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機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~

作者:setuna
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第十八話 すれ違う気持ち

 
前書き
撃墜されたハイネと爆発に巻き込まれた技術スタッフ。
記憶を取り戻したアレックスは何を思う…?
オリキャラ登場 

 
帰還したアレックスは急いで医務室に向かう。

アレックス「ハイネと巻き込まれたスタッフは!?」

医務室の前に立っているシンとレイ、ルナマリア、ステラ、ナオトに気がついたアレックスが声をかけた。

レイ「中に入ったきり、まだ治療中のようです」

アレックス「そうか…。」

答えたレイと一緒に沈黙を保つ扉を見つめた。
思えば、自分が医務室の前で仲間の心配をするのは初めてだということに気がついた。
みんな戦場で散って逝った。

アレックス「くそ…俺がキラを…フリーダムを止めていればこんなことには…」

ナオト「っ…アレックス、記憶が…?」

アレックス「ああ、思い出したよ…何もかも」

ナオト「そっか…」

ナオトはそれを聞くとまた俯いた。

ステラ「ナオト…?」

ナオト「私のせいだ…」

ルナマリア「え…?」

ナオト「私がフリーダムに挑まなきゃハイネは…こんなことに…!!」

アレックス「っ、違う!!」

シン「そうですよ!!あれはナオトのせいなんかじゃない!!あのフリーダムが目茶苦茶にしたせいで!!」

ナオトが自己嫌悪に陥りながら言う言葉にアレックスとシンが思わず叫んだ。

レイ「確かにあの場でフリーダムに挑まければハイネは無事だったかもしれない」

ルナマリア「ちょっとレイ!!」

レイの言葉にルナマリアが非難の視線を向ける。
ステラも泣きそうな表情でレイを見つめている。

レイ「だが戦場を混乱させ、こちらに多大な被害をもたらしたフリーダムを放っておくことなど出来るわけがない」

それはナオトの行動を擁護するものだった。
レイの表情を見れば、普段あまり表情の起伏が激しくないレイの眉間に深い皴が刻まれていた。

レイ「ナオトのしたことは間違いではありません」

ナオト「……」

アレックス「…くそ!!」

アレックスが怒りのままに壁に拳を叩きつけた。

アレックス「戦争は…戦争はヒーローごっこじゃないんだぞキラ!!」

ルナマリア「あ、あの…」

アレックス「…?」

ルナマリア「…その……」

アレックスがルナマリアの方を見遣るがルナマリアは口を開いたり閉じたりを繰り返している。
どちらの名前を言えばいいのか分からないのだろう。

アレックス「今まで通りアレックスでいい…」

ルナマリア「は、はい…」

シン「あいつらが変な乱入して来なきゃこんなことには……大体何だよあいつら!!戦闘を止めろとか。あれが本当にAAとフリーダム!?本当に何やってんだよオーブは!!馬鹿なんじゃないの…?」

ステラ「あのMS…怖い…」

身体を震わせながら呟くステラにシンは彼女の手を握り締める。
沈黙を保っていた扉が開いた。

「技術スタッフとハイネ・ヴェステンフルスの治療は無事終わりました」

医師の言葉に安心したが、技術スタッフは防護するようなものが何もない状態で爆発に巻き込まれた。

アレックス「技術スタッフの復帰は……」

「難しいでしょうね……治療したとは言え、彼らは寄港次第病院に搬送しなくてはいけません。それと、ハイネ・ヴェステンフルスに関してですが」

アレックス「彼も?」

「いえ、彼の悪運と身体の強さには参りますね」

シン「え?」

技術スタッフの様子にハイネも、と思ったのだが、医療スタッフの苦笑と共に言われた言葉に6人は目を丸くした。

「確かに左足と肋骨の骨折がありますが綺麗に折れていたから、治るのは早いでしょうし、治ったらより丈夫になりますね。意識がなかったのは衝撃で気を失っていただけらしいです。今は眠っていますが、目が覚めたら会話は可能ですよ。本人も治り次第戦線に復帰するって言ってましたから」

