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鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―

作者:achi.
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伍_週刊三途之川
  三話

 かくしてこの日は、胡散臭い猫又記者を撃退した。
鬼灯はミヤコに『もしまた何かあれば奪衣婆と言えばいい』と、まるでおまじないのようなことを教えてくれた。
奪衣婆とは何かよくわからなかったので、昼食時に一緒だった唐瓜に尋ねると、三途の川の辺りにいて亡者の服を剥ぎ取るのが仕事のおっかない婆さんだと説明された。
ここ最近ではヌード写真集を発売したらしく、ネットで密かに話題になっているらしい。
ひょっとするとミヤコも、完全に亡者だと間違われていたら衣服を引っぺがされていたかも知れない。
衣服を剥ぎ取られて全裸のままだと、いろいろと問題のある状況が生まれるので、亡者は基本的に白い着物に着替えることになるそうだ。

「そういや、鬼灯様はまだ昼休憩じゃないんだな」

唐瓜が味噌汁をすすって言った。

「うん。まだ仕事があるみたいやねん」

「官吏ともなると大変だな」

「そうやな。というか、いつも唐瓜と一緒の茄子もおらんやん」

「ああ、あいつまた武器庫の記録ミスで、まだやってんじゃないか?この後、俺も手伝いに行くんだ」

「ふうん」

「てなわけで、お先!」

唐瓜はそう言うと、さっさと食器を片付けて行ってしまった。
ミヤコは一人になったが、まだ昼休憩の時間はたっぷりある。テレビの電源を入れた。

『本日のお客様は人気急上昇中のアイドル、ピーチ・マキさんです!』

「あっ、この子、ほんまよう見るわ」

というか地獄にも、現世と似たり寄ったりなトーク番組があるのか。
画面の向こうには、ピンク色でフリフリのレースやリボンの飾りの付いた着物を身にまとった、ピーチ・マキがニコニコして立っている。

「この子もあの小判って猫記者に苦労してるんやろなあ。芸能人のゴシップ記事って、その後の芸能人生に関わるもんな」

まあ、話題になるというのはよくも悪くも注目されいている証拠である。

『いやー、やっぱり可愛いですね!最近、お忙しくなって大変じゃないですか?』

『ありがたいことですね。この頃は新しいジャンルのお仕事にも挑戦させていただいて、とても充実しています』

『金魚草コンテストでの、あの鳴き声の真似が素晴らしかったですもんね』

『は、はい。金魚草大使にも就任させていただいて、ほんと』

金魚草コンテスト?金魚草大使?この子、どこへ向かう気なんや。
ミヤコはすっかり食事を終えていたが、思わずその番組に釘付けだった。
現世にも、可愛い顔してバラエティ番組で水中に落下したりパイまみれになっていたり、ロシアンルーレットで激辛の饅頭なんかを食べたりしているが、地獄のアイドルも大変らしい。
 
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