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美しき異形達

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第三話 怪人と炎その九

「実際に大阪はそうした街なんだ」
「金持ちの街じゃないんだな」
「そうだよ、マスコミの街でもないよ」
 東京とはそこが違う。
「大衆というかね」
「庶民と大衆はまた違うのかよ」
「僕は庶民と言う呼び方には抵抗があるんだ」
 マスコミが自分達の思惑を喧伝する為の大義名分に使うからだ、よく夜の九時五十五分から放送されるニュース番組が使うがこの番組はファーストフード店の内部告発を熱かった際その告発者に実はその企業の関係者ではない人間、所謂サクラを使っていたことがある。つまり彼等が何よりも大事にしているという視聴者、即ち庶民を意図的に騙そうとしていたのだ。日本以外の国でこうしたことをやれば確実二報道資格剥奪であろう。
 そうしたことを知っているからだ、智和は庶民という言葉は好きではないというのだ。
「それよりもね」
「大衆なんだな」
「そう、大阪もね」
 この街もだというのだ。
「大衆の街と言った方がいいかな」
「そういえば庶民的とかいう政治家ってな」
 薊も薊で自分を泥鰌に例えていた総理経験者を思い出した。
「変な奴いるな」
「むしろそうした政治家こそね」
「おかしいよな」
「庶民の為とか言いながらね」
「胡散臭い関係とかあるよな」
 テロ支援国家との癒着が噂されていたりする、ヤクザ者との関係なぞましに聞こえる程の怪しい勢力と関係している『庶民派』なのだ。
「そういう人って庶民のこと考えてないだろうな」
「マスコミとかね」
「僕もそう思うよ」
 智和もこう言うのだった。
「そうした人達はね」
「だよな、やっぱり」
「おかしな人達ですよね」
「おかしくない筈はないよ」
 どう考えてもだというのだ。
「そもそも庶民っていうのは上から目線の言葉じゃない」
「あっ、確かに」
「そういえば」
 二人も気付いた、智和の指摘で。
「そういう言葉だよな」
「言われてみれば」
「うん、自分達が庶民じゃないから言うんだ」
 普通の日本国民を庶民と言うのだというのだ。
「もっと上の存在だと思っているからね」
「それで下の為にしてやってるっていうのか」
「それが庶民派なんだ」
「庶民は毎日テレビに出て高給を貰っていないよ」
 マスコミ関係者の様にだ。
「毎日毎日夜の十時で無責任な発言を繰り返して年何億の収入がありはしないよ」
「何億ってな」
「大金持ちじゃないですか」
 よく日本の九十年代は不況だったと言われている、しかしテレビで毎日毎日不況だと言い続けていた輩が年何億の収入があったのだ、不況で何故そこまでの収入があるのだろう。不況を言い続け中小企業が倒産し社長は首を吊り一家は離散する、しかし不況を毎日言っている人間は何億もの収入で優雅にく暮らし日本の株価が下がることを期待していた。これが滑稽な三文芝居でなく現実であったのが九十年代の日本だ。
 薊はそういったことは知らない、だが何億と聞いて言うのだった。
「あたしお金にはそんなに興味はないけれどさ」
「何億よね」
「それ凄いよな」
「大金持ちよね」
「ああ、好き勝手なこと言って年何億ってな」
「無茶苦茶な話よね」
「そんな人が庶民の為と言っても信じられないよね」
 智和も首を傾げさせつつ二人に問う。 
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