ナオト「ハイネ…良かった」

安堵により腰が抜けたのか、ナオトはへたりこんだ。
シン達も安堵の溜め息を吐いた。

「さ、君達もちゃんと休みなさい。パイロットは身体が資本ですから。大きな怪我がなくともMSの操縦とは疲労が大きい。これは医師としての忠告ですからね」

アレックス「はい、寄港するまで新しい任務は降りないだろう、しっかり休んでおけよ」

アレックスの言葉に全員が返し、ひとまず解散となった。














































部屋に戻ったアレックスはシャワーを浴び、ベッドに寝転んだ。
本来であれば無茶な操縦をしたセイバーのチェックをしておかなくてはいけないが、今回は整備班に任せることにする。
他に気になることがあり過ぎる状態で精密なチェックをしたところで後々穴が見つかるのがオチだ。

アレックス「AAと連絡を取るべき……かな?」

記憶を取り戻した今なら彼らの考えは朧げに分かるが、行動が結果に繋がるとは思えない。
それに、色々と言っておきたいこともある。

アレックス「………」












































少しだけ考えが纏まると離艦の許可を貰いに艦長の元に向かった。

タリア「ミネルバを離れる?」

アレックス「はい。ミネルバが修理を終えるまでには戻ってきます。AAと…彼らと話をしてこようと思います」

タリア「許可出来かねる内容ね」

タリアは顔の前で手を組みアレックスを見上げる。
何故今なのかと思う心と同時に今だからこそだろうという思いもある。
AAはミネルバを撃った。
それは変えられない事実であり、ミネルバを撃ったということはアンノウンからエネミーに変わるということだ。

アレックス「戻り次第音声記録と共に報告書を提出します」

タリア「……わかったわ。許可します」

FAITH権限を持ってしてでも行くのだろう。
タリアは溜め息とともに許可する。

アレックス「ありがとうございます。それでは失礼いたします」

タリア「それとアレックス。」

アレックス「?はい」

タリア「ハイネの機体が大破したから近いうち、ハイネの代わりの人材がジュール隊から来るらしいの。ジュール隊長曰くとんでもないじゃじゃ馬らしいわ」

アレックス「じゃじゃ馬…ですか?」

タリア「ええ、今日の正午辺りにミネルバに来るらしいけれど…」

アレックス「分かりました(あのイザークがじゃじゃ馬と言うなんて…)」

アレックスが出ていくのを見た後、タリアは通信機に手を伸ばした。

タリア「アーサー、ルナマリアを呼んできて頂戴」










































部屋へ戻ったアレックスは唯一の私服に着替え、セイバーに乗って街へ向かった。
降り立った街は穏やかな平和な空気を持っていた。

アレックス「さて…まずは情報を集めないとな。AAを見た人はいるはずだ。」

アレックスは平和な空気を感じながら歩き始めた。

アレックス「ん?」

しばらく街を歩いていると、アレックスの足元にボールが転がってきた。
アレックスはボールを拾うと、辺りを見回す。
ここから少し離れた場所では、子供が何かを探しているかのように辺りを見回していた。

