしみじみとした口調で言いました。
「山に火を点けるなんて」
「イギリスにはないよね」
「いや、日本だけじゃないかな」
 それで山に文字を出すことはというのです。
「そんなことをするのって」
「そうかもね、こうしたこともね」
「日本は本当に凄い国だよ」
 しみじみとして言うトミーでした。
「色々な独自のものがあるよ」
「というかそういうことが多過ぎるかな」
「そうだね、物凄く多いね」
「そうしたことを考えれば」
 ここで王子は長老を見ました、それで言うことは。
「九尾の狐さんも普通かな」
「ほっほっほ、千年生きておる狐でもじゃな」
「はい、仙狐ですよね」
「そうじゃ、仙術も備えておる」
 実際にそうだというのです。
「千年生きておると誰でも使えるぞ」
「千年生きるなんてないですからね」
 そもそもこのこと自体がありません。
「それが」
「だからじゃな」
「うん、普通じゃなですいよ」
 到底だというのです。
「どう考えてもね」
「千年生きるにはコツがあるのじゃがな」
「そのコツがもう」
 やっぱり普通ではないというのです。
「長老さんにしても」
「それはそうじゃがな」
「けれど日本は、特に京都は色々と独自のものが多過ぎて」
「わしも普通に思えるか」
「そう思います」
 こう言うのでした。
「普通なら信じられないことですが」
「確かに色々なものがある街じゃがな、昔から」
「ですよね、やっぱり」
「わしも京都の霊力を浴びて長寿を得てじゃった」
「九尾の狐になられたんですね」
「そうなのじゃよ。それでじゃが」
 ここまでお話してです、長老は皆に言いました。
「ここの素はあれじゃ」
「あっ、あれなんだ」
「あの木の実がそうなんだ」
「そうじゃ、あの柿の実じゃ」
 山の中に一本の柿の木があります、その柿の木の枝に柿の実が一つあります。一見すると普通の柿の実なのですが。
 長老はその柿の実を指差しながら皆にこう言います。
「あれが素じゃ」
「じゃあ今すぐにですね」
「取るんですね」
「それじゃあ今度は僕が」
 チーチーが名乗り出ました。
「木の上まで登って取ってくるよ」
「猿には木じゃな」
「だから」
 それでだというのです、そしてです。
 すぐにその柿の木に登ってでした、チーチーはその柿を取りました、これまた一つ素が手に入りました。そして。
 またすぐに移動しました、そこはといいますと。
 とても立派な木造の五重の塔にです、立派な金堂があります。
 その五重の塔をです、皆まずは呆然となって見上げました。 
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