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HEATS

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第二章


第二章

 観客達の拍手だ。そしてその中には。
 日本から駆けつけた日本人達もいた。その彼等は。
 日の丸を振りだ。こう叫んでいた。
「頑張れ!」
「応援してるぞ!」
 こうだ。彼等に声を送る。その声を受けてだ。
 彼等もだ。恍惚とした笑顔で言うのだった。
「よし、やるか」
「このロンドンでこの人達に見せような」
「俺達の戦い」
「そして心を」
「ああ、やってやるさ」
「絶対にな」
 こう誓い合い開会式に出ていた。そしてだ。
 彼等はそれぞれの戦いに趣いた。古代から続く人の戦いに。そしてそれを見て。
 遠い日本ではその都度だ。熱狂的な声があがった。
「やった!勝ったぞ!」
「奇跡だ!」
「よくやってくれた!」
「見事!」
 こうだ。テレビやネットを観つつ歓声をあげる。それは彼等が破れても同じだった・
「負けたけれどな」
「ああ、それでもな」
「いい勝負だったよ」
「よくやってくれたよ」
 こうだ。暖かい声でその健闘を讃える。戦いの間それが止むことはなかった。
 そして戦いが終わり閉会式となった。その時にだ。
 有終の美を飾る儀式が行われた。それを観ながらだ。
 選手達も国民達もだ。満ち足りた気持ちで言うのだった。
「終わったな」
「ああ、長いようで短かったな」
「この大会もよかったよ」
「皆よくやったよ」
 勝敗を超えたものを見た人間の言葉も出た。
 そしてその言葉と共にだ。彼等はこんなことも言った。
「また四年後だな」
「ああ、四年後またな」
「今度はブラジルだよ」
「ブラジルだ」
 次のオリンピックのこともだ。ここで話されるのだった。そしてだ。
 次の戦いに思いを馳せる。その中で閉会式を迎えたのだった。
 戦士達を乗せた飛行機は日本に戻った。すると。
 空港に来ていた観客達がだ。満面の笑みと万雷の拍手で迎えたのだった。
「御帰りなさい!」
「頑張ったね!」
 こう笑顔で言って迎える。その笑顔と拍手を受けて。
 戦士達は今生きてきた中で最も満ち足りたものを感じていた。そして言うのだった。
「また。出られたら」
「次のオリンピックに出られたら」
「また頑張ろう」
「この人達の為に」
「俺達の為に」
 日本人としてだ。彼等はこのことを自分達に誓い合うのだった。戦いは終わったがそれはまた新たな戦いのはじまりだった。その戦いにだ。彼等は想いを馳せてそれに向かいはじめていた。


HEATS   完


                  2012・2・5
 
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