アレックス「これ、君のか?」

アレックスはボールを子供の元まで持って行くと、子供は嬉しそうに受け取った。

「お兄ちゃん。ありがとう」

アレックス「いや」

アレックスの方を何度も振り返りながら走っていく子供を見送ったアレックスに楽しそうにこちらを見ていた少女が声をかける。

?「お久しぶりね、アスラン・ザラ」

アレックス「ん?あ、君はミリアリア・ハウ?」

2人だけで顔を合わせるのは初めてであったが、先ほどの子供とのやり取りを見ていたミリアリアはどこか微笑ましそうにアレックスを見ていた。

アレックス「驚いたな。君はどうしてここに?」

ミリアリア「私、今はフリーのカメラマンなの」

アレックス「そうなのか…ところでミリアリア。AAの行方を探しているんだが、君は知らないか?」

ミリアリア「…出来るわ。だけど、キラ達にあなたはザフトとして?それともキラの親友として?」

アレックス「え?ザフトとしてだったら戦場で対峙することになるだろうな。今は親友として、政治を知る者として。かな…」

キラ達の行動がオーブの政治的立場を変える。
出来れば会ってそれに気付かせてやりたい。

ミリアリア「政治を知る者?」

首を傾げるミリアリアにアレックスは頷いた。

アレックス「俺は最高評議会議長であり、国防委員長となったパトリック・ザラの息子だからな。それにいつかはギル…議長の役に立ちたいと思うから、今は一から政治の勉強中さ。議長に俺の助けは必要ないだろうけど」

苦笑しながら言うアレックスにミリアリアも笑みを返しながら口を開く。

ミリアリア「そう……分かった。連絡を取るわ」

アレックス「すまない」

感謝するアレックスにミリアリアは随分変わったと感じた。







































ミネルバに補充パイロットが来るらしいと聞いたシン達はMSデッキに来ていた。

シン「それにしても、補充パイロットって誰なんですかね?」

ナオト「ハイネの代わりだからね…最低でも赤服…だとは思うんだけど」

メイリン「あ、来ましたよ。でも、あれって…」

見えてきた機影に全員が目を凝らしたが次の瞬間目を見開いた。

シン「あれは…インパルス?いや違う…」

見た目の装甲の色はソードシルエット装備のインパルスに似ているが、翼のようなフライトユニットにエクスカリバーとビーム砲を装備しているシルエットを装備し、腕部にビームブーメランを装備している。

