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ドリトル先生と京都の狐

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第三幕その六

「女の子はね」
「やれやれだね」
「これじゃあね」
「本当に結婚出来ないね」
「これからもね」
 皆はそんな先生に呆れた顔で言います、ですがそれでもです。
 先生は舞妓さんもいいというのでした、とにかく女の人には縁がないのです。このことはイギリスにいた時からです。
 それで、です。四条のその裏手に入りますと。
 四条はお店が並んでいる場所から少し入るともう家々が並んでいます、しかもその家々は普通の人達のお家です。
 木が入っているお家も風情のあるお家も多いです、王子はその家々を歩きながらこんなことを言いました。
「こうした場所を勤皇の志士や新選組が歩いていたんだろうね」
「幕末だね」
「そう、その頃にね」
 今度は幕末のお話でした。
「志士と新選組が歩いていて」
「斬り合っていたんだったね」
「多分ここは坂本龍馬も歩いたよ」
 皆が今歩いているこの道をだというのです。
「高杉晋作や桂小五郎もね」
「ここも歴史があるんだね」
「そうなんだ、殺し合いだったにしてもね」 
 歴史があるのは確かだというのです。
「ここにもね」
「成程ね」
「池田屋はね」
 王子はこのお店の名前も出しました。
「もうないけれどね」
「その新選組が討ち入りをした場所だね」
「そう、祇園祭の時にね」
 まさにその時に斬り込んだのです。お祭りの賑やかな声と鳴りものを後ろに置いてそのうえで派手に斬り合いました。
「これも凄いことだけれど」
「幕末の名場面の一つだね」
「うん、先生も知ってるんだね」
「日本の歴史を勉強しているとね」
 その時にだというのです。
「出て来たことだからね」
「それで知ってるんだね」
「そうだよ、とにかくね」
「池田屋はもうないんだね」
「跡地はあるけれどね」
 それでもです、もう池田屋自体はなくなっているというのです。
「京都にしては珍しいけれど」
「日本人は何でも残すんじゃなかったのかな」
「時々そうでもないみたいだよ、今池田屋の場所にはお店があるよ」
「どういうお店なんだい?」
「まあ、よくわからないお店だよ」
 王子はそのお店については微妙な顔で先生達に答えました。
「どうもね」
「そうなんだね」
「そうなんだ、まあとにかくね」
「この四条にだね」
「はい、私のお家がありまして」
 ここでまた狐が言ってきました。
「そこに母が臥せっています」
「そうなんだ、じゃあお家に着いたらね」
「早速ですね」
「うん、診させてもらうよ」
 狐のお母さんの病気をというのです。
「是非ね」
「わかりました、それでは」
「すぐにね、ただね」
「ただとは?」
「日本の獣医の誰もが匙を投げるって」
 それはどういったものかとです、先生は歩きながら考える顔で述べました。
「どんな病気かな」
「そこが気になりますね」
 トミーもこう言うのでした、先生に。 
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