ナオト「あれは…デスティニーインパルス?」

メイリン「インパルスの改良型?」

ナオト「あれはインパルスじゃないよ。インパルスのコンセプトから外れてるし。見たところ2号機だね」

デスティニーインパルスはミネルバに着艦すると、コクピットから出て来る。

シン「…女?」

メイリン「一体誰?」

パイロットはヘルメットを取ると、艶やかな黒髪の少女だった。

レイ「お前は」

メイリン「クレアさん!?」

クレア「アカデミー以来だね。久しぶり、認識番号273848、クレア・トワイライト。ジュール隊から転属しました。機体はデスティニーインパルス。よろしくね」

シン「よりによってお前かよ」

クレア「あれ?シン、まだ生きてたんだ?」

クレアはシンに嫌みたらしく言う。
アカデミー時代のシンなら噛み付いてきたのだが…。

シン「悪かったな、あれはインパルスのバリエーション機か?」

クレア「(あれ?)そうだよ。性能ならシンのインパルスより上なんだから」

クレアはシンが噛み付かないことに驚いたが、デスティニーインパルスを見遣りながら答える。

シン「性能だけで強さが決まるわけじゃないだろ」

ナオト「デスティニーインパルスはフォース、ソード、ブラストの特性を合わせ持つ万能機ではあるんだけど燃費が悪いからすぐガス欠になる欠陥機でもあるんだよね」

シン「何だよ、じゃあ駄目じゃないか」

クレア「うっさい!!艦長はどこ?」

レイ「艦長なら艦長室だ。お前は変わらないな。」

クレア「君達もね」

レイに案内され、ジュール隊のじゃじゃ馬こと、クレア・トワイライトは艦長室に向かうのだった。













































キラ「アスラン」

沈み行く夕日を眺めていたアレックスの背後に声がかけられる。

アレックス「久しぶりというのかな。キラ、カガリ」

カガリ「アスラン、記憶が戻ったのか?」

笑顔を浮かべるカガリにアレックスは肯定の意味で頷いた。

キラ「何で今、僕らに連絡を取ったの?」

アレックス「お前達に言っておきたいことが色々とあり過ぎてな」

キラの言葉にアレックスは苦笑する。
本当に、言いたいことがあり過ぎて溢れてきてしまいそうだ。

アレックス「まず1つ、何であんな馬鹿な事をしたのかということだ。あれでは戦場が混乱するだけだ」

カガリ「なっ、お前が戦ったのはオーブなんだぞ」

キラ「オーブの戦闘を止めるためにはカガリが行かなくちゃいけなかった。だからこそ、僕達は戦場に出たんだ」

アレックス「ほう」

カガリとキラの言葉に一応は納得したが、溜め息をつきたくなった。
AAにはまともな思考を持った大人がいなかったのか。
砂漠の虎と名高かったアンドリュー・バルトフェルドもいるはずなのだが。
見込み外れだったか。

アレックス「まあ、お前達にどんな経緯と理由があったのかは俺は知らないし知る気もないが、あんな馬鹿げたことは止めてくれないか?」

カガリ「馬鹿なこと…?あれは、あの時ザフトが戦おうとしていたのはオーブ軍だったんだぞ!!私達はそれを…!!」

アレックス「オーブ軍が無事ならミネルバの乗組員がどうなろうと構わないのか?発射寸前の陽電子砲を破壊されてどれだけの乗組員が巻き込まれたと思っている!!それにあそこで君が出て素直にオーブが撤退するとでも思ったか!!オーブの主力がここにいるなら、連合を裏切れば簡単にオーブはまた焼かれるだろうに、オーブが連合を裏切れるはずがないだろう!!」

カガリ「う……」

アレックス「君がしなけりゃいけなかったのはそんなことじゃないだろ!!戦場に出てあんなことを言う前に、オーブを同盟になんか参加させるべきじゃなかったんだ!!…まさか、出兵の強要を想像もしなかった訳でもないだろう?2年前、オーブのマスドライバーの使用を強引に求めたのも、地球連合だ。……オーブを焼かないために、他国を攻める選択をしたのだろう、一度は」

カガリ「それは……」

アレックス「君は何のためにユウナ・ロマと結婚したんだ?」

カガリ「それはっ……オーブ国民の安全を図るために」

アレックス「そうだ。オーブに住む人を守るためにカガリだけでは力が足りないから、セイラン家との結婚が必要だったんだ。」

キラ「でも、アスラン。あれはカガリの意思を…」

アレックス「黙れキラ。俺はオーブ首長国代表のカガリ・ユラ・アスハと話しているんだ。もしカガリが1人の女であるのであれば、彼女にオーブ軍に命じる権利がない。権利は責任を伴う。国を動かす権利を持ったらそれ相応の責任がある。その責任の負い方がカガリの場合は結婚へと向かわせた。カガリは俺や政治に関して素人のシン達から見ても政治的知識があまりにも足りなさすぎる。国の代表は政治家だ。国の理念を叫ぶだけではない。」

キラ「アスラン!!」

アレックスのあまりの非難にキラが叫ぶが、アレックスはカガリから視線を外さない。

アレックス「君は、オーブの国民のための、結婚を拒み、オーブに帰ろうともせず、今までAAでのうのうと過ごしていたのか?オーブ軍がミネルバを攻撃するまで。オーブが連合に出兵を強制されても、オーブ軍が出撃しても、オーブ軍が連合軍と合流しても、何もせずに?」

カガリの見開かれた目が、アレックスに絶望を訴える。

カガリ「ち、違う!!あのまま戻っても、傀儡にされるだけだった!!私は、私は、オーブを守るために!!」

手を握り締めて、カガリは叫ぶ。

アレックス「それで?」

カガリ「え…?」

アレックス「さっきも言ったが、君が出て来たところでオーブが連合を裏切れるわけがないだろう。当然だ…家族や友人が暮らす自国を焼かれるのを望む馬鹿がいるものか」

カガリ「それは、それは、でも!!あのままだったら、オーブの中立の理念が…」

アレックス「国民の命と、理念。君はどちらが大切だというんだ?」

会話を交わす度に冷たくなっていくような視線に、カガリは戦慄する。
彼を見上げた視線は、恐怖にすら染まっていたかもしれない。

カガリ「それはもちろん、国民の命だ!!だ、だけど、中立を保つことで、国民の危機が減る!!お父様の意思を、オーブを守るために…!!」

アレックス「カガリ…ウズミ様の意思を守る、オーブを守る、それは国民の命とはイコールじゃない」

カガリの言葉をアレックスは冷徹に切り捨てる。

アレックス「カガリはオーブという器だけを守りたいのか。その器に住む国民を守ろうとは思わないのか。政治家は理念を叫ぶだけではいけない。理念は確かに必要だ。オーブのようなのがな。だが、それは時と場合による。理念のために国民が危険にさらされては意味がない。民を守るための理念だ。理念を守るための民じゃない。君はシンの一件で何も学ばなかったのか?」

カガリ「それは…」

カガリの脳裏に過ぎるのは、自分に向かって叫ぶシンの姿。
だけど、父が守り通した理念をカガリが崩してしまうことを認めたくない。
それを見透かしたアレックスは失望したようにカガリを見つめる。

アレックス「中立という理念を守れば満足か?オーブという国を守れば満足か?君を敬愛する軍人達や友人達で固めれば、誰も意見せず、君の言葉に頷くだろう。それで君は満足か?」

カガリ「な、にを」

問われても、意味が分からない。
だって、大切なことじゃないか。
中立を守ること。
オーブを守ること。
何故、何故、彼は責めるように言うのだろうか。

アレックス「国民の心は、離れていくとしてもね」

カガリ「何を…何を言ってるんだアスラン!!私は、オーブを守りたかった。それはいずれ国民にも必ず通じる!!」

アレックス「そうだろうな。君が、ただオーブという器だけを守りたかったことは国民に伝わるだろうさ。」

アレックスが見下すような視線でカガリを見つめる。
どうしても、伝わらない。

キラ「でもそれで、君はこれからどうするの?僕達を探していたのは何故?」

アレックス「探していたのはもうあんなことは止めさせたいと思ったからだ。俺がザフト軍兵士としての義務を果たす羽目になる前にああいう行動は止めてもらいたいんだ。ユニウスセブンのことが問題なのは分かってるが、その後の混乱は、どう見たって連合が悪い。抑えようとすれば抑えられた民間の暴動を煽って、開戦に持ち込んだんだからな……。まぁ、今更そんなことは今言っても仕方がない。とにかく今重要なのはこの戦争を早期に終わらせることだと俺は思ってる。早く終わらせるために俺の出来る事をやろうと…。だがお前達の行動は、ただ状況を混乱させているだけだ。まるで戦争を長引かせたいかのように」

キラ「本当にそう?」

アレックス「……?」

キラ「プラントは本当にそう思っているの?あのデュランダル議長って人は、戦争を早く終わらせて、平和な世界にしたいって」

アレックス「俺はギルを…議長を信じるよ」

キラ「じゃあ、あのラクス・クラインは?」

アレックス「ん?……ああ、彼女か」

キラ「あのプラントにいるラクスは何なの?そして、何で本物の彼女はコーディネイターに殺されそうになるの?」

アレックス「彼女の名前はミーア・キャンベル。あれは混乱を抑えるための一手段だと思うが。何しろ議長以上の影響力を持ちながらも終戦の立役者本人はオーブに引っ込んでしまったからな。まあ、議長に助けられるまでオーブにいた俺も人の事は言えないが、彼女の存在は民衆の混乱の収束には一定の成果は上げているようだな。それに、名前を偽ることがそんなに許されないことか?それを言ったら、俺やお前達も同じだろう。……で、ラクスが殺されそうになったというのは?」

かつての婚約者が殺されそうになったというのに、何の反応も示さないアレックスにキラは叫びたい衝動に駆られる。

キラ「オーブで僕らは、コーディネーターの特殊部隊とMSに襲撃された。狙いはラクスだった。だから僕はまたフリーダムに乗ったんだ」

アレックス「……何でフリーダムを保管してたんだ?ユニウス条約違反のフリーダムを?」

キラ「彼女も皆も、もう誰も死なせたくなかったから。彼女は誰に、なんで狙われなきゃならないんだ?それがはっきりするまでは、僕はプラントを信じられないよ」

アレックス「キラ…俺達を恨んでいる奴らなんてそこらじゅうにいるんだよ。宇宙にも、地球にも、MSを持ち出してまで恨みを晴らそうという人間がな…では、俺は戻る。ミネルバの動向によってはまたオーブと戦うことにもなるかもしれないな」

キラ「だったら僕達も出るよ。僕達はオーブを討たせたくないんだ」

アレックス「そのためなら条約違反もするというのか?」

キラ「え?」

アレックスの言葉が本当に分からないのか。
きょとんとした姿を見てアレックスは泣きそうになった。

アレックス「ユニウス条約違反は分かっての行為だな?」

キラ「もしものためだったんだ。ラクスも僕達も平和を望んでいるだけなんだよ。だけど再び戦争は起こった。だから力を手に入れたんだ」

キラは平和のためなら仕方がないのだと。
そう言っているのだろうか。

アレックス「そうか…」

キラ「アスラン…君はこれからもザフトで、またずっと連合と戦っていくっていうの?」

アレックス「仲間を、そして大切な人を守るためにな」

キラ「じゃあこの間みたいにオーブとも?」

アレックス「俺は連合やオーブとも戦いたくはない。だが攻撃されるなら、仕方ないじゃないか。」

アレックスは踵を返しセイバーの元へと向かう。

キラ「アスラン……僕達だって討ちたくないんだ。討たせないで」

キラの言葉にアレックスはぴたっと止まるが振り向かない。

アレックス「カガリ、今ならまだ間に合う。前大戦の後でもアスハ家を慕う者は民衆の中に大勢いる。力ずくでも実権をアスハ家に取り戻せ。お前が覚悟を決めれば、知恵を貸し、協力してくれる者はオーブにもいるはずだ。後はお前の好きにしろ」

この言葉は彼女に届いただろうか?
かつて愛した人に対するアレックスの最後の不器用過ぎる激励が。

アレックス「ありがとうミリアリア。助かったよ」

ミリアリア「えっ、ううん。気にしないで」

アレックスはセイバーに乗り込むとミネルバに向かうのだった。
残されたカガリの中でさらに苛立ちが込み上げる。
あんな視線を向けるようになったのはあの女のせいなのだと。
その思いが止まらない。

カガリ「(アスランは私を好きだったんだ!!私を守ると誓ってくれた、口付けだってしてくれたっ!!なのになのになのになのにっ!!あいつが、現れたせいでっ!!)」

カガリにアレックスの想いは届かなかった。
代わりにあるのはアレックスの隣を奪ったナオトが頭の大半を占めていた。

カガリ「絶対に許さないぞ…!!」

拳を握り締め、ナオトへの嫉妬が頭を埋め尽くしていた。 
 

 
後書き
これからもアレックスでいつづけるアスラン。
そしてアレックスはかつての愛した人と仲間と決別するのだった。
新たにオリキャラ追加。

オリジナルキャラ紹介2

クレア・トワイライト

17歳
女性
コーディネイター
シン達と同期でアカデミー時代のシンの喧嘩友達。
女性だが一人称は“僕”で、男勝り。
母親は物心つく前に死去しており父子家庭だったのも原因の一つだが、女だからと甘く見られるのを嫌うためでもある。
父親はザフトのMSパイロットだったが前大戦でフリーダムに乗機の武装と四肢を破壊され、宇宙を漂い、酸欠で死亡したことからフリーダムを憎悪している。
搭乗機はデスティニーインパルス2号機。
 
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